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プロローグ

「綺麗な夕日だな……」

そこはかつて東京と呼ばれた都市だった

妙なコスプレのような服を着た青年が、ガレキと化した赤い鉄塔の上に座り一人夕日を見ている

辺りは風の音すらしないほど静かで全くの無音だった

その光景は異様としか言いようがないほどに……


「横島、限界だ。 この次元は消滅する。 あの二人との停戦協議には成功した。 わしらもここを離れよう」

青年の背後に現れたのは土偶の姿をした者である

その表情には悲しみと虚しさで溢れており力ない姿だった



「みんなの魂の確保は?」

「全て終わっている。 この世界の輪廻転生から切り離し、亜空間次元に封印した。 お前が気に入った世界の輪廻転生に組み込む事も合意済みだ」

「虚しいよな…… この光景を見てるとアシュタロスの気持ちもよくわかるよ」

淡々と語る青年と土偶の二人は、終わり行く世界を看取るかのように静かに夕日を見つめていた

その表情に喜びなどない


「最後まで付き合わせちまって悪かったな」

「何を今更。 わしはアシュ様の命令に従ったに過ぎんし、これからもアシュ様の命令を遂行するだけだ」

「運命って皮肉なもんだよな」

言葉少なく会話する二人の言葉の意味を理解する者は、最早この世界にはいない



「最後だな……」

青年は立ち上がるとかつての仲間から受け継いだネクロマンサーの笛を吹き始める

三界で唯一彼にだけ使えると言われた【力】を解放した彼は、その次元の全てに笛の音色が届くように祈りを捧げて笛を吹く

その透き通るような音色は、無音の世界の果てまで響いていった

救えなかった無数の魂に最後の救いを与えるべく鎮魂の笛の音が流れていく



「じゃ、行くか」

笛の音色が途絶えた時二人は姿を消して、無音だった世界は全てが消滅して混沌に還ってしまう



それはかつて英雄とも人類の裏切り者とも言われた青年が生まれた世界の終焉だった


青年の名前は横島忠夫

そしてもう一人の土偶は土偶羅魔具羅

世界を看取った二人は、新たな世界を求めて旅立っていく


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