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麻帆良祭への道

「本来ならばワシは数年以内に引退したかったのじゃ。 残りの人生を娘や孫と一緒に暮らしたかったからのう。 しかし今回の件でそれは難しくなる。 ワシの気持ちを少しは理解してくれんかのう」

ネギの為にもう少し支援を引き出そうと考えている高畑に、近右衛門は僅かにため息をはいて密かに考えていた自身の今後について語る

こんな問題が起きなければ、諸問題を解決して数年以内に引退したかったのだ

まあ一度に完全な引退は不可能だろうが、徐々に若い者に任せるつもりだった

西と東の問題は近右衛門が和解の道筋を付けて、後を娘婿の詠春に任せる手筈になっていたのである

詠春は政治的な能力は乏しいが真面目な性格もあり部下や関西の幹部の信頼はあるし、関東の人間も詠春の人柄は評価が高い

対外的な問題は誰か補佐する者が必要だが、東西の二つの組織をまとめる内向きなことは案外詠春が向いてると近右衛門は見ていたのだ


「この際だから君に言っておくが、ワシはネギ君の将来よりも東西の魔法協会や木乃香の将来が大切じゃ。 どちらかしか守れんのなら、ワシは迷うことなく後者を選ぶ。 例え君や婿殿に怨まれようとな……」

その言葉は高畑にとってショック以上の衝撃だった

かつて行く宛のないアスナ姫と高畑を受け入れ長年高畑の行動を支援していた近右衛門が、場合によってはネギを見捨てると言っているのだから

高畑は今この瞬間まで、何だかんだ言っても近右衛門は支援してネギを守ってくれるだろうと信じていたのである


「高畑君や。 ネギ君を守りたいならば、ワシのような年寄りの力を当てにするのではなく己の力で守るべきじゃ」

近右衛門の突き放したような言葉に高畑は最早返す言葉がなかった

そもそも高畑は近右衛門の怒りの意味を本当の意味では理解してない

高畑自身はかつてのガトウのように動いたつもりだったのかもしれないが、結局のところ高畑の行動は近右衛門頼りであり近右衛門に負担を押し付ける事でしかない

命を賭けて守ると強い決意で言ってはみたものの、高畑が唯一出来る直接命を賭ける段階になるという事はそれはもう負けが決定してるようなものなのだ

さも当然のようにネギの問題での支援を求める高畑に、近右衛門は多少失望していた


「明日菜ちゃんの件に関しては、今後は君は手を引いてくれ。 ワシが責任を持つ。 それと間違ってもエヴァに頼るなど考えてはならんぞ。 英雄の息子を闇の福音がたぶらかしたなどと噂になれば、本国に介入の口実を与えるからのう」

最後まで言葉が出ない高畑に、近右衛門は明日菜の問題から離れる事も通告する

ネギはあくまでも高畑個人が麻帆良に招くのであり、ネギが麻帆良の魔法関係者に一切関わる事を禁止するほど徹底していた

高畑としては信じていた近右衛門に見捨てられた感じもあるが、近右衛門の意思に背いてまで麻帆良にネギを招いた責任を考えれば仕方ないとも言える

まあ近右衛門としてはこれでも高畑とネギに温情をかけた方であり、本来ならば高畑の追放も含めた処分が必要な問題だった

結局高畑は近右衛門の命令に従うしか道はなく、無言のまま部屋を後にする


「ワシの残り少ない夢じゃったんじゃがのう……」

一方高畑が去った学園長室では、近右衛門が娘や孫との穏やかな生活が奪われたショックを隠しきれないようであった
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