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平和な日常~冬~6

「そう言えば、横島さんって年いくつなんです?」

ポリポリと豆を食べる一同であるが、いつの間にかビールを飲みだし豆をつまみにしている横島にさよがふと疑問を問い掛けた。

その一言は意外にも衝撃だったようで、タマモ以外の少女達と刀子は思わず豆を食べる手が止まる。


「俺か? 確か三十……いくつだっけ?」

そう言えば本当の年齢も聞いてなかったなと思う者や、見た目通りの年齢でないことに驚く者。

そして全体としては過去の話はあまり話したがらない横島を気遣っていた少女達であるが、横島はあっさりと年齢を答えようとする。

尤も横島がまともに年齢を数えていたのはかつての仲間達を失うまでであり二十八才くらいまでだった。

それから数年は一人で神魔相手に闘っていたのですぐには思い出せないらしい。


「私達に聞かれても、普通自分の年くらいは覚えてるものですよ。」

「いや、誕生日が嬉しいのは二十歳までだよ。 俺の場合は18で純粋な人間じゃなくなったしな。 この姿もそこでほぼ止まってるんだわ。」

自分の年も覚えてない横島に呆れた表情を見せる少女達であるが、横島が誕生日が嬉しいのは二十歳までだと告げると刀子だけは消極的ながら頷く。

ただ三十代となると高畑と同年代か少し年上になることになり、少女達はそれをどう受け止めていいか少し悩むことになる。

そしてもう一つ衝撃だったのは横島の見た目が十八才で止まってることだろう。


「まあ年齢なんてあってないようなもんだしな。 どうでもいいけど。」

「相変わらず変なとこに軽いわね。」

「お父さんよりは若いのかぁ。 ってかここでは二十歳なんだっけ? ややこしいね。」

悩む少女達と対照的に横島は軽い様子で年など全く気にしてなく、少女達の中で一番深く考えない明日菜は横島の軽さに呆れつつも横島がいいならいいかとアッサリと受け止める。

他には桜子などの家族が居る少女達なんかは自身の父親よりは若いのかと高畑や父親と横島を比較するが、そもそも横島の見た目や性格はどうみても二十歳くらいにしか見えない。

時々横島がお父さんのような年上視点になる訳は分かった気がするが、それを考えるなら年のわりに幼いというか未熟な気がしないでもなかった。


「私は若々しいのは羨ましい気もするわ。」

「こっちは若さを保つ魔法薬とかないんっすか?」

「ちょっと待って!! そんな魔法薬あるの!?」

「あっありますよ。 俺の知り合いが作ってましたから。」

横島の年齢と見た目から自分達との関係を考えてしまう少女達であるが、ある意味横島の年齢が一番気にならない刀子はそれよりも見た目が若々しいことが羨ましいとの本音をこぼしてしまう。

正直女性としての若さが曲がり角に差し掛かってる刀子だけに、あってないような実年齢より見た目が重要だった。

そもそもこのままでは自分が一番先に老けていくし、いずれ横島に見向きもされなくなるのではとの恐怖もある。

だがここで横島が若さを保つ魔法薬の存在を匂わせると刀子は周りがびっくりするほど食い付き、真偽を確かめるばかりか欲しいと顔に書いていた。


「貴女達だって十年もすれば同じ悩みを持つのよ! 横島君は老けないんだからっ!! 問題は見た目なのよ!」

最早大人の女の余裕もない刀子に若干引いてる者も居たりするが、刀子にとってそれは本当に切実であり少女達もすぐに他人事ではなくなると開き直るように言い切る。

そもそも年齢は寿命や老化があるから意味があるのであって、それがあまり関係ない横島との関係を考えるなら見た目の方が重要だった。


「えーと、すぐに作ってあげますよ。 刀子さんにはお世話になってますし。」

そのまま刀子は流石に催促の言葉は口にしないが当然暮れるわよねと無言の圧力が横島にはかかっていて、横島は久しぶりに身の危険を感じたようにすぐに魔法薬を作ってあげることを約束していた。


「刀子さん、弾けたわね。」

ちなみに刀子が堂々と問題は見た目だと言い切ったことに少女達はポカーンとしていたが、美砂は刀子が完全に一人の女性として弾けたと何故か感心したように呟いていた。

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