プロローグ


 宇宙には、沢山の星がある。見えている範囲だけでも相当数あるが、見る事のできない、遠い遠い宇宙にも、数えきれないほどの星々がある。そして、その中には、地球のように生物が住んでいる星もある。


  その1つが、『緑陰星りょくいんせい』だ。


  緑陰星は『地球から最も遠くて近い星』と言われている。その異名の通り、緑陰星は地球から何億光年も離れ、互いに肉眼では見る事ができないほどであるにもかかわらず、文化や習慣は酷似している。その理由は、緑陰星の元々の文明が地球と非常に似ているという事もあるが、緑陰人の有志達が地球を訪れ、行った先の文化を学んで持ち帰って来ているというのも影響している。そして、緑陰星独自の文化と地球の文化が混ざり合い、現在の文明ができたのだ。

 ――しかしそれは、ここ数年での出来事。実の事を言うと、緑陰星の環境は非常に苛酷で、とても人類が住める星ではないのだ。人類が誕生した初期の頃は、皆、地下で暮らしていた。地下に都市を造り、独自の文化を築き上げていった。だが、ある時、その地下生活に限界を感じるようになった。とはいえ、地下から出て苛酷な地上で暮らすのは非常に危険だ。

 そこで、高位の人々や有識者達は、緑陰星を出て新たな星への移住を考えるようになった。星民こくみん達が、より安全で、より発展できる星へと移住できれば、更なる文明の発達や、子孫繁栄、種族存続の可能性が見込めると期待した。

 技術者達はその命を受け、とても少ない情報と技術で宇宙ロケットを完成させた。そして、ほぼ素人同然の宇宙飛行士達が数名、それに乗船し、宇宙へと旅立った。

 だが、高位の人々の期待も虚しく、移住できそうな星は見つからなかった。殆どが、緑陰星のような苛酷な環境であったり、安全な星であっても既に宇宙人が住みついていたり、ガス惑星である為に、地面すら無い星まであった。
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