日記

『愛と髑髏と』 皆川博子著書

2026/06/11 10:11
レヴュー
 大好きな皆川さんの、特に好きな短編集の一つ。
 (愛と髑髏と、トマト・ゲームが好きです)
 この中でも特に好きなのは「風」「人それぞれに噴火獣」「丘の上の宴会」です。それぞれ感想を書きます。


 「風」

 庭は、寝返りをうって、背をむけた。

 この冒頭一行の擬人法でくらりとしてしまう。
 たったの5ページしかない短編だが、その5ページの完成度が凄まじい。皆川さんによって綴られる美しい日本語が織りなす芸術作品。


 「人それぞれに噴火獣」
 皆川さんが書くと、たとえ幼女でも"おんな"になる。純粋だからこその残酷さ。憧れの大人の男の人(吉岡さん)と秘密を共有することで、一緒に犯行に及んだと擬似的に思ってしまう。そして、秘密を共有して、思わずにやりと笑ってしまうところ。嗚呼〜皆川さんだわ〜♡

 父親の指が、吉岡の頬を撫でている。

 ↑この光景を見ても"仲が良いお友だち"と思ってしまうあたりは純粋な幼女なんだなと思ってしまいます。
 最後の瞬間さえもわたしを見て欲しいという盲目的な強い感情。でも、吉岡にとっては、子供を思いやる心があれど、どこまでも他人の子、としか見ていないんですよ……。

 ”少女は誰でも無垢という 美しい悪を持ってる”

 ALICE同罪イノセントという、わたしの好きな曲があるのですが、このお話を読むと、この歌詞の最期のこのフレーズがどうしても思い出してしまいます。


「丘の上の宴会」
 主人公の内面の思考があまりにも理解できてしまって、感情移入をしてしまいます。どうして皆川さんは、こんな、ASD的な内面が書けるのでしょうか……。たくさんの御本を読むと、多くの思考を理解できるのでしょうか。いくつか抜粋します。

 相手がこうと予想するせりふを喋り、予想する筋書をすすめるのに協力した。(中略)パターンをまちがえてはいけない。
 どのチームが勝とうとまるで興味がないということを悟られぬよう、わたしは声をあげた。(中略)わたしが自然にふるまえば、無感動があまりにも露わになる。
 わたしは他人と同じ色を保護色にしていればよかった。

 ……など。
 そして鈴蘭に毒があることも、このお話で知りました。わたしのアイコンの絵に鈴蘭があるのはこのお話がきっかけです。


 もう、服部さんのあとがきが、言いたいことをすべて言語化して言ってくれていますね。最上の媚薬であり、快いトリップであり、悪夢が詰まった短編集。何度も読み返して、読み返すほど深く、気づきのある一冊です。

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