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麻帆良祭への道

「家庭科室で騒ぐんじゃない!」

廊下にまで聞こえるほどに騒ぎ盛り上がる2-Aの生徒達を静かにさせたのは、二年の学年主任である新田先生だった

一応放課後なので授業中ではないのだが、刃物やガスなどがあるだけに黙ってられなかったようだ


「すんません。 すんません」

厳しい新田の表情から説教が始まろうとしたのを感じ2-Aの生徒は微妙な表情をするが、そんな中で横島は突然謝りながら新田の前に出て行くと廊下に導くように家庭科室を出ていく


「貴方も大人なのですから、生徒と一緒に騒がれては困ります。 事故や怪我でも起きたらどうするんですか?」

生徒に注意しようと気合いが入っていた新田だったが、さすがに部外者の横島にはあまりキツイ口調ではない


「今回は貴方に免じてこれ以上何も言いませんが、本当に気をつけて下さいよ」

しかも中学生が多く通る廊下でも平気でペコペコと謝る横島に、新田はため息混じりに気をつけるようにと告げてその場を離れていく


「すんません。 気をつけます」

申し訳なさそうに何度も謝る横島の肩を新田はポンと軽く一度叩くと、そのまま職員室に引き上げて行った


(庇ったのがバレてたな)

去りゆく新田を見た横島は思わず苦笑いを浮かべている

先程ちょっと悪のりしたために新田を家庭科室から出して自分が代わりに謝った横島だったが、その行動が見抜かれていた事に苦笑いを浮かべていたのだ

加えて中学生の前で大人に説教するのを新田が躊躇ったのも横島は理解している


(まともな教師が居るんだな)

生徒の為に叱るというのは予想以上に難しい

実際横島の高校時代は教師に見捨てられていただけに、憎まれ役を自ら買って出てる新田に横島は感慨深いものを感じていた


「大丈夫~?」

「新田に見つかるなんて運が悪かったわね」

家庭科室に戻った横島は桜子や美砂を始めとして多くの者に囲まれるが、横島は失敗したと笑っているだけである


「それじゃ、騒ぎ過ぎないように続きやるぞ」

微妙に重苦しい空気を払拭するように横島がいつもの軽い口調で促すと、2-Aの生徒達は再び料理教室を再開していく

横島の意図に気付いてる者も多少居るようだが、あえて何かを口に出す者はいなく先程よりは多少静かだが和やかな空気で料理教室は進んで行く事になる


「横島さん、あのね。 私嫌いとかじゃないのよ。 だからね……」

「アスナ、もうええって。 横島さんもアスナの気持ち分かってるはずや」

一方横島とクラスメートにからかわれた形になった明日菜は、一人で顔を微妙に赤らめたまま苦悩を続けていた

高畑への想いは強いのだが、だからと言って横島が嫌いな訳ではない

加えて横島は過去に女性に騙されたとの勘違いがあるため、横島の気持ちを察すると意味の解らぬ苦悩を続けてしまうようだ


「明日菜ちゃん、俺が悪かった。 だからそこまで考えなくていいからさ」

結局木乃香と横島で明日菜を落ち着かせるのにかなり時間がかかったのだが、それは横島の自業自得だろう


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