麻帆良祭への道

「挨拶がおくれて申し訳ない。 うちの生徒が無理を言ったみたいで済まなかったね」

さて雪広グループ担当者を含めた話し合いから遅れること二日、2-Aの担任の高畑が横島に挨拶に来ていた

例によって出張から帰ったらすでに麻帆良祭の件が決定していたらしく、慌てて雪広グループや超包子の関係者に挨拶に回ってるらしい


「気にせんで下さい。 俺は混ぜて貰って楽しみにしてるくらいっすよ」

申し訳なさそうな高畑に対しても横島はいつもと同じく軽い調子で対応する


(他人のやる事をとやかく言うつもりはないが、表の教師をもうちょっと真剣にやったらいいのに)

表向きはいつもと変わらぬ横島だが、高畑に対する印象は最近あまり良くなかった

その理由は高畑の教師としての中途半端さに他ならない

木乃香達の話や前回の定期テストで分かった事だが、どうも高畑は出張が多く生徒の指導が中途半端だと感じたのだ

明日菜とのどかの二人は短期間の指導で結果を出しただけに、高畑が何故もっと気を配らないのか理解に苦しむ

加えて横島は高畑の出張が『完全なる世界』という組織の残党との戦いだと土偶羅の調査で知っただけに、高畑の評価が著しく下がっていた


(世界の為に働きたいなら教師を辞めてそっちをやればいいだろうに…… 中途半端だわ)

横島としては高畑がテロ組織と戦う事を否定はしないが、何故教師と掛け持ちしてるか理解出来ない

元々横島自身は学生時代にいい教師と出会った経験がないだけに、高畑のような中途半端な教師が好きになれないという個人的な理由もある


(10才もいかないガキの頃からの大戦の英雄か…… 苦労が滲み出てるような人生だな。 しかし経験の割には未熟な気が……)

高畑の経歴や過去は横島も同情したくなるほど厳しいものだったが、その割には精神というか心の未熟さが目立つ気がした

高畑が苦労を重ね頑張って生きて来たのは分かるが、何かが高畑の心を歪めてる気がしてならない


(あのじいさんが疲れる訳だな)

横島は最近高畑がかつての英雄の息子を麻帆良に呼ぶ為に動いてるのも知っている

そしてそれがエヴァや明日菜を麻帆良に預けたナギの息子だとの情報も掴んでいた

いろいろ厄介なガキをわざわざ麻帆良に呼ぼうとするなど、あの近右衛門が疲れる訳だと内心で苦笑いを浮かべてしまう


(あんまり関わるとロクなことなさそうだな)

己の正義を持ち一生懸命生きて常に頑張ってる高畑は端から見れば立派な人間だし、横島も高畑が立派な人間だという認識は持っている

しかしあまり関わると何か面倒事に巻き込まれそうな予感がしてしまう


(明日菜ちゃんも面倒な人を好きになったな…… まあ明日菜ちゃんのあの感情は純粋な恋愛とは違うんだけど)

長々と無関係な高畑のことを考えていた横島だったが、その理由は明日菜である

明日菜の周りは明日菜が高畑を好きなのは有名な話なのだが、横島は明日菜の好きが純粋な恋愛の感情じゃないと気付いていた

しかしだからと言って放置も出来ずにどうしたものかと心配していたのである


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