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麻帆良祭への道

その頃久しぶりの休日を迎えた高畑は部屋で何をする訳でもなく、ただ時間が過ぎるのを感じてるだけだった


(こんな時、師匠ならばどうしただろう)

ネギの修行先から始まった今回の問題に高畑は正直言うと戸惑っている

近右衛門の懸念もネギの立場の難しさも理解しているが、それでも高畑はネギが安心して修行に励める環境が必要だと考えていた

ナギとアリカの遺児であり二人が残した未来への希望を守ることは、高畑には絶対に譲れない一歩である


「まさか学園長までネギ君を見捨てるとは……」

ナギやアリカの苦労や悲劇を知る近右衛門までもが、二人の遺児を見捨てる決断をした事実を高畑は今だに受け入れられないでいた


「ナギ達は世界を守ったのに、その世界はあまりにもナギ達に残酷だ」

高畑も昔から解っていた事ではあるのだが、世界はあまりにもナギ達に冷たい

ナギ達が救った世界なのにナギの息子が自由に生きられない現状のあまりの理不尽さに、高畑は込み上げてくる怒りの感情を抑え切れなかった


「師匠ならば学園長を説得出来るんだろうな……」

世界の理不尽さに加えて自分の無力さを歎く高畑だが、実は高畑は知らない事も多い

ガトウは確かに高い交渉技術があったが、だからと言って交渉だけで赤き翼の協力者を増やした訳ではない

大戦中や大戦後に赤き翼が知り得た様々な極秘情報を引き換えとして渡すなど、実利を用いた交渉をしていたのだ

そもそも高畑のように義や情だけで交渉などしても、良くも悪くも目立つ赤き翼の協力者など簡単に得られるはずがなかった

近右衛門にしても元々赤き翼に協力した原因は、情報が欲しかった事が大きいのだ

まあ近右衛門の場合は人がいいのか甘いのか、実利以上の厄介事を抱え込むハメになったのだが……


「僕がネギ君を一人前にするしかないのか」

結局高畑としては自力でネギを守り一人前にするしか道がない

今まで世話になった近右衛門にこれ以上無理を言うなど、出来るはずはなかった

それに明日菜の平和な人生を守るには近右衛門の力が必要なのは確かなのだ


「しかし、僕にネギ君が一人前になるまで守れるんだろうか……」

今回の事で高畑はネギを取り巻く環境の危険性を改めて再認識していた

今回は近右衛門が間接的とはいえ受け入れてくれたからよかったが、次に何か問題があれば高畑が一人守らねばならない

今まで赤き翼や近右衛門などの庇護下に居た高畑は、自身の未熟さを理解するがゆえにこの先に不安を感じずにはいられなかった



「この男、あの娘の気持ちをまるで考えてないな」

一方高畑を監視していた土偶羅は、現状の明日菜が幸せだと勝手に決め付けている高畑に呆れていた

目の前に居る明日菜の気持ちすら気付けぬ高畑に、土偶羅の評価が更に下がったのは言うまでもない

近右衛門が高畑と明日菜を離す決断をしたのを正解だと、土偶羅はしみじみ感じていた


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