短編夢
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会議──それは関係者が集まって議題について意見を出し合い、意思決定をする場である。
穏やかながらも真剣な雰囲気が漂う童実野町某所の一室にて、ななしはイシュタール家の面々と共にテーブルを囲んで着席していた。
「今日はお呼び立てしてごめんなさいねななし。私たちが抱えている問題についてあなたにも話しておきたかったのです」
「問題ですか……?あのっ、私にできることがあればなんでも言ってください!」
どの程度のどのような問題なのかわからないが、ななしはイシズに快く応じた。
それを聞いてイシズは「ありがとうございます」と満足そうに目を細め、リシドもまた、静かに頭を下げて目を潤ませる。
「嬉しいよななし。これでボクたちさらに親密な関係を築けたらいいな……なんて」
マリクがはにかみながら喜ぶと、つられてななしも嬉しそうに微笑んだ。
こうして、何故かななしを含めたイシュタール家の家族会議の手筈 が整い、イシズがゆっくりと口を開く。
「それでは早速ですが……まずはじめに、未だ暗躍を続けるグールズの残党問題について話し合いましょう」
「えっ、グールズって壊滅してなかったんですか!?」
思わず驚きの声を上げるななしにイシズは頷 き、伏し目がちに話を続けた。
「ええ。瀬人を神のカード で釣って開催させたバトルシティの結果、グールズは解体されました。ですが、それでもマリクの意思とは無関係に未だ存在しているのです」
「そうでしたか……」
一部不適切な表現があったような気もしたが、ななしは神妙な面持ちで話を把握する。
マリクに従い自身もグールズの一員であったリシドは、硬い表情で眉間に皺を刻み、苦悩の色を濃くした。
「私もグールズを殲滅するために罠を仕掛け、手を尽 くしているのですが……」
「わあ、罠戦術なんてリシドさんらしいですね!ちなみにどんなことをしているんですか?」
「今日だけでも既にパッチンガムや黒板消しトラップ、さらにはバナナの皮を仕掛け……ありとあらゆる手段を講じました」
「「「……………………………………」」」
会議室に無言の時が流れる。
しかし、その沈黙を破ったのはななしだった。
「罠のフルコースなんてさすがですリシドさん!バナナの皮って踏むとよく滑るんですよねっ」
「リシド……そのような古典的な罠にグールズの連中が掛かると思いますか?いえ、掛かりませんね」
わくわくした様子のななしがバナナの皮の特性に感心する一方で、イシズは反語表現を用いてリシドの策略を痛烈に批判した。
掛かる掛からない以前に、効果の程が非常に疑わしい。
「ななしは優しい子ですね。気を遣わず率直な意見を言ってよいのですよ」
「……??はい、ありがとうございます」
イシズから慈愛に満ちた眼差しを向けられ、ななしは小首を傾げながらもニコリと微笑み返した。
さて、ここまでこの議題に関して全く発言の無いグールズ元総帥の男が一人。
ななしはマリクを心配して、ふと、隣に座っている彼の顔を覗き見た。
すると、鼻筋に僅かだが新しい傷ができていることに気がついた。
「マリクくん、その傷……もしかしてどこかで転んじゃった?」
「……ボクは誰を憎めばいい……教えてくれ……」
さらによく見れば指先も少し腫れており、髪にはチョークの粉らしき物も付着している。
見事なまでの様式美 ──
酷評されたリシドの罠に、マリクがことごとく嵌 まってしまったようだ。
「もう……足下に注意して歩きなさいマリク」
「マリク様、頭上も警戒なさってください」
「前を見ていないと危ないよマリクくんっ」
「姉さん、リシド、ななし……ボクはどこを見て歩けばいい……教えてくれ……」
負の感情を募らせたマリクは、頭を抱えて悶え苦しみ始めた。
「うう……ぐっ……!」
「マリク様!?あの人格を目覚めさせてはいけない……!」
「リシド、残念ですがもう手遅れです」
「そうだ〜絆創膏持ってるから貼ってあげるね!」
ななしだけ若干のタイムラグが生じているのか流れが読めていないのか、突然思い出したように手持ちのバッグから絆創膏を取り出して、マリクの鼻の傷口にそっと当てる。
ななしの指がマリクに触れた瞬間、驚くべきことに、闇人格覚醒の兆候がピタリと鎮まった。
「……あ……ありがとうななし!」
「どういたしまして。傷にバイ菌が入ったら大変だもんね」
「ボクは君で満たされているからバイ菌が入り込む余地なんて少しもないさ!」
「ふふふ。そんなにたくさん私はいないよー」
「それはどうかな。あははははっ」
闇のマリクへ人格交代をしてしまう危機をいとも簡単に脱し、ボーイ・ミーツ・ガールな二人のやり取りによって周囲に煌めきのエフェクトが舞い飛ぶ。
「未来が、姿を変えた……」
「これが愛の光……」
イシズが驚きと感動で目を見張り、その隣ではリシドがスンッと鼻をすすった。
「ななし、やはりあなたは私たちにとって必要不可欠な存在です。マリクと手を取り合い、然 るべき時が来ましたら法的にもイシュタール家の一員として──」
「ちょっと姉さん!」
イシズの言わんとすることがわかり、マリクが慌てて制止する。
そんな彼の頬は、みるみる赤く染まっていった。
「私とマリクくんが手を……?はい、これからも仲良くしたいです!」
「ななし!そ、それってもしかしてボクのために毎日味噌コシャリ汁を作ってくれるってことで、ああでも……そんなっ……!」
恐らくは深く考えずに返事をしたななしであったが、マリクは妄想が止まらず食文化までもが超融合を果たしている。
「マリク様……ああ、なんと初々しいお二人であろうか。家族とは斯 くも美しきものかな」
「ふふ。これからは家族四人、新たな道を歩んでゆけたら良いですね」
勝手な未来のビジョンを描くイシュタール家の人々。
議題から逸 れてしまっていることには、もう誰も気がつかない。
fin.
穏やかながらも真剣な雰囲気が漂う童実野町某所の一室にて、ななしはイシュタール家の面々と共にテーブルを囲んで着席していた。
「今日はお呼び立てしてごめんなさいねななし。私たちが抱えている問題についてあなたにも話しておきたかったのです」
「問題ですか……?あのっ、私にできることがあればなんでも言ってください!」
どの程度のどのような問題なのかわからないが、ななしはイシズに快く応じた。
それを聞いてイシズは「ありがとうございます」と満足そうに目を細め、リシドもまた、静かに頭を下げて目を潤ませる。
「嬉しいよななし。これでボクたちさらに親密な関係を築けたらいいな……なんて」
マリクがはにかみながら喜ぶと、つられてななしも嬉しそうに微笑んだ。
こうして、何故かななしを含めたイシュタール家の家族会議の
「それでは早速ですが……まずはじめに、未だ暗躍を続けるグールズの残党問題について話し合いましょう」
「えっ、グールズって壊滅してなかったんですか!?」
思わず驚きの声を上げるななしにイシズは
「ええ。瀬人を
「そうでしたか……」
一部不適切な表現があったような気もしたが、ななしは神妙な面持ちで話を把握する。
マリクに従い自身もグールズの一員であったリシドは、硬い表情で眉間に皺を刻み、苦悩の色を濃くした。
「私もグールズを殲滅するために罠を仕掛け、手を
「わあ、罠戦術なんてリシドさんらしいですね!ちなみにどんなことをしているんですか?」
「今日だけでも既にパッチンガムや黒板消しトラップ、さらにはバナナの皮を仕掛け……ありとあらゆる手段を講じました」
「「「……………………………………」」」
会議室に無言の時が流れる。
しかし、その沈黙を破ったのはななしだった。
「罠のフルコースなんてさすがですリシドさん!バナナの皮って踏むとよく滑るんですよねっ」
「リシド……そのような古典的な罠にグールズの連中が掛かると思いますか?いえ、掛かりませんね」
わくわくした様子のななしがバナナの皮の特性に感心する一方で、イシズは反語表現を用いてリシドの策略を痛烈に批判した。
掛かる掛からない以前に、効果の程が非常に疑わしい。
「ななしは優しい子ですね。気を遣わず率直な意見を言ってよいのですよ」
「……??はい、ありがとうございます」
イシズから慈愛に満ちた眼差しを向けられ、ななしは小首を傾げながらもニコリと微笑み返した。
さて、ここまでこの議題に関して全く発言の無いグールズ元総帥の男が一人。
ななしはマリクを心配して、ふと、隣に座っている彼の顔を覗き見た。
すると、鼻筋に僅かだが新しい傷ができていることに気がついた。
「マリクくん、その傷……もしかしてどこかで転んじゃった?」
「……ボクは誰を憎めばいい……教えてくれ……」
さらによく見れば指先も少し腫れており、髪にはチョークの粉らしき物も付着している。
見事なまでの
酷評されたリシドの罠に、マリクがことごとく
「もう……足下に注意して歩きなさいマリク」
「マリク様、頭上も警戒なさってください」
「前を見ていないと危ないよマリクくんっ」
「姉さん、リシド、ななし……ボクはどこを見て歩けばいい……教えてくれ……」
負の感情を募らせたマリクは、頭を抱えて悶え苦しみ始めた。
「うう……ぐっ……!」
「マリク様!?あの人格を目覚めさせてはいけない……!」
「リシド、残念ですがもう手遅れです」
「そうだ〜絆創膏持ってるから貼ってあげるね!」
ななしだけ若干のタイムラグが生じているのか流れが読めていないのか、突然思い出したように手持ちのバッグから絆創膏を取り出して、マリクの鼻の傷口にそっと当てる。
ななしの指がマリクに触れた瞬間、驚くべきことに、闇人格覚醒の兆候がピタリと鎮まった。
「……あ……ありがとうななし!」
「どういたしまして。傷にバイ菌が入ったら大変だもんね」
「ボクは君で満たされているからバイ菌が入り込む余地なんて少しもないさ!」
「ふふふ。そんなにたくさん私はいないよー」
「それはどうかな。あははははっ」
闇のマリクへ人格交代をしてしまう危機をいとも簡単に脱し、ボーイ・ミーツ・ガールな二人のやり取りによって周囲に煌めきのエフェクトが舞い飛ぶ。
「未来が、姿を変えた……」
「これが愛の光……」
イシズが驚きと感動で目を見張り、その隣ではリシドがスンッと鼻をすすった。
「ななし、やはりあなたは私たちにとって必要不可欠な存在です。マリクと手を取り合い、
「ちょっと姉さん!」
イシズの言わんとすることがわかり、マリクが慌てて制止する。
そんな彼の頬は、みるみる赤く染まっていった。
「私とマリクくんが手を……?はい、これからも仲良くしたいです!」
「ななし!そ、それってもしかしてボクのために毎日味噌コシャリ汁を作ってくれるってことで、ああでも……そんなっ……!」
恐らくは深く考えずに返事をしたななしであったが、マリクは妄想が止まらず食文化までもが超融合を果たしている。
「マリク様……ああ、なんと初々しいお二人であろうか。家族とは
「ふふ。これからは家族四人、新たな道を歩んでゆけたら良いですね」
勝手な未来のビジョンを描くイシュタール家の人々。
議題から
fin.
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