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平和な日常~冬~3

食事を終えた横島達がダンスパーティーが行われる大ホームに向かうと、すでに麻帆良音大の吹奏楽部によって心地好い音楽が演奏されていた。

会場に居る年齢は相変わらず老若男女様々だが、全体的な年齢層は昼間のパーティーより下がっているようだ。

特に支援企業の年配の関係者などはかなり減っていて明らかに少ないが、普通に考えてダンスの出来ない人が帰ったのだろう。

尤も雪広や那波のような支援企業の重鎮は残っているので、それなりに大人も居ることは確かだが。


「凄いですね!」

この時間になると木乃香と新堂のスイーツは完全に品切れとなり終了しており、茶道部として一日頑張っていたさよも横島達と合流する。

クラスメートと同じく貸衣裳ではあるが着物からドレスに着替えたさよは、まるで映画で見る社交界ような会場に驚きの声を上げた。

会場には他にもあやか・まき絵達や超一味に楓と鳴滝姉妹など2-Aの少女達の大半も来ている。

まあほとんどの少女達は物珍しさから見に来ただけのようだったが。


「あやかは大変そうね」

そんな中で特に目立っていたのは、やはり雪広姉妹のようだ。

姉のさやかと妹のあやかの二人は、多くの若い男女に囲まれている。

思わず千鶴が大変そうだとこぼすのも無理はない。


「友達が四割に逆玉狙いが三割に関係者が三割か?」

「それは流石に言い過ぎだと思うわ」

雪広姉妹の周りの人々の顔ぶれから横島はその関係をなんとなく推測してみるが、逆玉狙いが三割は流石に言い過ぎだと千鶴に言われてしまう。

ただ容姿端麗で資産家の姉妹なだけに狙ってる男性が多いのは横島でなくともわかるが。


「那波さんと木乃香も十分注目を集めてますが、流石にすぐには近寄って来ませんね」

一方会場の人々の注目を集めているのは千鶴と木乃香も同じだった。

理由は考えるまでもないことだが、二人の場合は周りに友達が多いことと先程目立った横島の影響ですぐに近寄って来る者は居ない。

まあ本音ではお近づきになりたい人は多いのだろうが、横島と女の子の集団に居る千鶴や木乃香に声をかけるのはそれなりに勇気がいる。

特に先程暴言を吐いた斉木のこともあり余計に声をかけにくい。

誰も口には出さないがそんな人達からすると、馬鹿な行動をした斉木に苛立ちを感じる者も少なくなかった。


「俺は虫よけか?」

「半分は自業自得だと思うです」

言葉にこそ出さないが千鶴と木乃香の二人は先程から横島の両隣から動かず、明らかにお近づきになりたい人々が近寄って来ないようにと横島を虫よけ代わりにしている。

尤も夕映からすると半分は横島の自業自得らしいが。


「マスターと噂されるのって、今更なのよね」

「ウチもさっきまで大変やったんよ。 下心ありそうな男の人が何人か来て……」

そして肝心の二人だが、横島の虫よけという言葉を否定することなく笑っていた。

千鶴も木乃香も横島と噂されることは今更だし、特に木乃香は先程までは結構声をかけられたらしい。

実際には新堂が上手く助けていたらしいが、木乃香としては今までの人生で経験したことがない出来事なだけに流石に少し嫌気がさしたようである。

ただ困った時には人に助けて貰えとは、ある意味で横島の基本理念であり二人はそんな横島の価値観に染まったとも言えるが。



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