古より愛をこめて
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「はあ……もう午前二時かぁ」
いつもは目を閉じればじきにまどろみがやって来るのに、今日はなかなか寝付けない。
ホットミルクや呼吸法、三点倒立その他いろいろ試してみたけれど、求めていた眠気は襲ってきてくれなかった。
どうしよう……。
あっ、そうだ。眠れない夜は羊トークンの数を数えると良いって城之内くんが言ってたっけ。
「羊トークンが1匹、羊トークンが2匹、羊トークンが3匹……」
青や黄やピンクの羊トークンが頭の中でふわふわと浮かんで、右から左へ走り抜けてゆく。
「……羊トークンが30匹、羊トークンが31匹……」
もこもこの羊さん。かわいい羊さん。
頭がだんだんぼーっとしてくる。
今何匹目だろう……50くらいかな。
もう口を開けるのも億劫 だ……。
羊トークンが51匹、羊トークンが52匹……羊トークンが……ごじゅ、さ……ひき……──
***
──羊トークンがいっぱい、羊トークンがもっといっぱい、羊トークンがもっとすごくいっぱい……。
「……様」
羊トークンがもっともっとすごくいっぱい……。
「ナナシ様」
羊トークンがもっともっとものすごーく……。
って、んん?
今誰かに呼ばれなかった?
「このような場所でお眠りになられていたのですか」
「っ!?」
やっぱり誰かいる!
びっくりして飛び起きると、目の前には羊トークン……じゃなくて、この人は……!
「……海馬くん!」
海馬くんと目が合って驚くと同時に安心もした。
朝目が覚めて知らない人が突然目の前にいたらこわいもんね。海馬くんで良かった。
けれどどういうわけか外に出ていたみたいで、起き抜けの目に差す日がとても眩しい。
「探しましたよ」
「え……ごめんね、自分の部屋で寝ていたはずなんだけどもしかして無意識に歩き回って迷子になってた……?見つけてくれてありがとう海馬くん」
うーん。まだ全然頭が回らないや。
それによく見たら海馬くんと違うような……海馬くん、じゃあない……?
私を見下ろしている男の人の肌は褐色で、どこか異国──胸のアンクが古代エジプトみたい──の神官のような衣装を着ている。
そして頭には青い冠。ヘビさんの飾りが付いてる。コブラかな。
「カイバくんとな?フ。何処の誰と見誤っておられるのか存じませぬが、私ほどの美貌を持った男は他におりますまいて」
「わ……すみません!友達と見間違えてしまって……」
「ふむ。相当寝惚けておられるようだ」
そっか私寝惚けてるのかぁ。
……うん。ちょっと頑張って考えてみたけどやっぱり全然状況がわからない。
私が眠ってしまっていたのはどうやらこのヤシの木の下で、同じように周りには近場であまり見かけないような植物が生えている。
辺りはレンガや石造りの大きな建物と高い塀に囲まれていて──
そうだ、夢だ。きっと夢を見ているんだ。
頬をつねってみよう。夢の中なら痛くないはず。
「うぅ……普通に痛い……」
そのとき、腕を見て自分も褐色の肌であることに気がついた。
服も寝間着ではなくて白のワンピースドレスのような衣装を身に纏 っている。
さらには、髪や腕にきらびやかな装飾品まで。
そういえば私、さっきこの海馬くんに似た男の人からナナシ様って呼ばれて……?
「あっ、あの……何故私の名前を知っているのですか?それに様付けなんて……これは何かそういうコンセプトのイベントですか?」
「またとんとわけの分からぬことを……。ナナシ様は先代のファラオであるアクナムカノン王と側室の妃との間に御生誕あそばされた王女ですから、尊んでお呼びするのは当然の事かと。尤 も、王女と呼ばぬよう貴女 から直々に窘 められているのですがね」
「ファラオ……王女……城之内くん……」
って、尻取りしてる場合じゃないよね。
単語を追うのに必死でよくわからなかったし、ますます混乱してきた……。
「さ、ナナシ様のお姿が見えずファラオもご心配なされておりますゆえ王の間へと参りましょう」
「わっ、ととっ……!」
わああ高いっ!
いきなり横向きに抱きかかえられて、思わず男の人の首に手を回してしがみついてしまった。
「フ……お疲れのようでしたらこのまま閨 にでもご案内いたしましょうか」
「ね、ねや??大丈夫です歩けますごめんなさいっ」
そこまでしてもらうのは申し訳ないよね。
とりあえず下へ降ろしてもらい、男の人の後について行くことにした。
もしかしたらそっちにみんな集合していて、ペガサスさんが「ドッキリ大成功デース★」って出迎えてくれるかも……なんてね。ないかな。
うん、でも大丈夫。夢でも現実でもきっと何とかなるよ。
そういえば海馬くんに似た男の人が腰に挿してるアレ……千年ロッドだよね?
(2話へ続く)
いつもは目を閉じればじきにまどろみがやって来るのに、今日はなかなか寝付けない。
ホットミルクや呼吸法、三点倒立その他いろいろ試してみたけれど、求めていた眠気は襲ってきてくれなかった。
どうしよう……。
あっ、そうだ。眠れない夜は羊トークンの数を数えると良いって城之内くんが言ってたっけ。
「羊トークンが1匹、羊トークンが2匹、羊トークンが3匹……」
青や黄やピンクの羊トークンが頭の中でふわふわと浮かんで、右から左へ走り抜けてゆく。
「……羊トークンが30匹、羊トークンが31匹……」
もこもこの羊さん。かわいい羊さん。
頭がだんだんぼーっとしてくる。
今何匹目だろう……50くらいかな。
もう口を開けるのも
羊トークンが51匹、羊トークンが52匹……羊トークンが……ごじゅ、さ……ひき……──
***
──羊トークンがいっぱい、羊トークンがもっといっぱい、羊トークンがもっとすごくいっぱい……。
「……様」
羊トークンがもっともっとすごくいっぱい……。
「ナナシ様」
羊トークンがもっともっとものすごーく……。
って、んん?
今誰かに呼ばれなかった?
「このような場所でお眠りになられていたのですか」
「っ!?」
やっぱり誰かいる!
びっくりして飛び起きると、目の前には羊トークン……じゃなくて、この人は……!
「……海馬くん!」
海馬くんと目が合って驚くと同時に安心もした。
朝目が覚めて知らない人が突然目の前にいたらこわいもんね。海馬くんで良かった。
けれどどういうわけか外に出ていたみたいで、起き抜けの目に差す日がとても眩しい。
「探しましたよ」
「え……ごめんね、自分の部屋で寝ていたはずなんだけどもしかして無意識に歩き回って迷子になってた……?見つけてくれてありがとう海馬くん」
うーん。まだ全然頭が回らないや。
それによく見たら海馬くんと違うような……海馬くん、じゃあない……?
私を見下ろしている男の人の肌は褐色で、どこか異国──胸のアンクが古代エジプトみたい──の神官のような衣装を着ている。
そして頭には青い冠。ヘビさんの飾りが付いてる。コブラかな。
「カイバくんとな?フ。何処の誰と見誤っておられるのか存じませぬが、私ほどの美貌を持った男は他におりますまいて」
「わ……すみません!友達と見間違えてしまって……」
「ふむ。相当寝惚けておられるようだ」
そっか私寝惚けてるのかぁ。
……うん。ちょっと頑張って考えてみたけどやっぱり全然状況がわからない。
私が眠ってしまっていたのはどうやらこのヤシの木の下で、同じように周りには近場であまり見かけないような植物が生えている。
辺りはレンガや石造りの大きな建物と高い塀に囲まれていて──
そうだ、夢だ。きっと夢を見ているんだ。
頬をつねってみよう。夢の中なら痛くないはず。
「うぅ……普通に痛い……」
そのとき、腕を見て自分も褐色の肌であることに気がついた。
服も寝間着ではなくて白のワンピースドレスのような衣装を身に
さらには、髪や腕にきらびやかな装飾品まで。
そういえば私、さっきこの海馬くんに似た男の人からナナシ様って呼ばれて……?
「あっ、あの……何故私の名前を知っているのですか?それに様付けなんて……これは何かそういうコンセプトのイベントですか?」
「またとんとわけの分からぬことを……。ナナシ様は先代のファラオであるアクナムカノン王と側室の妃との間に御生誕あそばされた王女ですから、尊んでお呼びするのは当然の事かと。
「ファラオ……王女……城之内くん……」
って、尻取りしてる場合じゃないよね。
単語を追うのに必死でよくわからなかったし、ますます混乱してきた……。
「さ、ナナシ様のお姿が見えずファラオもご心配なされておりますゆえ王の間へと参りましょう」
「わっ、ととっ……!」
わああ高いっ!
いきなり横向きに抱きかかえられて、思わず男の人の首に手を回してしがみついてしまった。
「フ……お疲れのようでしたらこのまま
「ね、ねや??大丈夫です歩けますごめんなさいっ」
そこまでしてもらうのは申し訳ないよね。
とりあえず下へ降ろしてもらい、男の人の後について行くことにした。
もしかしたらそっちにみんな集合していて、ペガサスさんが「ドッキリ大成功デース★」って出迎えてくれるかも……なんてね。ないかな。
うん、でも大丈夫。夢でも現実でもきっと何とかなるよ。
そういえば海馬くんに似た男の人が腰に挿してるアレ……千年ロッドだよね?
(2話へ続く)
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