二年目の春

「わー、立派なひな人形ですね。」

一方この日の夜には横島宅では雛人形の飾り付けが行われていた。

雛人形に関してはをどうするかは散々悩んだ横島であるが、結局は異空間アジトから調達することにしていて向こうでひな人形作りをしているハニワ兵から送って貰っている。

理由は木乃香達なんかに異空間アジトの存在を教えて嘘をつく必要がなくなったことと、横島宅に住むハニワ兵が買うよりは仲間のハニワ兵の雛人形を使って欲しいと言い出したからである。


「雛人形専門の職人をやってるハニワ兵が居るんだと。」

本格的な桐の箱に入った雛人形はテレビなんかで見る豪華な物よりも精巧で立派な物であり、製作したハニワ兵の熱意が伝わるようだった。

ぶっちゃけ横島としては買っても良かったのだが、基本的にハニワ兵は自分達が作った物を横島達が使ったり食べたりしてくれると本当に喜ぶのだ。

そしてさよとタマモは家族でもあるハニワ兵の意見をそのまま尊重した結果、横島宅ではハニワ兵製雛人形を飾ることになっていた。


「この小道具とかも本当によく出来てますよ。」

「うん、すごい!」

さよとタマモは初めて生で見た雛人形に興味津々な様子で興奮気味でもあったが、そもそもハニワ兵製雛人形は売り物ではないので技術の粋を集めて作った一点物のような品になる。

はっきり言って少し立派過ぎじゃないかと横島は思いもするが、元々横島とハニワ兵の関係をハニワ兵側から見ると神様に献上するようなものなのでハニワ兵に任せると当然最高に立派な物が届くようになるのだ。


「お前ら本当に文化を楽しんでるよなぁ。」

基本的に放任主義に近い横島はハニワ兵に好きなようにさせているが、明らかに昔と比べるとハニワ兵は自分達で文化を広げている。

実は今回ついでに知ったことだがハニワ兵達は横島が知らない街なんかも結構作っているようで、異空間アジト内の日本地区には日本の城や江戸のような街が出来ていてハニワ兵達の観光地になっているらしい。


「ぽー!」

なんでそんなにアクティブなんだと首をかしげる横島だが、ハニワ兵は何故か胸を張って凄いでしょと言いたげであった。

ある意味横島とカオスが魔改造した結果とも言える性格をしている。


「さよちゃんとわたしのひなにんぎょうだね!」

「そうね。」

飾り付けは横島とハニワ兵も手伝ったのですぐに終わったが、タマモはさよと一緒の雛人形が嬉しいらしくさよの膝の上で楽しげにはしゃいでいた。

さよ自身は自分は幽霊なんだけどと相変わらず戸惑う気持ちも僅かにはあったが、こうして平和な毎日を送っていると自分は幸せだなと実感するようにもなっている。

ちなみに横島は口には出さないが人形にもあまりいい思い出がなく、タマモとさよが嬉しそうなのはいいが内心では少しだけ複雑だったが。

将来生き人形にならなきゃいいけどと少し心配もするが、タマモの場合は生き人形も家族にしそうだと思うと笑ってしまいそうになっていた。


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