フェイラン
一面に広がるこの雪原の夜明けは、あなたの目にどう映っているのだろう。私が好きなもの、あなたも好きだったらいいのに。
フェイラン モノローグ1
「_フェイラン様!」
剣の稽古中だった私は、剣を鞘に収め「どうした」と短く聞き返す。なにかあったのだろうか。
「他種族が、我らの庇護下に入りたいと申しております」
「…分かった、すぐ行く」
大陸の北に位置するここは、雪のせいで視界が悪く、積もった雪で元の地形が分からなくなる。そのため、なにも知らずに歩くことは死を意味し、大陸全土で見ても非常に危険な土地だ。
そしてここ、白の樹海は我ら白狼族の縄張りであり、我らが認めた者以外の侵入は許されていない。
__
「なんだ、兎族か」
小柄な白兎の獣人達が、私の前に連れて来られる。我らを恐れて、白の樹海から離れた場所で集落を構えていたはずだが…
「なにがあった」
聞くところ、人間が兎族の土地にまで傲慢にも生活圏を広げるため、侵略してきているのだと。
「言いたいことは分かった。だが、我らの下につくことの意味は、分かってるな?」
我らの強みは、数に他ならない。白の樹海に住む数多くの種族は白狼族に忠誠を誓い、共に支え合って生活をしている。そして、白狼族に逆らう事は白の樹海を敵に回すということ。それがここの掟なのだ。
「我らの目となり耳となれ、逆らう事は許さない。いいな?」
「もちろんでございます。白狼族の族長、獣騎士王フェイラン様」
…いつ聞いても大層な名前だ。軽く目を逸らし窓の外に目をやるが、思いもしない事を言われ、再び視線を戻す。
「…フェイラン様、人間がこの白の樹海にいませんか」
私の部下達が、気まずそうに目配せをしているのを、軽く睨みつける。さすが耳が良いらしい。
「気にするな、兎族。あれは私の客人だ。…害はない」
「人間が…白狼族の、客人…?」
兎族達が揃って首を傾げる姿は、中々かわいらしい。思わず、あなたにも見せたいと口元が緩む。
「ああ、いつか会うこともあるだろう」
__
あなたは、植物が好きらしい。花が好きなのか、と聞いたら好きだと言っていた。綺麗な花を見つけて持っていくと喜んでいた。
頭もよくて、私の知らない事をたくさん知っている。この間、本を読んでいる姿を見て、邪魔しないように、そばで読み終わるのを待っていると、頭を撫でられた。
_どうして、あなたは人間なんだろう。
旅をしているって言ってたけど、いつかは旅立つのだろうか。
「聞いてくれ、今日…兎族が来たんだ」
今度あなたを紹介したいと伝えると、微笑んでくれた。
ああ…その顔、好きだ。
揺れる尻尾を触りたいって言われたが、それは少し恥ずかしいから、断った。
「フェイラン…君に言いたい事があるんだ」
「…言いたいこと?」
首を傾げて、あなたを見つめる。すると、小さく吹き出すあなたを見て、つられて私も微笑んでしまう。
「なんだ、言ってみてくれ」
あなたの言葉なら、聞きたいんだ。
「この間、朝早くに君が連れて行ってくれた高台があっただろ?」
「…ああ」
私の好きな景色を、あなたに見せたかった。
「本当は、あの時…言うつもりだったのだけど」
「_フェイラン様」
部下から不意に声をかけられる。あなたは、不自然に咳き込んでいた。部下は少し気まずそうにしながら言葉を続ける。
「…すまない、出なくてはいけなくなった」
そう伝えると、あなたは少し拗ねてしまったので、私が頭を撫でてあげる。
「あの景色が気に入ったのなら、また連れて行ってやる」
そう私が言うと「約束」だと、あなたは言った。約束というその言葉に胸が暖かくなる。
私が好きなものを、あなたも好きになってくれたのだとしたら、私もあなたの好きなものを好きになりたい。あなたの事をもっと知りたい。
早く、あなたのもとに帰りたい。
_気が散る私に、部下が控えめに苦言を言う。
「フェイラン様、聞いていますか」
「…すまん。もう一度言ってくれ」
Fin…
フェイラン モノローグ1
「_フェイラン様!」
剣の稽古中だった私は、剣を鞘に収め「どうした」と短く聞き返す。なにかあったのだろうか。
「他種族が、我らの庇護下に入りたいと申しております」
「…分かった、すぐ行く」
大陸の北に位置するここは、雪のせいで視界が悪く、積もった雪で元の地形が分からなくなる。そのため、なにも知らずに歩くことは死を意味し、大陸全土で見ても非常に危険な土地だ。
そしてここ、白の樹海は我ら白狼族の縄張りであり、我らが認めた者以外の侵入は許されていない。
__
「なんだ、兎族か」
小柄な白兎の獣人達が、私の前に連れて来られる。我らを恐れて、白の樹海から離れた場所で集落を構えていたはずだが…
「なにがあった」
聞くところ、人間が兎族の土地にまで傲慢にも生活圏を広げるため、侵略してきているのだと。
「言いたいことは分かった。だが、我らの下につくことの意味は、分かってるな?」
我らの強みは、数に他ならない。白の樹海に住む数多くの種族は白狼族に忠誠を誓い、共に支え合って生活をしている。そして、白狼族に逆らう事は白の樹海を敵に回すということ。それがここの掟なのだ。
「我らの目となり耳となれ、逆らう事は許さない。いいな?」
「もちろんでございます。白狼族の族長、獣騎士王フェイラン様」
…いつ聞いても大層な名前だ。軽く目を逸らし窓の外に目をやるが、思いもしない事を言われ、再び視線を戻す。
「…フェイラン様、人間がこの白の樹海にいませんか」
私の部下達が、気まずそうに目配せをしているのを、軽く睨みつける。さすが耳が良いらしい。
「気にするな、兎族。あれは私の客人だ。…害はない」
「人間が…白狼族の、客人…?」
兎族達が揃って首を傾げる姿は、中々かわいらしい。思わず、あなたにも見せたいと口元が緩む。
「ああ、いつか会うこともあるだろう」
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あなたは、植物が好きらしい。花が好きなのか、と聞いたら好きだと言っていた。綺麗な花を見つけて持っていくと喜んでいた。
頭もよくて、私の知らない事をたくさん知っている。この間、本を読んでいる姿を見て、邪魔しないように、そばで読み終わるのを待っていると、頭を撫でられた。
_どうして、あなたは人間なんだろう。
旅をしているって言ってたけど、いつかは旅立つのだろうか。
「聞いてくれ、今日…兎族が来たんだ」
今度あなたを紹介したいと伝えると、微笑んでくれた。
ああ…その顔、好きだ。
揺れる尻尾を触りたいって言われたが、それは少し恥ずかしいから、断った。
「フェイラン…君に言いたい事があるんだ」
「…言いたいこと?」
首を傾げて、あなたを見つめる。すると、小さく吹き出すあなたを見て、つられて私も微笑んでしまう。
「なんだ、言ってみてくれ」
あなたの言葉なら、聞きたいんだ。
「この間、朝早くに君が連れて行ってくれた高台があっただろ?」
「…ああ」
私の好きな景色を、あなたに見せたかった。
「本当は、あの時…言うつもりだったのだけど」
「_フェイラン様」
部下から不意に声をかけられる。あなたは、不自然に咳き込んでいた。部下は少し気まずそうにしながら言葉を続ける。
「…すまない、出なくてはいけなくなった」
そう伝えると、あなたは少し拗ねてしまったので、私が頭を撫でてあげる。
「あの景色が気に入ったのなら、また連れて行ってやる」
そう私が言うと「約束」だと、あなたは言った。約束というその言葉に胸が暖かくなる。
私が好きなものを、あなたも好きになってくれたのだとしたら、私もあなたの好きなものを好きになりたい。あなたの事をもっと知りたい。
早く、あなたのもとに帰りたい。
_気が散る私に、部下が控えめに苦言を言う。
「フェイラン様、聞いていますか」
「…すまん。もう一度言ってくれ」
Fin…
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