麻帆良祭への道

一方横島の店では、茶々丸とエヴァ以外の横島と組む者達が集まって料理教室が行われようとしていた

昨日は中等部の家庭科室で行った料理教室だが、流石に毎日使うのは無理だったのである

加えて横島も毎日午後に店を休む訳にもいかないため、グループ事に料理の練習をする事になっていた

他のグループはお料理研究会の部室やあやかの実家など、それぞれに違う場所で練習している


「わ~、美味しい!」

料理の練習の為に集まったはずなのだが、例によって横島が作っていた試作品の試食会と言う名のおやつタイムになっていた


「よくこんだけ一晩で考えたわね」

「完全なオリジナルじゃないからな。 元々カレーは世界各地で味が結構違うし、ちょっとアレンジしただけだよ。 おからドーナツとクッキーはたまに売ってる店あるだろ? そっちはまだアレンジすらしてないしな」

昨日の今日で何品か試作品を用意した横島に明日菜は逆に呆れ顔だが、実はフレンチカレー以外はそれほど驚く物ではない


「でもこのカレー、味付けが微妙に違うみたいだわ」

「そうや。 カレーの具も違うし、味も微妙に違うなー」

すっかりおやつタイムになっているまき絵や美砂達の中で、千鶴と木乃香だけは同じカレーの微妙な味の違いにすぐに気付いていた

それが育ちの良さから来る物から分からないが、微妙な味付けの違いが分かる舌を持ってるらしい


「よく分かったな。 中華まんとパンに合わせて少し味を変えてるんだが、そんなに違わんはずなんだけどな……」

元々スープのようにサラサラとしたカレーなのでそれぞれにアレンジは加えていたのだが、横島としては簡単に気付かれるとは思わなかったようだ

まあ具材に関しては誰でも分かるだろうが、微妙な味付けは正直なかなか気付くのは難しいレベルでだったのである


「那波さんも木乃香も育ちが違うですからね。 美味しい物を食べなれてるのでしょう」

「那波さんも金持ちなんか? 可愛くてスタイルがよくて金持ちだなんて、世の中って不公平だな~」

横島の疑問に夕映は独り言のように答えるが、千鶴が金持ちだと聞いた横島の返事に騒がしかった厨房の中が静まり返ってしまう

千鶴は変わらず普通にニコニコとしているが、美砂達やまき絵達が何故か驚いた様子で横島を見つめている


「那波さんを可愛いって言った人始めてじゃない?」

驚かれた理由が分からない横島が首を傾げる中で明日菜が理由を教えるが、実は大人っぽいとか美人だとはよく言われる千鶴が可愛いと言われたことが彼女達は信じられないようだった


「確かにスタイルはいいけど、美人って言うのはちょっと早いだろ」

彼女達の驚きの理由を聞いても横島はあまりしっくりこないようだが、横島の感覚の美人は本当に大人の女性であり千鶴はまだ美少女といった部類に入れていた

しかしクラスメートから見ると千鶴は大人に見えるらしい


「大人っぽいのと大人は違うからな~ ちょっと大人っぽいけど表情とかは年相応に可愛いよ」

横島としては深く考えた言動ではないが、千鶴は少し嬉しそうだった

どうやら大人っぽいとか美人よりは、年相応に可愛いと言われた方が嬉しいようである
50/100ページ
スキ