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二年目の春・7

一方店の方には夕食時を狙ったかのように魔法協会に所属しながらエヴァの弟子を自称する変人魔法使いである高杉教授が来ていた。

符術の符を作成出来て研究者としても第一人者の彼は横島達が魔法協会の協力者として正式に加わって以降、たまに夕食時にやって来ては夕食を食べつつあれこれと話をしに来るのだ。


「ワシじゃとどうしても符が大きくなってしまう。」

「温度調整は出来たんっすか?」

「それはなんとかのう。」

あの人を寄せ付けぬ雰囲気の頃のエヴァに弟子入り志願をした高杉だけに少々邪険にしたくらいではへこたれなく、この日は今研究をしている呪符の再利用について行き詰まったようで横島に愚痴るように相談を勝手に始めている。

横島が魔法協会の幹部の新年会にて気まぐれで使った皿を温めるあつあつ君と皿を冷やすひえひえ君の呪符を見て以降、高杉は横島の符術の実力の高さを見抜いてしまったが故に愚痴のような相談に来ていた。

これだけならば若干迷惑にも思えるが、この男意外に人の気持ちを理解しているらしく横島があまり実力を見せたがらないのを理解して呪符の作成能力の高さを第三者には吹聴してないなど見えないところで気遣いもしている。

皿を温める札と冷やす札という評価の難しい呪符に知る人ぞ知る実力を露にしたが、麻帆良にて符術の第一人者の高杉が特に騒がないので横島の呪符の価値があまり広がってないという事情もあった。


「凄いじゃないっすか。 あれ何が難しいって手頃な温度を一定期間持続させるのが難しいんですし。」

「それを理解してくれる者がなかなかおらんでの。 ワシ自身もそうじゃったが符術も生活からかけ離れたものが大半じゃからのう。」

そしてこの高杉はやはり優秀だった。

呪符の小型化こそ出来てないが横島のあつあつ君とひえひえ君と同じ効果の呪符を作れるようになったらしい。

横島としては特に術式など教えてないが自力で解読したものに自身の技術を合わせて作ってしまったようである。


「あれは料理に使うのに小型化しましたけど別に無理に小型化しなくていいのでは? 魔法使いの野外活動用にと考えたら普通のサイズで十分じゃないっすか。」

「うむ、テストをしながら夏に向けて冷符として作っておる。 上手く使えば電気代の節約にもなるし夏場は見回りなども大変じゃからのう。」

本人としては小型化も含めて完成だと考えてるようだが現時点でも日常にて使う分には問題はないようで、夏前にはそれなりに量産して魔法協会内に配りたいらしい。

どうも高杉は横島が呪符を日常生活に役立てるようにと作ったのに刺激されて、彼もまた伝統的な呪符から日常にて使える呪符を研究し始めたようだった。


「あとは虫除けの符とかどうっすか? 多分需要がかなりありますよ。 人避けの符の応用で教授なら作れるんじゃあ?」

「虫除けじゃと!? うむ、確かに人避けや妖魔避けの符もあるので出来んこともないかもしれんが。」

マッドの付くよう研究者である高杉であるが横島はかつてのドクターカオスを思い出すのか世間話程度の雑談には付き合い、アドバイスにもならないような意見は口にしてしまうようである。

この日は厨房まで入り込み話をしていた高杉であるが、横島の意見に手帳を取り出すとさっそく何かをメモしながら考え込み始めてしまい手伝いをしている明日菜を苦笑いさせていた。


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