真の歴史へ・その二

「随分ヤバい物を作ってるな…」

「技術って細かい積み重ねが重要なの。 これは霊体ゲノムを監視して破壊するウイルスの研究の副産物よ。 あと、軍に持ち帰るのは止めてね。 危険過ぎるから」

少し引き気味のワルキューレに、ルシオラは苦笑いを浮かべて説明する

この研究の元々の目的は、いずれ現れるであろうこの時代のベスパやパピリオを救う事を目的とした研究であった


未来においてはドクターカオスの協力により無効化に成功しているが、この時代でも同じだとは限らない

万が一を考えて、あの監視ウイルスの研究は欠かせない物である


その後ワルキューレとジークは、ルシオラ達が用意した武器や霊能アイテムを持って、夜が明ける前に調査に向かった


こうしてワルキューレという強力な仲間を得て、原始風水盤を阻止する戦いは静かに始まることになる



そして、ハーピー戦からしばらくした令子と言えば…


「は~、極楽だわ。 やっぱり温泉はいいわね」

温泉に入りながら熱燗を飲んで幸せに浸っていた


ここは関東某所の温泉郷

令子はこの日温泉郷に現れる悪霊を退治に来たのだが、悪霊を探す前に温泉に入って酒を飲んでいる


事の理由は美智恵に厳しく言い聞かされた数日後に遡る


あの後、オカルトGメンは大忙しであった

理由はハーピー戦の後始末のためである


美智恵は関係省庁に根回しなどに厳しく、西条はオカルトGメンの入るビル付近の住民や企業などに説明と騒がせたお詫びで忙しい

そんな訳で、ただでさえ人手不足のオカルトGメンは更に人手が足りなくなったのだ

溜まりに溜まった関係各所からの除霊依頼を、令子は数日間1人で駆けずり回っていた

最初はやる気と危機感を持って強くなろうと頑張ったが、元々お金にならない仕事や忙しいのが嫌いな令子なのだ

一週間もしないうちに嫌気がさしてしまい、やる気や危機感も無くなっていた


未熟だと強くならなければダメだと言われたが、現実はタダ同然で他人の為に働かされるだけだ

その思いが令子のやる気や危機感をみるみるうちに無くしていた


さすがに美智恵や西条の前ではやる気のあるふりをしているが、隙あらばサボってしまう

そんな訳でこの日も1人なのと、オカルトGメンのオフィスから遠いのをいいことに温泉に入ってサボっていた


「うるさいママや西条さんは居ないし、天国だわ~」

温泉と酒で幸せを満喫する令子

周りから見たら年寄りクサいのだが気がついてない


一旦体に染み付いた性格は、やはり簡単には治らないようだ

そうそう何度もあんな危険な魔族は来ないだろうと、令子は甘くみていた

未来を知らないので美智恵の危機感は理解出来ないし、美智恵と西条が居ればまたなんとかなる

そんな甘えもまだ残っていた


やはり美神令子なのだ

他人や母親が何を言おうと、我が道をゆくのは変わらない

美智恵が令子の未来の為に、どれだけ苦労して人生を生きてきたかなど考えもしない

美智恵の苦労は今後も耐えないだろう


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