異邦の占い師

「中学通いながら新聞配達してるのかー 頑張ってるな」

世間話ついでに明日菜は両親が居ない事や新聞配達をしながら学校に通っている事を話すが、そんな環境を明るく語る明日菜の笑顔が横島には印象的だった


「木乃香のおじいちゃんが麻帆良学園の学園長をしてて、小さい頃から世話になってるんです。 学費くらいはちょっとずつでも返したいって思って……」

決して恵まれた過去とは言えない事を明るく笑って語る明日菜の笑顔に、横島はこの麻帆良という街がいかに平和で幸せに満ちているかシミジミと実感してしまう



その後明日菜と別れた横島はそのまま麻帆良の街を散歩していくが、ある場所で立ち止まっていた


「図書館島ねぇ……」

麻帆良湖の中にある島には図書館だけがあり、その規模は世界一だと言うから驚きである


(随分深いな。 ここも魔法協会のシマなワケね)

図書館島の地下に何やら得体の知れない空間があることに気付いてる横島は透視してみるが、あまりの深さに流石に驚いてしまう

横島としては地下は入らなくても一般に解放してる図書館を見学しようかと思ったのだが、こんな朝早くからやってるはずがない

結局また適当に湖の付近を散歩していくが、観光遊覧船や夏には海水浴場になるだろう砂浜など様々な物があった


「キャンプ場まであるのかよ…… 学園都市にキャンプ場は必要か?」

海水浴場を過ぎるとキャンプ場があり、3月だと言うのにキャンプしているテントが複数見える

横島は改めて麻帆良の規模に驚きを感じてしまう



その後その日の朝はそのままのんびりと散歩をして、近くで見つけたパン屋で焼きたてパンを朝食にして時間を過ごしていた

通学時間の学生達の混雑ぶりに驚くなどあったが、この街の人は特に驚いた様子もなく普通なようである


(街を包む結界がくせ者だな。 魔法なんかを認識しにくいように微妙な効果があるみたいだし……)

歩道の端に立ち学生達を見ていた横島は、麻帆良の特異性をふと考えていた

麻帆良を包む結界は複数の効果があるようだが、その中で横島が気になったのは魔法などの摩訶不思議な事を気にしにくくなる効果である

それは僅かな効果であり人間にあまり影響がない程度に押さえられているが、魔法の秘匿には必要なのだろうと思っていた


(悪い人間じゃないんだろうが、自分から関わりたくはないわな)

数日麻帆良に居た横島だが、魔法協会の印象は意外と悪くはなかった

基本的に組織の運営や考え方などは横島にとってはどうでもよく、街の人間が幸せそうな分だけ好印象だったのだ

土偶羅の報告には一部気になるところはあったが、それでも並の権力者よりはマシで関わりさえしなければ害のない組織でいい街だと結論づけていた


(木を隠すなら森の中とはよく言ったもんだな)

数日麻帆良を見物した横島は、しばらく麻帆良に滞在しようと決める

偽の戸籍や過去を用意した横島だが、それでもやはり異世界から来た事に変わりはない

その存在を隠して静かに生きるには、この麻帆良という街は適してると考えていたのだった

学園都市という性質上様々な人間が居るし、裏の魔法使い以外にも才能や目立つ一般人が多い事も決め手の一つなようだ
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