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二年目の春・6

「あっ、先生。 今日は早いですね。」

「来月は忙しくなるから今月くらいは早く帰れるときは帰らないとね。」

その頃チアーリーディング部の練習で帰宅が遅くなった美砂達と、いつもより少し早めに帰れた刀子が偶然電車が同じになり一緒に店まで帰ることになっていた。

私生活では刀子が愚痴を溢すほど親しくなった美砂達と刀子であるが、人前では今も一応教師と生徒であり美砂達も先生と呼ぶ。

まあ店では刀子さんと名前で呼ぶので常連の女子中高生も同じく店では名前で呼ぶ者も居るほどではあるが、その辺の切り替えは必要だろうとあやかなどが刀子をさん付けで呼ぶ際に気を聞かせて指摘したこともあり横島の周囲は意外に公私の区別はきちんとしている。


「そう言えばまき絵達のこといつ頃になりそうなんです?」

「許可は取ったからいつでも構わないわよ。 ただこういうのってタイミングが意外に難しいのよね。」

実際のところ慣れてくれば呼び方などあまり当人達は気にならないのが現状であり、この日も普通に会話をしていたが美砂はふとまき絵と亜子に秘密を明かすのがいつになるのかと尋ねていた。


「あー、まあそうですよね。 ただ麻帆良祭の準備とかで忙しくなる前に話すなら話しちゃいたいって気も。 このままだと向こうに行けませんし。」

「そうね。 下手に何か勘づかれて騒がれるよりは早くても構わないけど。」

元来魔法の秘密を必要と判断した一般人に明かすかどうかは同じ魔法関係者でも否定的な人間と肯定的な人間がいる。

頑なに魔法は一般人には明かすべきではないと考える者も居れば刀子のように状況次第では構わないと考える者も居た。

麻帆良ではどちらかと言えば後者が多く元々美砂達に関しても魔法や横島の秘密を明かすことについて刀子が積極的に根回しして実現したという側面もあり、まき絵と亜子に関しても刀子は今更一人か二人秘密を共有する人が増えても構わないと考えている。

もちろん責任を負うべき魔法使いとしての教え子が増えることになるも、横島を中心とする自分達のコミュニティを守り維持していくことを考えると横島や少女達が仲間にと望む以上は拒否するということは考えてない。

ただ何事もタイミングというのは重要であり、二人にいつ秘密を明かすかは悩ましい問題であった。


「正直なところ和泉さん辺りが横島君やエヴァンジェリンさんを怖がったりしなきゃいいんだけど。」

それと刀子はもう一つ懸念していることがあって、まき絵はあの性格だと大丈夫そうではあるが亜子の方は秘密を知り横島やエヴァを恐れる可能性がゼロではないことを気にしていた。

少女達に秘密を打ち明けた時はほとんどの少女達はすでに横島と信頼関係がそれなりにあって、あまり信頼関係がなかったのは面識の少なかった雪広さやかとそれなりに会う機会はあれどあまり個人的に話す機会が少なかった夏美くらいになる。

無論大丈夫だろうとは思うが刀子としてはもう少し様子を見たいとの本音も無いわけではない。


「あー、確かに私達って魔王側なんだっけ?」

「そうね。 大丈夫だとは思うけどタイミングって難しいね。」

「私は大丈夫だと思うよ。」

そんな刀子の懸念に対して美砂と円は自分達が普通の魔法関係者とは違うことを再認識していて、客観的に魔王側なんだなと思うと刀子の懸念を理解はしていた。

桜子に関しては相変わらず楽天的というか感性で物事を見てるらしく大丈夫だと根拠のない結論を口にしていたが。

結局まき絵と亜子の件は具体的に進むことなく店までたどり着いてしまいうやむやのまま終わることになる。


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