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平和な日常~冬~5

「肉体的にはほとんど力は落ちないですよ。 俺は人間じゃないんで。 まあ落ちたら落ちたでいいんですけどね。」

刀子の素朴な疑問に対して横島は人ではないので力は落ちないと語るが、同時に落ちたら落ちたで構わないと言うと刀子や高畑を驚かせる。

一般的に自ら苦労して会得した力や技を失っても構わないと考える者はあまり居ない。

年齢による肉体的な衰えは人間ならば誰もが経験することだが、普通はそれを最小限に留めるように努力するものなのだ。

まして見た目が二十歳そこそこの若者が言うような言葉ではない。


「力を失うことに不安はないのかい?」

現時点で横島の心情をそれなりにでも理解しているのは詠春だけだろう。

力を得て一度は世界を救った詠春は横島の言いたいことがなんとなく理解出来る気がした。

そんな中で更に疑問を投げ掛けたのは日頃はあまり横島に深入りしない高畑である。


「もちろん不安はありますよ。 ただ極論を言えばどんな状況でも不安や希望はあるもんだと思いますよ。 よほどの事じゃない限りはね。」

タマモ達と明日菜が居るので高畑も横島もあまり込み入った話しはしないが、それでも高畑は自分の価値観とまるで違う横島に興味が尽きなかった。

正直明日菜を守るにも魔法世界を救うにも力が必要だと高畑はずっと思って来た。

横島はそれを否定しないが物事に対する見てる視点がまるで違うことに高畑は気付いてしまう。


「あの、力ってないとそんなに不安なものなんですか?」

「そりゃ不安だろうさ。 世の中って根本的には弱肉強食だからな。 法やルールが守ってくれるのも国に力があるからだし。 まあ力って言ってもいろいろあるけど。」

横島はいったい何を見て何を考えているのか高畑や刀子はそんな疑問が尽きないが、それとはまた別の疑問を感じたのは明日菜である。

横島も高畑も刀子も日常で何かしらの力を見せることはないし、それほど力が必要だとも求めてるとも思えない。

まあ現代日本の女子中学生に力の在り方を理解しろというのが無理のかもしれないが。



「うわ~凄いですね。」

さて少し話が脱線した刀子達であるが、準備運動を終えると早々に組み手が行われていた。

本当はそれぞれが一人で基礎的な鍛練の予定だったのだろうが、せっかく人数がいることから一人では出来ない組み手に変更したらしい。

まずは高畑と詠春が組み手を行うが周囲の環境を破壊しないようにと加減はするものの、一般人では目で追うのがやっとと言うスピードの組み手にさよとタマモはパチパチと拍手をして楽しそうにするも明日菜は唖然としている。

どう考えても人間が普通に出せるスピードを越えていて明日菜が驚くのも無理はない。


「……これも魔法なんですか?」

「魔法って一括りに言っても分野は広いからな。 高畑先生も詠春さんも実力の一割も出してないよ。」

それは昨日見たサムライマスターの映画を彷彿とさせるもので、あれは大袈裟に脚色した映画だと思っていた明日菜が驚くのは当然だろう。

加えて横島が二人は実力の一割も出してないと語ると、魔法は凄い危険なものなのだと明日菜はようやく理解していた。

まあ現状で明日菜が見た魔法は説明の時に近右衛門が見せた初歩の魔法と横島の火の玉お手玉なので、イマイチ凄さは実感してなかったようだ。


「一般的な魔法使いはもっと普通よ。 高畑先生達は世界でも有数の実力があるから。」

そしては刀子は魔法をろくに知らない明日菜が、突然世界でも有数の実力者の組み手を見て誤解しないようにと簡単に説明をしていく。

横島は実力の一割も出してないと語るが、それでも一般的な魔法使いの平均的な実力を遥かに越えた力なのである。

ちなみにこの後には刀子も参加するが横島は最後まで普通に見学して終わっていた。

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