麻帆良祭への道

そのまま碁を打っていたエヴァだったが昼時の客が来る前に帰ってしまう

横島は昼食に訪れる客の対応で忙しく働くが、実際忙しい時間は長くて一時間くらいである

お昼時を過ぎると横島も余り物などで少し遅い昼食にしつつ、この時間くらいによく来るビッケとクッキの相手をするのが日課だった

クッキに関しては何度か桜子と外出するようになったせいか外出に少し慣れたようで、ごく最近だがビッケと一緒に散歩に来るようになっている

基本的に桜子が居ない日中は暇らしく、雨の日以外は店に散歩に来るのが日課になっていたのだ


「おーし、今日はボールで遊ぶか」

二匹の子猫と話しをしながら遊ぶ横島だが、最早常連はなれてしまい誰も気にする者はいなかった

それどころか人懐っこいビッケは店の常連に遊んで貰ったりもしている

流石に人見知りのクッキはあまり人には近寄らないが、それでも近所の老人などには懐いてる人も僅かだがいた

店の床をゴムボールを追いかけて走る二匹は、すっかり店の人気者である


「こんにちは……、って貴方何してるの?」

床に座り込んでビッケとクッキとボールで遊ぶ横島の姿に、珍しく日中に来店した刀子はポカーンとしてしまう

店内には数人の客が居るにも関わらず、床に座って子猫と遊ぶ店主など見たことがない


「いらっしゃい 何って、こいつらと遊んでたんですよ。 こいつらは開店前からの常連なんです」

ボールで遊ぶ二匹にお客さんの邪魔をしないように言葉をかけた横島は服の汚れを落とし手を洗って刀子の対応をするがのだが、その表情は呆れたような珍しい物を見るような不思議な表情であった


「この時間は珍しいっすね」

「ちょっとこっちの方に用事があったから。 一休みしたら戻らないとダメなのよ」

珍しく日中に来店した刀子だが、近くに用事があり休憩がてらに寄ったらしい


(本当に人生が楽しそうね)

カウンター席に座りコーナーを飲み一息ついた刀子は、店の奥でボールで遊ぶ二匹の子猫に視線を向ける

先程横島と二匹が遊ぶ姿は、本当に楽しそうで思わず羨ましくなるほどだった


(こんな人が彼だったら……)

子供のように楽しそうだった横島の表情に、刀子は思わずらしくない想像をしてしまう

バツイチで離婚して以来男性と付き合ってない刀子は、最近いろいろ考える機会が増えていたのだ


(魔法教師なんかやってもいい事ないのよね。 よほど理解ある男性じゃないと付き合えないし…… 正直同業者はもう嫌だし)

横島と会うとよく感じるのだが、忙しく魔法教師をやっても刀子にとっていい事などほとんどなかった

忙しくて男性との出会いは少ないし、仮に出会ったからと言って付き合うのもまた難しい

相手が一般人の場合はよほど親密にならねば秘密は打ち明けれないし、かと言って同業者である魔法使いも前回の結婚で懲りていた


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