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麻帆良祭への道

麻帆良祭に向けた準備で僅かに周囲が慌ただしくなり、ネギの修行先の問題が麻帆良に降り懸かかろうとするが横島の日常は相変わらずである

この日は木乃香とのどかとケーキを作っていた


「そんな感じだな。 基本的な分量とか手順さえ守れば、美味く出来るよ」

今日は基本的なチーズケーキを一緒に作っていた横島達だったが、特に理由がある訳ではない

午後の暇な時間に木乃香が来ると、頼まれるまま料理を教えたりしている

最近は同じく料理が好きなのどかも加わり、二人と料理を作ることが増えていた


「料理の本とそんなにレシピは違わないんですね……」

横島のレシピを見るのどかは、予想以上にシンプルなレシピに驚いている

それほど有名ではないが、横島のケーキは知る人ぞ知る人気商品だった

持ち帰りのみの客も相変わらず多く、その味は麻帆良に徐々に広がりつつある

何か秘伝の材料や製法でもあるのではと考えていたのどかだったが、レシピは割と普通なのだ


「アレンジしてもいいが、基本的なレシピでも十分美味いぞ。 いつも店に出してるのはこれだからな」

いつものように和やかな空気で調理を始めるが、横島の料理の真髄はとにかく丁寧な作業だった

これは料理の技術が魔鈴やおキヌといった几帳面な性格の人の技術である影響だろうが、普通に作ってもひと味ちがうほどの技術の差がある


「ウチな、今度おじいちゃんに作ってあげたいんよ。 この前会った時疲れてたみたいやったんや」

横島が言う事を忠実に守る木乃香は、その繊細な感性から地道に料理技術が向上していた

素直な性格と天性のセンスの良さを見事に生かした料理は、横島や明日菜が驚くほど上達してるのだ

その料理の腕に超や五月が目を付けるほどで、僅か数ヶ月で木乃香の料理は上達している

当初は占いが目的だった木乃香だが横島があまり教えたがらない事もあり、料理の腕ばかりが上がっていた

まあ木乃香自身も料理が好きな為に気にしてないが、地味に目的を逸らされている


「偉い人も大変なんだよ。 責任って重いからな。 たまに夜に来て一人で酒飲んでるぞ」

「あかんなー、おじいちゃんにあんまり飲まないように言うてや。 飲み過ぎはあかん」

最近の近右衛門の様子は木乃香も気になるらしく、元気づけたいと考えてるようだ

しかしそれはそれとして祖父の健康は特に心配してるらしい


そんな会話をしつつケーキを作る様子は仕事中には見えないだろう

それでも途中で客が来店すれば対応してるのだが、あまり客が来ない時間なだけにそれ程客に時間を取られる事なく作業は進む


「あとはオーブンで焼くだけだ。 とりあえず失敗してもいいから一回自分で作ってみるといいよ。 そういやあレストランの内容決まったか?」

出来上がった生地をオーブンに入れた横島は一休みしつつ、先日の話し合い以降で何か決まったか尋ねるが二人は微妙な表情をする


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