真の歴史へ・その二

冥菜と話を終えた小竜姫は、冥子と鬼道の元に歩み寄っていた


鬼道は父親に言われてやったとはいえ、小竜姫を攻撃したことを思い出し深く頭を下げる

「すいませんでした。 謝って済む問題やないけど… 何でも罰を受けます」


シュッ!!


その時、鬼道の顔のギリギリのところを小竜姫の神剣が通り過ぎたが、鬼道は目を閉じたまま動かない


「少しは目が覚めましたか? 残念ながらあなたの父親はどうしょうもありません。 これからは父親と離れ己の意志で生きなさい。 あなたならまだやり直せます」

鬼道の覚悟を確認した小竜姫は神剣を消して笑顔を見せた


「小竜姫様…」

許されると思わなかった鬼道は、驚きに満ちた表情で小竜姫を見つめる


「先ほどもいいましたが、あなたは式神の扱いが見事です。 ですが、もっと式神を大切にして下さい。 夜叉丸も意志があります。 あと、あなたの弱点は霊力が少ないんです。 六道さんの四分の一くらいしかありません。 今後は霊力量も増やす修行と、実戦をたくさん経験して行けばいいでしょう」

小竜姫はそう告げて横島達の元に戻っていく

鬼道はそんな小竜姫に深く頭を下げて見送っていた



「めでたしめでたしってとこかな」

全てを無言で見ていた横島は、鬼道がかつてと同じようにやり直せると確信してホッとしていた


「怒らせると怖いんだな…」

雪之丞はボソッとつぶやく

彼が知る神族は小竜姫やヒャクメくらいである

どうしても恐れ多い存在とは思えなかった

そもそも小竜姫をあそこまで怒らせる馬鹿者は今まで居なかったのだから仕方ないが…


「小竜姫さん優しいですね…」

同じく小竜姫が怒った姿を初めて見た小鳩は、怖いと言うより怒った理由に驚いていた


「優しい?」

雪之丞は意味がわからず不思議そうに首を傾げる


「はい、優しいです。 鬼道さんのことを思えばこそ怒ったんですから…」

小竜姫に憧れのような視線を向ける小鳩を、雪之丞は感心していた

それは自分より遥かに深く相手を見抜いた、小鳩の相手を見る目に感心していたのだ


「さすがに苦労してきただけあるわね。 その真実を見抜く目が小鳩ちゃんの力よ」

感心したように語りかけるタマモと同じく、横島達みんなが小鳩に感心していた


「わいのせいで小鳩は苦労して来たからな… 呪いのせいとはいえ、ロクな人間に会わなかったんや」

「貧ちゃん、元気出して。 私は後悔してないわ」

みんなが見守る中、昔を思い出して落ち込む貧を小鳩は優しく励ましていく



「さて、帰りましょうか? 先ほどの話の続きも含めて、帰って式神について勉強しましょう」

そして、戻って来た小竜姫はいつも通りの笑顔であった


「そうだな… 帰って小竜姫の大活躍の話でも聞くか」

横島にからかうような視線を向けられた小竜姫は、少し恥ずかしそうにうつむいてモジモジしてしまう

「いや… あれはつい…」

一応、隠していた神族の事までバラしてしまった小竜姫は、ちょっとやりすぎたかと反省していた


「ヨコシマ、あんまりイジメないの!」

そんな横島と小竜姫のジャレ合いを、ルシオラが止めて横島達は帰って行く


一方、珍しく小竜姫の神族らしい姿を見た雪之丞とおキヌと小鳩と愛子だが、すぐに横島とイチャつく普段の小竜姫を見て少し羨ましそうだった


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