異邦の占い師

その後この日は10時頃から占いを始めるが、前日までと違いこの日は客が多かった

まあ多いと言っても1時間に1~2人なのだが、前日までと比べると大違いである

横島が不思議そうに客の一人に尋ねると麻帆良スポーツという新聞に載ったと聞き、苦笑いを浮かべてしまう


(暇って言うか平和なんだな。 ただの占い師をわざわざ新聞に載せるなんて)

麻帆良学園報道部を名乗る人が来て軽く占いをしたのは覚えているが、まさか新聞に載るとは思わなかった

まあ学園都市内で新聞が作られてる事も驚きだが、その麻帆良スポーツが予想以上にしっかりした新聞で麻帆良内ではコンビニなどで売られている点も驚きである

何はともあれ客が来ずに暇過ぎる横島としては、助かったのは確かであった



「にゃ~ん」

「お前ノラ猫か? ってか俺はお前のベッドじゃないんだが……」

その後も占いを続けた横島だったが、何処からともなくやって来た一匹の子猫が膝の上に乗り丸くなってしまう


「にゃ~ん」

「ご主人様のとこに帰らねえと心配してるぞ?」

客が途切れて暇なので子猫と会話をするが、飼い主の隙を見て散歩に来た子猫らしい

他人から見たら子猫に話し掛けてるだけに見えるだろうが、実は横島は動物と話が出来る

横島の中には妖狐と人狼の魂も一部あり、動物全般の言葉を理解出来た

横島からは僅かに霊力を込めて話し掛ければ、相手も理解して普通に会話が可能なのである


「仕方ねえな。 しばらく寝てもいいぞ」

疲れたから寝ると言う自由気ままな子猫に、横島はちょっと困ったような笑みを浮かべて膝の上を寝床として提供する事になった

子猫を膝の上に載せた横島はますます占い師らしくない姿になるが、そんなほのぼのした姿が客の笑顔を誘い一人また一人と客が集まってくる事になる



「この占い師が刹那君が話していた相手なのじゃな?」

同じ頃麻帆良学園中等部学園長室には、木乃香を影から護衛して横島に僅かに殺気を放っていた少女桜咲刹那が麻帆良スポーツを片手に報告に来ていた


「はい。 一般人か裏の人間かは解りませんが、ほんの僅かですが気か魔力を用いた占いをしておりました。 特に怪しい様子はありませんでしたが……」

「このままで構わんよ。 一般人か裏の人間かは知らんが下手に手を出して敵に回したくない」

横島が使った僅かな霊力に気付いていた刹那が麻帆良学園学園長にて関東魔法協会理事長である近衛近右衛門に報告をするが、近右衛門は特に問題視してなかった


「西や本国のスパイの可能性もあるから一応調べさせるが、恐らく違うじゃろう。 麻帆良スポーツに載るような者ではスパイにしては迂闊過ぎる。 はぐれ魔法使いかその子孫と言った辺りかのう」

正体不明の横島の事を推測する近右衛門だが、スパイにしては目立ち過ぎてるし迂闊だと判断する

今までの前例からもそんな目立つスパイは存在しなかったのだから

結局近右衛門は横島に対して、裏と表の中間のような連中の一人だと考えてるようであった

魔法や陰陽術などの力を使う者全てが裏の魔法組織と関わってる訳ではないし、ひっそりと裏の技術を受け継ぐ者は現代にも存在する

近右衛門はそんな大人しい者達を敵に回すほど愚かではなかった

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