+凍 解 氷 結+
康二→めめ→康二視点
「康二さ、なんか最近付き合い悪くない?」
「先輩たちの誘いが多くて中々断れんのよ……
ごめんなぁ、ふっかさん、しょっぴー」
「はぁ、今や康二は大人気だもんなー。まぁ、仕方ないよなー」
事務所の控え室でなにかを探るように横目でこちらを見るふっかさんと申し訳なさそうに謝る俺に露骨に不貞腐れるしょっぴー。
「なんか俺たちに隠してない?」
「いや、別に?」
「ふぅん。俺、康二と出掛けんのめちゃくちゃ楽しみにしてんだけど」
ふっかさんにはマジマジと見つめられ、しょっぴーは俺の背後から抱き付き、俺に逃げ場はない。
「あぁ、近いうちちゃんと予定を空けるから待っててなぁ」
普段の俺ならばこの状況にしどろもどろになってすぐに嘘がバレるんやけど、今回は上手く乗り切れた。
……これも恋人となった目黒の演技指導の賜物や。
「目黒、お待たせ」
「……ふっかさんとしょっぴーの誘いは良かったの?」
事務所から少し離れた人っこ一人いない薄暗い路地裏の電灯の下で目黒は俺を待ってくれていた。
俺が静かに声を掛けて目黒に近づけば、目黒は柔らかく微笑みながら俺の頭を撫でてくれる。
「……俺は目黒と一緒に居たいから」
「あんま可愛いことばっか言うと、康二を俺たちの家に閉じ込めて外に出れないようにしちゃうよ」
目黒の肩に軽くおでこを当てて甘えれば、目黒は俺の頭を撫でていた手ともう片方の手を俺の腰に回し、俺をキツく抱きしめた。
「そしたらグループ活動で一緒に過ごす時間が減ってまうやん」
「知らなかったんだよ。好きになると康二が他のメンバーとただ話してるだけで、こんなにも感情がかき乱されるなんてさ」
……これが恋なんだね、と感慨深く呟く目黒。
「俺たち恋愛初心者やからな」
いい歳した男二人の人生で初めての恋は色々とありながらもしっかりと実を結んでいる。
「あー、康二のことが大好きなメンバーに康二は俺だけの人だって言いたい」
「んっ、目黒くすぐったいって!言うた瞬間お前みんなに殺されるで」
俺の首筋に頬を擦り付ける目黒に俺は声を上げて笑うが、俺はグループの中では弟キャラとしてラウールの次にメンバーから愛でられており、特にふっんさんやしょっぴーは加入時から俺のことを気にかけてくれ、休みが合えば三人でよく出掛けているくらい仲が良く、今まで目の敵にしていた目黒と俺が同棲しているどころか、付き合っているなんて知ったら、目黒はただでは済まないやろな。
さらにしょっぴーは俺に対する独占欲が強く、実際は依存症のせいやけど、女遊びの激しかった目黒のことも俺の次によく思っていない為、俺たちの関係がバレたら絶対に揉めること間違いなしや。
「はぁ……、なんでこんなに近くにいたのに、康二の良さに気付かなかったんだろ」
「お互い様や。今は目黒が俺の一番なんやし、これからたくさん二人の思い出をつくっていこうな」
深いため息を吐く目黒の背中を撫でてやり、密着して感じる目黒の体温と体から香るお揃いのボディソープの匂いに酷く安心する。
「うん、そうだね。あ、康二は昨日買い物に行ってくれたし、今日は俺がご飯を作るよ」
「俺も手伝うで」
「じゃあ、お言葉に甘えてお願いしようかな」
名残惜しくも目黒は俺から離れ、ゆっくりと歩き出す。
……普通の恋人同士なら手を繋いで帰れるんやけど、俺たちは男同士でアイドル。
家を一歩出た先で手を繋いだり、キスをすることは出来ない。
——でも、それでいい。
俺らのこの”秘密”の関係は俺と目黒だけが知ってればええ。
「めーぐろ!」
「康二は本当に甘えん坊だね」
食事が終わり、二人で片付けをし、別々にお風呂に入って寝支度を済ませた後。
リビングのソファーの下で俺が台本を読んでいると康二は俺の膝の上に頭を乗せて腰に腕を回し、盛大に甘えてくる。
こないだの花火大会以降、俺らの距離がグッと縮まり、もう何年も同じグループで活動をしているのに今まで知らなかった誰よりも優しくて、頼もしくて、可愛らしい『向井康二』に俺は強く惹かれていた。
「甘えん坊な俺は好き?嫌い?普通?」
「……ううん、大好き」
澄んだ瞳でジッとこちらを見上げ、首を傾げる姿に悩殺され、
「目黒は素直やね」
「……うるさいよ」
康二の顔の近くで軽く勃ち上がってしまったモノに康二は悪戯が成功した子どものように笑う。
「ん……」
「康二の唇って甘いんだね」
ベッドまで運んで?と甘える康二をお姫様抱っこで俺の寝床に連れ去り、月明かりに照らされた薄暗い部屋で、康二は期待を込めた目でこちらを見る。
そんな康二にまずは重ねるだけの口づけを一つ。
「目黒のキスでもっと甘くして」
「俺以外なにも考えられないくらい、ゆっくり溶かしていってあげる」
互いのおでこをくっつけ、鼻先を擦り付ければ康二はくすぐったそうに身を捩り、康二のそんな仕草がいちいち可愛くて心がぎゅ〜っと締め付けられる。
これまで女を抱いていた時は不安から逃れる為に、とにかく頭が真っ白になるような快感を求めて闇雲にsexをしていたが、ベッドの上でこんなにもゆったりとした時間を過ごせるなんて初めてだ。
「目黒……好き、んぅ……」
「……俺も康二が好きだよ」
互いに愛を囁き合い、俺の首に腕を回しそっと瞳を閉じる康二に俺は吸い寄せられるようにもう一度唇を重ね、康二のしっとりとした上皮を二、三度啄み、舌の先で輪郭を撫でた後、舌の表面で全体を舐め上げれば、康二がくぐもった声をあげる。
「はぁ、っ……ふ…」
「…………」
開いた隙間から康二の口内に舌を差し込めば、そこには一度知ったら二度と味わうことを辞められない、さらに甘美な世界が広がっていた。
「め、ぐろ……はぅ、ん」
「(頭が痺れそうだ……)」
待っていたというように俺の舌を受け入れた康二の舌先で俺の味蕾は歯磨き粉の味を感じとるが、それだけじゃなく康二のねっとりとした舌や滴る唾液の味に全てが狂いそうだった。
「はぁ、っ、目黒……」
「んっ……なに?」
それは康二も同じなのか、開いた目に涙を溜め吐息を漏らす康二に俺の腰がまたさらに重くなる。
「キスって気持ちええんやね」
「……康二とするまでは気持ちいいとは思わなかったよ」
これまでしたキスは酷く無機質なものだった。
sexするならキスもする。
そうすれば女たちの気持ちが高まり、俺をさらなる絶頂へ導いてくれると知っていたからだ。
今まではキスという行為になんの感情はなく、ただの過程にすぎなかった。
なのに……
「……好きな相手とすることはどんなことでも特別やね」
「うん……そうだね。俺、康二ともっと深い関係になりたい」
見上げる眼差しは温かく、康二は俺の全てを包んでくれる。そんな康二の全てが欲しいのに
「…………ごめん」
「謝らんでええよ。俺と付き合うてるからって、まだ依存症が治ったわけじゃないんやろ?」
俺の上で項垂れる目黒の頭をポンポンと叩けば、目黒は俺の肩口に顔を埋める。
「……医師からはだいぶ良くなってるって言われてるんだけど」
「ゆっくりでええやん。もしかしたら男同士でするsexに緊張とかもあるんやない?」
「…………そう、なのかな」
俺が目黒に好きやと告げて、目黒も俺と同じ想いを抱いていることを自覚したあの花火大会の夜から、本日三回目の閨事。
しかし、そのどれもが挿入を直前に目黒のモノが途端に小さくなってしまい、その先に進むことが出来なかった。
それにより、今目黒は酷く落ち込み自信を無くしてしまっている。
「もしかして、俺に痛いをさせたくないとか、傷付けたくないって思っとるんやない?」
「もちろん思ってるよ。康二のことすごく大切だから」
ふと、上げられた目黒の顔は至極真面目で、俺への愛情が深く伝わってくる。
「ふふっ、目黒。
俺はsexが出来なくても目黒のその真っ直ぐな気持ちだけで、めっちゃくちゃ幸せなんやで」
「……っ、」
心を込めて、今ある本心を目黒にぶつければ俺の言葉に目黒の瞳が潤む。
「俺は今まで常に誰かに壁をつくって心から信頼して本音を打ち明けられる相手がおらんかった。
でも、目黒には俺の弱いところも過去も全てを話せる。だから、お願いや。
目黒も目黒の全部を俺に見してや。俺はもっと目黒のことを誰よりも知りたいねん」
「こ、うじ……」
泣きじゃくる小さな子どもを宥めるように目黒を抱きしめ、背中を叩いてやれば、冷房の効いた部屋で生まれたままの姿で触れ合う体温が逆に心地よく、俺はこれからの人生を目黒と互いの痛みも苦しみもこうして分かち合って生きていけたらええなと思う。
こんなにも俺の感情を揺さぶり、俺が守りたい、幸せにしたいと思えるのは目の前にいる目黒蓮ただ一人だけ。
「目黒、愛してる。どんなことがあっても、この先も俺とずっと一緒におって」
「うっ、あ……約束するっ、だから、康二も俺のことを見捨てないでねっ」
俺らが心に秘めていた”孤独”は互いの存在により、大きく砕かれ、それはやがて小さな粒子となりどこかに消え去っていく。
「当たり前やん。さ、明日からまた仕事で会えなくなるし今日は久しぶりに目黒の腕の中で寝かせてな」
「うん。……お休み康二、愛してる」
「俺も愛してんで」
目黒に腕枕をしてもらい、額に贈られたキスに目黒の頬にキスをすることで返せば目黒が幸せそうに微笑む。
一緒に暮らし始めた当初は目黒は顔色だけやなくて、寝付きや目覚めも悪かったんやけど、俺にsex依存性を打ち明けてからは目黒の顔色や体調はだいぶ良くなってきて、それは周囲にもわかるほどで、今まで目黒と体の関係を持っていた女ちたからは目黒に特定の相手が出来たのではないかと騒がれているんやけど、まさかそれが同じグループのメンバーで男だとは誰一人として想像出来ひんやろなぁ……。
俺は幸せそうな目黒の寝顔を見ながら、これから目黒と二人で穏やかに暮らせたらええな。
なーんて思ってたんやけど……。
「おはよう、しょっぴー今日もええ天気やね」
「昨日、目黒と路地裏で抱き合ってるのを見たんだけど、どういうこと?」
「…………店に行く途中たまたま目黒と落ち合って、よろけた俺を目黒が助けてくれただけや」
俺がドアを開けて挨拶をした瞬間、先に来ていたしょっぴーが鋭い視線でこちらに質問を投げかけ、思いもよらぬ内容に俺の反応が一瞬遅れた。
「いやぁ、そんな風には見えなかったけど。
まさか目黒と付き合ってるとかないよね?」
「……俺がもし、Yesと答えたらどうする?」
今日からしょっぴーと三日間、タイでの仕事があり、打ち合わせの為に朝早くから事務所で待ち合わせをしていたんやけど、なんやこれは良くない旅が始まる気がするな。
朝、しばらくの別れに玄関先で何度もキスを交わした恋人の切なそうな表情を思い出し、俺はしょっぴーからのAnswerに正解を模索する。
続く
「康二さ、なんか最近付き合い悪くない?」
「先輩たちの誘いが多くて中々断れんのよ……
ごめんなぁ、ふっかさん、しょっぴー」
「はぁ、今や康二は大人気だもんなー。まぁ、仕方ないよなー」
事務所の控え室でなにかを探るように横目でこちらを見るふっかさんと申し訳なさそうに謝る俺に露骨に不貞腐れるしょっぴー。
「なんか俺たちに隠してない?」
「いや、別に?」
「ふぅん。俺、康二と出掛けんのめちゃくちゃ楽しみにしてんだけど」
ふっかさんにはマジマジと見つめられ、しょっぴーは俺の背後から抱き付き、俺に逃げ場はない。
「あぁ、近いうちちゃんと予定を空けるから待っててなぁ」
普段の俺ならばこの状況にしどろもどろになってすぐに嘘がバレるんやけど、今回は上手く乗り切れた。
……これも恋人となった目黒の演技指導の賜物や。
「目黒、お待たせ」
「……ふっかさんとしょっぴーの誘いは良かったの?」
事務所から少し離れた人っこ一人いない薄暗い路地裏の電灯の下で目黒は俺を待ってくれていた。
俺が静かに声を掛けて目黒に近づけば、目黒は柔らかく微笑みながら俺の頭を撫でてくれる。
「……俺は目黒と一緒に居たいから」
「あんま可愛いことばっか言うと、康二を俺たちの家に閉じ込めて外に出れないようにしちゃうよ」
目黒の肩に軽くおでこを当てて甘えれば、目黒は俺の頭を撫でていた手ともう片方の手を俺の腰に回し、俺をキツく抱きしめた。
「そしたらグループ活動で一緒に過ごす時間が減ってまうやん」
「知らなかったんだよ。好きになると康二が他のメンバーとただ話してるだけで、こんなにも感情がかき乱されるなんてさ」
……これが恋なんだね、と感慨深く呟く目黒。
「俺たち恋愛初心者やからな」
いい歳した男二人の人生で初めての恋は色々とありながらもしっかりと実を結んでいる。
「あー、康二のことが大好きなメンバーに康二は俺だけの人だって言いたい」
「んっ、目黒くすぐったいって!言うた瞬間お前みんなに殺されるで」
俺の首筋に頬を擦り付ける目黒に俺は声を上げて笑うが、俺はグループの中では弟キャラとしてラウールの次にメンバーから愛でられており、特にふっんさんやしょっぴーは加入時から俺のことを気にかけてくれ、休みが合えば三人でよく出掛けているくらい仲が良く、今まで目の敵にしていた目黒と俺が同棲しているどころか、付き合っているなんて知ったら、目黒はただでは済まないやろな。
さらにしょっぴーは俺に対する独占欲が強く、実際は依存症のせいやけど、女遊びの激しかった目黒のことも俺の次によく思っていない為、俺たちの関係がバレたら絶対に揉めること間違いなしや。
「はぁ……、なんでこんなに近くにいたのに、康二の良さに気付かなかったんだろ」
「お互い様や。今は目黒が俺の一番なんやし、これからたくさん二人の思い出をつくっていこうな」
深いため息を吐く目黒の背中を撫でてやり、密着して感じる目黒の体温と体から香るお揃いのボディソープの匂いに酷く安心する。
「うん、そうだね。あ、康二は昨日買い物に行ってくれたし、今日は俺がご飯を作るよ」
「俺も手伝うで」
「じゃあ、お言葉に甘えてお願いしようかな」
名残惜しくも目黒は俺から離れ、ゆっくりと歩き出す。
……普通の恋人同士なら手を繋いで帰れるんやけど、俺たちは男同士でアイドル。
家を一歩出た先で手を繋いだり、キスをすることは出来ない。
——でも、それでいい。
俺らのこの”秘密”の関係は俺と目黒だけが知ってればええ。
「めーぐろ!」
「康二は本当に甘えん坊だね」
食事が終わり、二人で片付けをし、別々にお風呂に入って寝支度を済ませた後。
リビングのソファーの下で俺が台本を読んでいると康二は俺の膝の上に頭を乗せて腰に腕を回し、盛大に甘えてくる。
こないだの花火大会以降、俺らの距離がグッと縮まり、もう何年も同じグループで活動をしているのに今まで知らなかった誰よりも優しくて、頼もしくて、可愛らしい『向井康二』に俺は強く惹かれていた。
「甘えん坊な俺は好き?嫌い?普通?」
「……ううん、大好き」
澄んだ瞳でジッとこちらを見上げ、首を傾げる姿に悩殺され、
「目黒は素直やね」
「……うるさいよ」
康二の顔の近くで軽く勃ち上がってしまったモノに康二は悪戯が成功した子どものように笑う。
「ん……」
「康二の唇って甘いんだね」
ベッドまで運んで?と甘える康二をお姫様抱っこで俺の寝床に連れ去り、月明かりに照らされた薄暗い部屋で、康二は期待を込めた目でこちらを見る。
そんな康二にまずは重ねるだけの口づけを一つ。
「目黒のキスでもっと甘くして」
「俺以外なにも考えられないくらい、ゆっくり溶かしていってあげる」
互いのおでこをくっつけ、鼻先を擦り付ければ康二はくすぐったそうに身を捩り、康二のそんな仕草がいちいち可愛くて心がぎゅ〜っと締め付けられる。
これまで女を抱いていた時は不安から逃れる為に、とにかく頭が真っ白になるような快感を求めて闇雲にsexをしていたが、ベッドの上でこんなにもゆったりとした時間を過ごせるなんて初めてだ。
「目黒……好き、んぅ……」
「……俺も康二が好きだよ」
互いに愛を囁き合い、俺の首に腕を回しそっと瞳を閉じる康二に俺は吸い寄せられるようにもう一度唇を重ね、康二のしっとりとした上皮を二、三度啄み、舌の先で輪郭を撫でた後、舌の表面で全体を舐め上げれば、康二がくぐもった声をあげる。
「はぁ、っ……ふ…」
「…………」
開いた隙間から康二の口内に舌を差し込めば、そこには一度知ったら二度と味わうことを辞められない、さらに甘美な世界が広がっていた。
「め、ぐろ……はぅ、ん」
「(頭が痺れそうだ……)」
待っていたというように俺の舌を受け入れた康二の舌先で俺の味蕾は歯磨き粉の味を感じとるが、それだけじゃなく康二のねっとりとした舌や滴る唾液の味に全てが狂いそうだった。
「はぁ、っ、目黒……」
「んっ……なに?」
それは康二も同じなのか、開いた目に涙を溜め吐息を漏らす康二に俺の腰がまたさらに重くなる。
「キスって気持ちええんやね」
「……康二とするまでは気持ちいいとは思わなかったよ」
これまでしたキスは酷く無機質なものだった。
sexするならキスもする。
そうすれば女たちの気持ちが高まり、俺をさらなる絶頂へ導いてくれると知っていたからだ。
今まではキスという行為になんの感情はなく、ただの過程にすぎなかった。
なのに……
「……好きな相手とすることはどんなことでも特別やね」
「うん……そうだね。俺、康二ともっと深い関係になりたい」
見上げる眼差しは温かく、康二は俺の全てを包んでくれる。そんな康二の全てが欲しいのに
「…………ごめん」
「謝らんでええよ。俺と付き合うてるからって、まだ依存症が治ったわけじゃないんやろ?」
俺の上で項垂れる目黒の頭をポンポンと叩けば、目黒は俺の肩口に顔を埋める。
「……医師からはだいぶ良くなってるって言われてるんだけど」
「ゆっくりでええやん。もしかしたら男同士でするsexに緊張とかもあるんやない?」
「…………そう、なのかな」
俺が目黒に好きやと告げて、目黒も俺と同じ想いを抱いていることを自覚したあの花火大会の夜から、本日三回目の閨事。
しかし、そのどれもが挿入を直前に目黒のモノが途端に小さくなってしまい、その先に進むことが出来なかった。
それにより、今目黒は酷く落ち込み自信を無くしてしまっている。
「もしかして、俺に痛いをさせたくないとか、傷付けたくないって思っとるんやない?」
「もちろん思ってるよ。康二のことすごく大切だから」
ふと、上げられた目黒の顔は至極真面目で、俺への愛情が深く伝わってくる。
「ふふっ、目黒。
俺はsexが出来なくても目黒のその真っ直ぐな気持ちだけで、めっちゃくちゃ幸せなんやで」
「……っ、」
心を込めて、今ある本心を目黒にぶつければ俺の言葉に目黒の瞳が潤む。
「俺は今まで常に誰かに壁をつくって心から信頼して本音を打ち明けられる相手がおらんかった。
でも、目黒には俺の弱いところも過去も全てを話せる。だから、お願いや。
目黒も目黒の全部を俺に見してや。俺はもっと目黒のことを誰よりも知りたいねん」
「こ、うじ……」
泣きじゃくる小さな子どもを宥めるように目黒を抱きしめ、背中を叩いてやれば、冷房の効いた部屋で生まれたままの姿で触れ合う体温が逆に心地よく、俺はこれからの人生を目黒と互いの痛みも苦しみもこうして分かち合って生きていけたらええなと思う。
こんなにも俺の感情を揺さぶり、俺が守りたい、幸せにしたいと思えるのは目の前にいる目黒蓮ただ一人だけ。
「目黒、愛してる。どんなことがあっても、この先も俺とずっと一緒におって」
「うっ、あ……約束するっ、だから、康二も俺のことを見捨てないでねっ」
俺らが心に秘めていた”孤独”は互いの存在により、大きく砕かれ、それはやがて小さな粒子となりどこかに消え去っていく。
「当たり前やん。さ、明日からまた仕事で会えなくなるし今日は久しぶりに目黒の腕の中で寝かせてな」
「うん。……お休み康二、愛してる」
「俺も愛してんで」
目黒に腕枕をしてもらい、額に贈られたキスに目黒の頬にキスをすることで返せば目黒が幸せそうに微笑む。
一緒に暮らし始めた当初は目黒は顔色だけやなくて、寝付きや目覚めも悪かったんやけど、俺にsex依存性を打ち明けてからは目黒の顔色や体調はだいぶ良くなってきて、それは周囲にもわかるほどで、今まで目黒と体の関係を持っていた女ちたからは目黒に特定の相手が出来たのではないかと騒がれているんやけど、まさかそれが同じグループのメンバーで男だとは誰一人として想像出来ひんやろなぁ……。
俺は幸せそうな目黒の寝顔を見ながら、これから目黒と二人で穏やかに暮らせたらええな。
なーんて思ってたんやけど……。
「おはよう、しょっぴー今日もええ天気やね」
「昨日、目黒と路地裏で抱き合ってるのを見たんだけど、どういうこと?」
「…………店に行く途中たまたま目黒と落ち合って、よろけた俺を目黒が助けてくれただけや」
俺がドアを開けて挨拶をした瞬間、先に来ていたしょっぴーが鋭い視線でこちらに質問を投げかけ、思いもよらぬ内容に俺の反応が一瞬遅れた。
「いやぁ、そんな風には見えなかったけど。
まさか目黒と付き合ってるとかないよね?」
「……俺がもし、Yesと答えたらどうする?」
今日からしょっぴーと三日間、タイでの仕事があり、打ち合わせの為に朝早くから事務所で待ち合わせをしていたんやけど、なんやこれは良くない旅が始まる気がするな。
朝、しばらくの別れに玄関先で何度もキスを交わした恋人の切なそうな表情を思い出し、俺はしょっぴーからのAnswerに正解を模索する。
続く