平和な日常~冬~3

さて会場を見渡せばこの手のパーティーに慣れた人かそうでない人かは一目瞭然であった。

服装に関しても男性は燕尾服やタキシードを着てる者が半分ほどで、意外と普通のスーツや麻帆良学園の制服の人も多い。

女性に関しても正式なドレスを着た人が半数程度で、後は麻帆良学園の制服の女性も結構見られる。

このパーティーでは基本的にドレスコードはなく服装は自由なので、割と気楽に参加してる人も多いようだ。

ちなみに横島に関しては、ここに来る前にタキシードに着替えさせられている。

ドレスコードはないので横島はスーツで済ませるつもりだったが、夕映達が別途用意していたらしい。


「なんか住む世界が違うな……」

ダンスパーティー開始時刻になりと音楽が変わりダンス慣れしてる経験者達は踊り始めるが、横島達は隅で様子見のままであった。

楽しみにしていた少女達はともかく横島は、自分のキャラじゃないこの空気に完全に気後れしている。

まるで田舎者が都会に初めて出て来たような横島に、千鶴や美砂達はクスクスと笑っていたが。


「あれって……」

「豪徳寺先輩ですね」

「上手いじゃん」

一方会場では雪広姉妹のように見た目からしてプロ並の腕前の人々もいるが、見た目とそぐわぬ腕前を披露してるのは豪徳寺薫だった。

彼は相変わらずの学ラン姿で参加してかなり目立っているが、周りがビックリするほど上手い。

しかも格闘技好きな女性に結構モテるらしく、何人かの女性に囲まれている。


「前々から思ってたけど、豪徳寺先輩っていいとこのお坊ちゃんだったりして……」

リーゼントに学ランと一昔前の不良のような豪徳寺だが、その行動は基本的に善人であり不良らしい行動は一つもない。

実は豪徳寺は横島の店に時々来るが、スイーツの食べ方が綺麗だと夕映達が話題にしていたことがあった。

気軽な喫茶店なんかでも面白いもので、食べ方のちょっとした違いがよくわかるのだ。


「なんか、こういう空気を見ると一発ギャグでもかましてぶち壊したくなるんだが……」

会場全体としては正式なダンスパーティーというよりは幾分ラフな雰囲気だが、横島はどうも自分の肌に合わないらしく落ち着かないらしい。


「最初はウチや」

根本的にお笑い方面に持ち込む方が気楽な様子の横島に苦笑いを浮かべる少女達だが、実は誰から横島と踊るか事前に少女達で話し合い決めていたりする。

尤も順番を決める際に紆余曲折あり最終的にはじゃんけんで決めたが、一番最初の木乃香だけはじゃんけん抜きにして決めていた。

それは麻帆良を訪れた横島に最初に声をかけたのが木乃香であり、全ての始まりだったからに他ならない。

相変わらず気後れ気味な横島を木乃香は自分がリードする形でダンスの輪の中に入っていくが、そんな二人を多くの関係者が密かに見つめていた。



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