麻帆良祭への道

同じ頃、近右衛門は本国穏健派から内密に来た要請に表情を引き攣らせていた

それはネギ・スプリングフィールドの育成に関する要請であり、メガロメセンブリア元老院やヘラス帝国などの権力の届きにくい麻帆良においてネギを受け入れ育成して欲しいとの要請である

穏健派にとってナギ・スプリングフィールドの息子は次世代の立派な魔法使いとして大いに期待する存在だった

過激派の暗躍や暴挙を抑える為にもネギの将来に期待する動きがあるのだ

まあここまでなら近右衛門は何かしらの理由を付けて断れるのだが、問題は受け入れる代償として地球側の各国魔法協会が要望していた戦時の指揮命令権の改正に伴う非公式の話し合いの場を設けることが本国元老院で決まったとの文章である


「あやつめ……、孫の為に魔法協会を割る気か?」

この要請の元がネギの祖父な事を近右衛門は瞬時に悟っていた

本国穏健派を動かすほどの政治力のある者など限られているのだから

そしてこの問題が魔法協会の問題に収まらず、地球側の国家や魔法協会とメガロメセンブリアの権力のバランスを崩す可能性があるほど危険な問題だと近右衛門は考えている

地球側各国魔法協会は正式にはメガロメセンブリアの下部組織だが、同時に地球側各国のそれぞれの国の影響力も無論あるのだ

魔法協会の存在は世界各国により価値や実情は違うし、中には地球側の国家が魔法協会を手中に納めてる国もある

現状のバランスを悪戯に崩せば地球側の魔法協会の所属や存在意義など、新たな権力闘争や争いを起こしかねない

確かに地球側の魔法協会は戦時の指揮命令権の撤廃を主張していたが、同時に地球側の魔法協会が纏まって行動する為の連合組織の設立も訴えていたのだ


「本国のやり方は相変わらずえげつないのう……」

メガロメセンブリアにとって一番都合が悪いのは、地球側の魔法協会が連合組織を形成する事である

従って以前からメガロは地球側魔法協会同士の対立を煽ったりするような工作を活発に行っていた

今回も確かに戦時の指揮命令権の改正に向けた話し合いは地球側魔法協会には大きな前進だが、同時にメガロメセンブリアは地球側が連合を組めないように対立工作も絡んでいる

いくら戦時の指揮命令権があっても、地球側の魔法協会が纏まって行動しなければいつの間にかメガロメセンブリアや地球側各国に飲み込まれて終わりなのだ

結果として戦時の指揮命令権は譲ることはあっても、その他の締め付けを強化して魔法協会への影響力を減らすつもりなどないのは明らかだった


「それでも、戦時の指揮命令権は欲しいのが痛いとこじゃな……」

麻帆良のようにメガロメセンブリアの勢力を一掃した魔法協会ならともかく、地球側各国魔法協会はメガロメセンブリアの裏側が見えてもなお戦時の指揮命令権は撤廃させたかったのだ

最早問題はネギの去就というよりは、メガロメセンブリアと地球側魔法協会の権力闘争に変化しつつある

この時の近右衛門の表情は滅多に見ないほど険しく苦しそうだった


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