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二年目の春・6

そして夜が更けていくと夕食の後片付けに明日の仕込みを終えた横島は二階でタマモとさよとハニワ兵達とテレビを見ていたが、この日は麻帆良ケーブルテレビにて昨年の麻帆良祭の密着ダイジェスト番組が放送されていた。

番組自体は昨年から何度か放送してる番組の再放送だが、内容は有名サークルの一年に密着取材した物を二時間に編集したダイジェスト番組になる。

一昨年の麻帆良祭の反省から始まり計画や資金など数々の難題を乗り越えて試作を繰返し麻帆良祭に挑むものであった。


「あー! これみんながやったやつだよね!!」

タマモと白ハニワ兵は初めての麻帆良祭を前にテレビにかじりつくように興味津々な様子で番組を見ていたが、番組も終盤にさしかかり麻帆良祭本番の様子が流れると密着サークルのライバルとして昨年の2ーAの出し物であるファンタジーレストランが映り、昨年から写真や類似する麻帆良祭関連の番組でそれを見ていたタマモが興奮ぎみにちらりと映る少女達の姿を見つけては喜びの声を上げる。


「こうして見ると凄かったんだな~。」

「そうですね。」

麻帆良に来て以降それなりに忙しいこともあってあまりテレビを見ない横島はこの番組を初めて見たのだが、昨年の優勝候補だったサークルの視点から見た自分達の出し物は新鮮なものがあった。

開発中と言われる立体映像と手作りによる大道具や小物類が融合した建物は、客観的に見るとリアルさと手作りの暖かみがありサークルの大学生達を驚かせている。

発泡スチロールなんかで造った外観も離れて見ると本物の石造りの建物に見えるようなものなので周囲の注目を集めていたらしい。

なお料理に関しても番組内のサークルでは購入して持ち帰り夕食を兼ねて食べてライバルの分析をするが、こちらも混み合う店内で大量生産していたにもかかわらずオリジナリティがあり美味いと驚いていた。

番組内では超鈴音と超包子のことも触れられていて、2ーAのファンタジーレストランは技術や料理に関して超鈴音が中心になったのだろうと分析をしている。


「そういえばこの頃は私はまだ横島さんにしか見えなくて、横島さんはあんまり騒がれてなかったですよね。」

番組自体は昨年の7月初旬に放送した物なため番組内では横島の名前どころか存在すら触れられることはなく、タマモと白ハニワ兵は不思議そうにするもさよは懐かしそうに一年前のことを思い出していく。

店のある近所や近くに寮が複数ある女子中高生など知る人ぞ知る存在であった横島が、現在のように有名人というかお騒がせマスターと化した最初のきっかけは昨年の麻帆良祭なのだとさよはこの番組を見て改めて感じていた。

少女達が帰った夜の現場で突然何の前触れもなくごくごく普通に声をかけられた時の衝撃をさよは昨日のことのように今でも覚えている。


「そんなつもりなかったんだけどなぁ。 ちょっとやり過ぎたか?」

今では友達も増えて今年は自分も参加出来ることを誰よりも喜んでいるさよと対称的に、横島は未だに昨年の麻帆良祭から始まった注目される立場になった根本的な原因をあまり理解してないようでそれがさよには可笑しくてたまらない。

少女達がイキイキと働き裏方に徹している横島は見向きもされないこの番組のような姿が、本来の横島の狙いだったことを思い出したのか少し不思議そうに悩む姿をさよはクスクスと笑いながら見つめていた。


「今年はどうなるんでしょうね。」

その後番組が終わると私も今年は参加するんだと張り切りハニワ兵と室内をパタパタと走るタマモを眺めつつ、さよは本当に今年はどうなるんだろうと期待に胸を膨らませていく。

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