真の歴史へ・その二

辺りが夜の闇からうっすら明るくなる頃


西条と2人の令子は病院に居た

個室のベッドに令子が横たわり、小さな令子も同じベッドに入り眠っている


「参ったわ。 強化セラミックのボディアーマーを着込んでたのに、アバラにヒビが入るなんて…」

令子は悔しそうに顔を歪める


強化セラミックのボディアーマー

これは令子が特注で作らせた物である


現代科学の中では最も軽くて丈夫な防具だが…

ハーピーのフェザーブレッドを至近距離で受けて、ダメージが中にも伝わっていた


令子が病室で休んでる頃、西条は病院の外で美智恵に電話で報告していた

『先生、申し訳ありません。 魔族の退治に失敗しました。 大人の令子ちゃんはアバラにヒビが入り、これ以上の戦闘は難しいかもしれません』

西条は申し訳無さそうに電話で報告する


『詳しい状況を伝えなさい』

美智恵の少しキツい言葉に、西条は申し訳無さそうなまま、昨夜の戦いを説明していく


『わかりました。 私は明日の朝には戻ります。 それまで持ちこたえなさい』

美智恵は西条に指示を出して電話を切る

「やはり、令子じゃ無理だったわね。 それに、西条君でもハーピーの相手は荷が重かったか…」

美智恵は予想よりも悪い結果たが、あまり気にした様子は無い


「まあ、今回は令子に危機感を与えることと、西条君との絆を深めれればいいわ」

美智恵はそう呟き、街を歩き出す

彼女が居る街は香港

ニューヨークに出張に行ったはずの彼女が、何故か香港に居た…


「すいません、空港まで」

美智恵はタクシーに乗り、空港に向かっていく


そして、美智恵への報告を終えた西条はため息をはき、病室に向かう


「令子ちゃん、病室に簡易結界を張った。 気休めにしかならないが、夜までは安全だろう」

西条は少し疲れた表情をしながら病室に入って行く


「ありがとう西条さん」

令子は西条に少し笑顔を作ってお礼を言う


「いや、今回の失敗は僕の作戦ミスだ。 済まなかった。 まさか裏をかかれるとは…」

西条は悔しそうに拳を握りしめる


「厄介な相手ね… ママはあんな魔族とずっと戦って来たのね…」

令子はハーピーの強さを肌で感じ、美智恵の凄さを改めて理解する


「昨夜の相手は魔族としては弱い方だろう… 下級魔族クラスだ。 だが、あの羽は危険だ。 恐らく暗殺や奇襲に特化した魔族なのだろう」

西条は昨夜の戦闘を自分なりに分析していた


「あれで下級魔族なのね…」

令子は自分の実力と魔族の実力の差に、悔しさがこみ上げてくる


「僕と令子ちゃんはまだまだ未熟だな… 僕はイギリスで魔族との戦闘経験はあるが、あんな知恵の回る魔族は初めてだ…」

西条は過去を思い出し、未熟さを痛感する

彼が過去に戦ってきた魔族は、人界に住むはぐれ魔族だ

その中で、暴れるのは本当に知性や理性の低い者達だけである

魔界の過激派魔族とは、力や知性のレベルが違うのだ


「ママには連絡したの?」

「ああ、明日の朝には戻るそうだ。 それまでは僕達で身を守るしか無い」

令子の問いかけに西条は、自分が令子を守らねばと気合いを入れて答える


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