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麻帆良祭への道

「二人とも俺に何を期待して…… 俺がモテないのは前に話しただろ?」

木乃香の言葉に明日菜も期待するような視線を向けるが、横島は困ったようにオロオロしてしまう

やはり横島は恋愛は苦手なのだ

自分のことならば嫌われて元々だからと笑って言えるが、それを明日菜に言えるはずがない


「自分でモテるなんて自慢する人って、普通いないわよね」

「そやな、お客さんの女の子ともすぐに仲良くなるやん」

謙遜とかではなく真実を話しているに全く信じてない二人に、横島はため息をはくしか出来なかった

日頃の行いがいいのかはたまた悪いのかと横島本人は悩むが、妙に美化されてる現状にはやはり戸惑ってしまう


「とりあえず俺のことは置いといて、明日菜ちゃんの方だけどさ……」

これ以上弁解しても無駄だと判断した横島は話題を明日菜に戻す

まあ過去の恥ずかしい思い出を語れば信じてくれるのかもしれないが、だからと言って二人に嫌われるのは嫌だという微妙な想いもあるのだ

せっかく好かれてる現状でわざわざ嫌われたいとは、いくら横島でも思うはずがなかった


「まずはさ、普通に会える環境を作ったらどうだ? 告白とか考えてるかもしれんが、どっちにしろ中学卒業までは難しいだろうし…… ならいっそのこと関係を決めないで親しくなる方がいいと思うんだが」

デートとか告白とか形にこだわりを見せる明日菜に、横島は形を決めないで現状のまま親しくなる道を勧めていた

親代わりである高畑と明日菜ならば、現状では恋人を目指すよりは普通に友達以上親子未満がいいかと考える


(そもそも現状で告白してもフラれるだけなんだよな。 明日菜ちゃんが自分の中にある感情を理解するまでは今のままがいい)

決して言葉には出せないが、現状では明日菜の告白が実る可能性はゼロだった

明日菜の正体を知る高畑が安易に告白を受け止めるとは思えない訳だし

まあ将来的に明日菜が独り立ちして告白するならば可能性はあるのかもしれないが……

横島としては家族の愛情も知らない明日菜が、自身の愛情の意味を知る機会を用意するくらいしか出来ることはない


(そういや、赤き翼には高畑に似た奴が居たな…… 案外消された記憶の想いでも残ってるのかもしれんな)

悩む明日菜を見ていた横島はふと高畑の師匠であるガトウの存在を思い出す

どこか高畑と雰囲気というか空気が似てる部分があるのだ

かつて捨てたはずの記憶が、何かしらの想いという形で残ってると考えても不思議ではなかった


「高畑先生の事になるとアスナ全くダメなんよ。 普通にご飯一緒にとか誘えばええのに……」

横島の意見に木乃香も同意するが、問題は明日菜が高畑の事になると必要以上に不器用になる事である

親代わりの高畑と明日菜が食事などをする事は決しておかしくないのだが、どうも明日菜はかなり不器用なようだった


「うーん、そいつは困ったな」

明日菜の苦悩を見るに従って、横島は明日菜を放置したままの高畑に怒りを感じていく

世界やら恩人の息子やら何をしてもいいが、もう少し明日菜を見てあげて欲しいという想いが強くなっていた

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