平和な日常~冬~5

「海はいいなぁ。」

その後囲碁が終わると横島はビーチチェアに座り海で遊ぶ女性陣を眺めていた。

刀子以外は少々若いがそれでも女性の水着姿は見てるだけで楽しい。

かつてのように露骨ではないが別に煩悩が枯れた訳ではないので、女性の水着姿に何も感じない訳ではない。

ただ現状では見てるだけで十分というか、それ以上何かする勇気などないが。


そして昼食は砂浜で海鮮バーベキューをすることにして、横島は高畑やハニワ兵達に手伝ってもらいながら準備をすることになる。

一般的に海水浴場ではバーベキュー禁止の場所などが多いが異空間アジト内にはそんな決まりなどあるはずもなく、海の家で普通にレンタルしている。


「私は学校の行事以外での野外バーベキューは初めてです。」

「あっ、私も!」

お昼が近くなりそろそろお腹が空いたのか準備をしている最中から少女達が集まって来るが、南国の綺麗な海の海岸でのバーベキューはなかなか経験出来ることではない。

まあ横島からすると意外だったのは、野外バーベキューの未経験者が結構居たことか。

学校の行事などでは経験があるようだが、家族でバーベキューやキャンプに行った経験がない者が経験居る。

横島の場合は父大樹がアウトドア派だったため、幼い頃からバーベキューなどはなんどもしたのだが。


「横島さんは今更だけど、高畑先生も手慣れてるわね。」

「僕は子供の頃から詠春さん達と旅をしていたから、この手のことは慣れてるんだよ。 野宿することもよくあったし、食材すら現地調達だったからね。」

横島がバーベキューに慣れてるのは今更珍しくはないが、この日は高畑も手慣れた様子は手伝っており料理が得意ではない高畑にしては珍しい光景だった。

しかし高畑は赤き翼と一緒に旅をしていたので野外での調理の手順なんかはそれなりに慣れてるらしい。


「そう言えば映画でも野宿してましたね。 あんな感じだったんですか?」

「あれはかなり美化した映画だからね。 実際は今の君達と似たような感じで賑やかに騒いでたよ。 鍋なんかやると詠春さんが鍋奉行みたいになって肉ばっかり食べる人を怒ってたしね。 肉の取り合いで喧嘩して周辺の地形が変わったこともあるよ。」

新鮮な魚貝を焼き始めると醤油が焦げる香ばしい匂いが辺りに広がる中、高畑は少女達から請われるままに昔話を語り出す。

昨日見たサムライマスターの映画ではとにかくナギが美化されてるので野宿のシーンでは真面目に悩む姿や相談する姿ばかりであったが、実際は全く違い今バーベキューをしてるように賑やかだったと語る。

まあ肉の取り合いで地形が変わるほど喧嘩したと言うと流石に呆れていたが。


「なんかイメージと違う!」

「ナギは横島君を子供にしたようなイメージが一番近いかもしれない。 よく言えば豪快で悪く言えば非常識な人だったからね。」

そんな高畑の赤き翼の話は美化された映画により、尊敬すべき英雄をイメージしていた少女達のイメージを完全にぶち壊していた。

しかも高畑はナギのイメージとして横島を子供にしたようだと語ると、少女達はなんとも言えない表情で横島に視線を向ける。

ただでさえ自由奔放な横島から更に大人としての部分を外すと、本当に滅茶苦茶な人間だとしか思えない。


「人を非常識の権化みたいな言い方しないでもらえますか?」

「そのとおりだろう。 タカミチにしては的確な表現だ。」

流石に横島はナギほど非常識ではないと自負するようで素の表情で抗議するが、困ったように苦笑いする高畑を援護したのは同じくナギを知るエヴァであった。


「そもそも俺はいろいろ成り行きや偶然が重なってだな。 俺自身は普通なんだって。」

「普通は成り行きや偶然がそれほど重ならんのだ。 成り行きや偶然を重ねたのは貴様が非常識だからだ。 貴様に普通と言われると普通という言葉が逃げ出すわ。」

結局そのまま横島とエヴァは言い合いになるが、周りの少女達はエヴァの言葉のキツさはともかく内容はそのとおりなんだろうなとしみじみと感じていた。








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