真の歴史へ・その二

「さて、ここまでは鬼道さんの長所と六道さんの短所が良く表れてましたね。 鬼道さんの式神の扱い方やコントロールは見事です。 一方、六道さんは式神のコントロール以前に戦う意志がありません」

冥子を心配するおキヌや初めての式神に驚いている小鳩

それに勝負が決まったと思った雪之丞を見て、小竜姫は戦いの解説と2人の長所や短所を細かく説明していく


「これからは六道さんの長所が表れるでしょう。 目で見るだけではなく、2人の霊力や式神の様子を注意深くみて下さいね」

小竜姫の言葉におキヌ達は頷き、真剣な表情で冥子と鬼道を見つめるが

そんな鬼道は小竜姫を睨みつける


「あんさん、随分好き勝手に解説しとるが、この状況でどうやってあの女が勝つと言うんや? そもそも12神将は六道家にはふさわしくないと思わへんか? ろくに使いこなされへん人間には過ぎたオモチャや!」

冥子にバカにしたような視線を向けて、再び小竜姫を睨みつける鬼道

果たし合いを解説されたのが、よほどムカついたのだろう


「鬼道さんと言いましたね? 人の批判より、まずご自身のことを自覚するべきです。 式神を復讐の道具にするあなた達親子が、六道家の批判をする資格があるのですか?」

鬼道の視線を気にする様子も無い小竜姫は、逆に少し哀れむように鬼道を見つめる


「ボクは夜叉丸を使いこなすために死ぬほどの修行をしてきたんや…! もう二度と女なんかに負けたりせえへんのや…! そのためだけに生きて来たんや…!!」

恨みや怒りで何も見えない鬼道には、せっかくの小竜姫の言葉も届かない


「哀れな人ですね。 あなたの式神が泣いていますよ」

「黙れ! 小娘に何がわかる!! ワシがどれだけこの日を待ち望んだ来たか! 政樹にはワシの分まで復讐させる為に全てを犠牲にして来たのだ!!」

小竜姫の言葉を遮ったのは鬼道父である

全てを恨み、狂ったようなその瞳に小竜姫は嫌悪感を露わにした


「愚かな… あなたの憎しみが息子を不幸にしかしないことに、何故気が付かないのです!」

あまりに勝手過ぎる鬼道父に、小竜姫はうっすらと怒りの表情を浮かべている


「政樹! あいつを黙らせろ!」

怒りの矛先を小竜姫にも向ける鬼道父の言葉で、鬼道は夜叉丸を小竜姫に向けてしまう


夜叉丸が迫る中、小竜姫はすっと立ち上がり神剣を念じて現し構える



「少しお灸を据える必要がありますね…」


ザシュッ!!


僅か一撃であった

鬼道父にはなにが起こったか見えなかっただろう

迫り来る夜叉丸を僅かにかわした小竜姫の神剣が、夜叉丸の急所を貫いていた


「なっ… 何が起こったのだ!!」

愕然としてしまう鬼道親子

小竜姫によって貫かれた夜叉丸は、冥子の影に吸い込まれてしまっていたのだ


そして小竜姫はそのまま、鬼道親子の元にゆっくりと歩み寄る

「そうそう、一つ教えてあげましょう。 六道さんの長所は式神に対する思いやりです。 式神を家族や友達と同じように考えて大切にしてきた。 だからこそ数百年も六道家は栄えて、先ほども主を守る為に自分から現れてあなたと戦ったのです。 そしてプッツンした時も主は決して傷つけない。 いろいろ未熟ですが、あなたの夜叉丸よりはずっと幸せそうです」

ゆっくり鬼道親子に歩み寄りながら語る小竜姫の表情は、非常に厳しいものだった

それだけ小竜姫は怒っている

自分の息子の幸せも願わないで、復讐のみの為に犠牲にして来たこの父親だけは許せなかった

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