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二年目の春・6

「どうしたものかナ。」

その後超鈴音は葉加瀬と五月と共に寮に戻り改めて三人で麻帆良祭の出し物について検討するが、あまり役に立たないというのは葉加瀬であった。

五月はまだ料理の面から考えて意見を言ったりするし割と現実が見えてるので問題ないが、葉加瀬は正直興味があることには凄まじいほど熱中するも麻帆良祭の出し物にはあまり興味がないと言った方が正しく価値観も少し一般的な感覚とズレているのであまり参考にならない。


「それより超さん。 本当に未来に帰らないんですか?」

「もう決めたことヨ。 私はこの世界の行く末を見守りたいネ。」

そんな葉加瀬であるが彼女は麻帆良祭の出し物よりも、実はつい先日とうとう未来に帰らないと葉加瀬と五月にのみ突然宣言した超を心配している。

未来にこだわり平和な未来を誰よりも求めていた超が少なくとも二十二年後まで帰らないと言い出したことは葉加瀬や五月にとって衝撃だった。


「超さん……。」

ただ葉加瀬は理解してないが五月は超がこの時代に残る決断をした理由をおおよそ理解していて、それが他ならぬ葉加瀬のためだと気付いている。

今は高畑が彼女達を守ってくれてるからいいがそれがいつまで続くかは不明であるし、超が未来から持ち込んだオーバーテクノロジーの数々とそれを唯一理解する葉加瀬は超鈴音という後ろ楯を無くすとどうなるか分からない。

しかも葉加瀬自身は科学では天才的でも一般常識には少し疎く、自分の立場がいかに危ういか理解してないことがより致命的だった。

超の計画を知りつついかに穏便に止めるかをずっと考えていた五月と違い、葉加瀬は本気で超の革命ともテロとも言える計画に賛同し協力していた。

その危険な思考がいつまた暴走するか分からぬし近右衛門達もそれを危惧して監視下に置くことは子供でも分かることだ。

加えて今後仮に超が未来に帰ってしまえば、残された葉加瀬は超がもたらしたオーバーテクノロジーを欲する人々に翻弄されれば葉加瀬がどうなるかは五月には予想も出来ないが決して幸せな未来は待ってないことは薄々理解している。


「大丈夫ネ。」

葉加瀬には守ってやる存在が必要だった。

少なくとも彼女が成人して己の立場を理解するまでは。

超を心配する葉加瀬とそんな葉加瀬の為に過去に残る決断をした超に五月はどう声をかけていいか分からず見守るしか出来ないが、超はそんな五月の心中をも察して大丈夫だと自信ありげな笑みを浮かべる。

元より帰れぬことは覚悟の上なのだ。

過去という異世界で自分を受け入れ信じてくれた友を残してなど行けなかった。


それに、超は最近僅かだが心境に変化がある。

世界ではなく超鈴音個人の未来を心配して悩み苦悩までしてくれたのは未来の人々ではなく、葉加瀬や五月に高畑や近右衛門などこの時代の人達だったのだ。

危険を犯してまで自分達を許してくれた近右衛門や高畑に超は感謝しているし、そんなこの時代で自分は一人の人として生きてみたいと考え始めていた。


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