二年目の春・2

「よう。 お嬢ちゃん達なんかいるか?」

一方麻帆良が春を迎えようとしていた頃、魔法世界の辺境にも春が訪れようとしていた。

ネギ達が住む辺境の地域は比較的温暖な気候で一年を通して暖かく雪なども降らないが、かといってさほど発展してる地域ではなくのどかな田舎である。

主食は麦で主にパンを家庭で焼いて食べるが、後は季節の野菜と海が近いので海産物が豊富なのが特徴だ。

ネギ達は週に一度近く町まで食料の買い出しに行くのがここに来てからの日課であり、この日も家族揃って買い出しに来ている。


「これなんか良くない!?」

「そうね、じゃあ一山もらおうかしら。」

基本的に日々の料理はネカネが作っているが、少し前からネカネはアーニャにも料理を教えていた。

本来ならば母から子へと教わることであるが、アーニャもまた幼い頃に故郷の村を魔族に襲われ両親を石化されているので料理を習う機会がなくほとんど料理が出来なかったのだ。

ネギの祖父の方針としてネギとアーニャは普通の家庭と同じく育てようという方針になっているので、ネギは借りてる借家の補修などの日曜大工なんかを教わっていてアーニャは料理や裁縫なんかを教わっている。

他にも借家の隣接する土地を畑にしたのでこちらの作業も一家総出で手伝っていたが。


「まいどあり。 そうだ、これおまけで持ってけ。」

「ラッキー、おじさんありがとう!」

そんなこの日ネギと祖父は麦や調味料や酒など重い物を中心に買い出しをしていて、ネカネとアーニャは野菜や肉などを中心に買い出しをしていた。

ど田舎ということもあり最近では顔見知りも増えていて、たわいもない世間話なんかをしながら買い出しをしているがネギやアーニャの生活力という意味では着実に成長している。

まあ魔法世界の場合辺境は決して治安がいいとは言えず必ずしも住みやすい訳ではないし、こうして露店市で買い物をしていても最低限警戒が必要ではあるが。


「いい茶葉が手に入ったわ。 ネギは紅茶が好きだから喜ぶわね。」

ただ魔法世界に来て数ヵ月が過ぎた現在ではネギやアーニャのみならず、ネカネもまた穏やかで平穏な日々に安らぎと幸せを感じていた。

もちろんメルディアナの頃に比べると不便なことも多く、ネギの好きな紅茶の茶葉などは値段が高い上になかなかいい物が手に入らないなど苦労もある。

しかしネギの祖父が去ったメルディアナの混乱を思えば、そんな不便なことも気にならないようであったが。


「このまま静かに暮らしていけたらいいけど……。」

一週間分の食料を買い込んだネギ達は手分けして持ち杖やほうきで空を飛んで家に帰ることになるが、ネカネは今が幸せな分だけこの先に微かな不安も感じていた。

かつて魔法世界の英雄だと誇りに感じていた叔父のナギが、その功績に比例するように恨まれてもいる事実をネカネですらメルディアナの混乱の時まで実感出来なかったのだ。

いつか自分達の周りに再び騒動が起こるかもしれないとの不安をネギとアーニャに隠しながらも、ネカネは二人を見守るしか出来なかった。


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