二年目の春・7

「ああ、納涼祭ね。 貴女達も手広くやってるわね。」

そのまま納涼祭の会議の帰りに新堂の店を寄った夕映と木乃香は商店街の正式参加が決まり挨拶に来ていたが、相変わらずあれこれと忙しい少女達に少し苦笑いを浮かべていた。

新堂自身も高等部と大学部の頃は麻帆良祭や体育祭にその他サークル単位でのイベントなど幅広く参加したが、中学生が祭りの実行委員会のメンバーとなり運営に携わるのは正直驚きのようである。


「実際に準備をしてるのは大学生の先輩達なのですが形式上の主催者が横島さんなので。」

「スポンサーを集めたんでしょう? 立派な主催者よ。 私も去年まではいろいろやったけど主催者は千差万別だもの。」

尤も夕映とのどかはお飾りの主催者の側の人間なのであくまでも横島と大学生達の連絡要員として受け取っていて出過ぎた真似などせぬのだが、細々とした話し合いにも出来るだけ参加しているし地味な裏方の仕事も嫌がらないので大学生達の評価は高く密かに人気もあったりする。

まあ本人達があまり目立つのを好まぬのとやり過ぎて潰された千鶴のファンを自称する連中という先例があるので、夕映とのどかのファンはさりげなく見守り騒がないというのを鉄の掟にしているが。

横島に関しても金は集めるが口は出さないしそこそこ空気が読めるので大学生には男子でもあまり嫌われてない。


「それで少し勝手なお願いなのですが、お時間を許す範囲でいいので新堂先輩にも協力して頂けないかと。」

「うーん。 高橋さん、どう思う?」

「商店街の方からも積極的な参加を求められてますし、オーナ個人として協力してみてはどうでしょう? ただ店としては商店街の一員を越える協力は他店への配慮から少し難しいですが。」

少し話が逸れたが二人は挨拶に雑談をしつつ大学生達に頼まれた新堂への協力要請をするも、新堂は現在店の経営者として勉強中のためチーフパティシエとして実質店を仕切っている高橋に相談する。

高橋は一瞬考える素振りを見せるも協力してみてはと語った。

これが他のサークルやイベントの主催者ならばともかく横島達とはそれなりに縁があり特に昨年のクリスマスパーティでは横島が新堂を絶賛して歩いた影響で、今年に入って以降学生のみならず麻帆良の財界との繋がりが出来て雪広家のパーティにスイーツを提供したりと少なくない恩恵がある。

加えて新堂は今でも横島のスイーツを超えるべく日々努力をしているという点も大きい。

まあこれが麻帆良祭ならば流石に他を断ったので横島達だけ要請を受けるのは難しいが、納涼祭は別のイベントだという点もかなり考慮していた。


「そうね。 何か協力出来るか分からないけど協力するわ。」

高橋はあえて口にしなかったが麻帆良においては横島と少女達の影響力は決して小さくはない。

木乃香は学園長の孫だし雪広家や那波家とも横島達が親しいのは周知の事実なのだ。

新堂がこの先も麻帆良で店を続けるならば学園や麻帆良の中枢に近い横島と少女達との友好は無駄になるものではない。

ただ少し悩んだのはまた予期せぬ影響が店に訪れる気がしたからだが、こればっかりは心配しても始まらないのが現実だった。

こうして夕映とのどかは新堂の協力を取り付けることに成功してまた大学生達に評価されることになる。


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