短編夢
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月刊デュエリスト──それは、デュエルに関する様々な情報が盛り込まれた決闘者御用達の雑誌である。
今月号の月刊デュエリストに決闘王である武藤遊戯の特集が組まれているということで、ななしは当の本人である闇人格の遊戯と一緒にコンビニへと立ち寄った。
「月デュエどこかな……あっ、あった!」
「今月はオレの単独表紙&ブチ抜き23ページの大特集なんだぜ」
雑誌コーナーには、彼が表紙の月刊デュエリストが
ななしは早速手に取ってまじまじと表紙に見入り、小さく感嘆の声を上げる。
「わぁ、かっこいいなぁ遊戯くん……!デュエリストなら知らない人はいないくらいの有名人だもんね」
「はは。ななしがいつも傍にいてくれたおかげでオレはここまで来られたんだ」
「そんなっ、私なんて全然何も……」
そう言いながらも、はにかんだ笑顔で表紙の自分を見つめているななしが愛おしくて、遊戯は目を細めた。
たとえ写真でも自分を見てくれていることには違いないし、心から嬉しく思っている。
──でも、それでは足りなかった。
遊戯はななしの頬に手を添えて、自分の方へ顔を向けさせた。
「本物がここにいるのに、表紙のオレで満足なのか?」
「えっと……それは……」
「いつだってオレの隣はななしのためだけに空いているんだ。ずっとオレだけを見て、この空席を埋めていてほしい」
「遊戯くん……」
完璧な愛の告白だった。
ただし、場所がコンビニ内であるという点を除けば。
二人は見つめ合い、沈黙の時間が流れる。
やがて、ななしがためらいながらも口を開き──
「あれ、遊戯くんの隣って空席だったっけ?今はクラスが違って残念だけど……今度休み時間に遊びに行くねっ」
沈黙は予期せぬ返答で破られた。
これには百戦錬磨の決闘王も思わずコケそうになる。
「超豪速球ど真ん中ストレートじゃないとななしを打ち取ることはできないか……」
「んー?野球の話?」
「いやまあ、その、なんだ……インタビューでも色々語ってるから後でゆっくり読んでくれ」
遊戯は気を取り直すと、ななしが手に持っている月刊デュエリストをひょいと掴み上げた。
「こいつはオレからのプレゼントだ。会計を済ませたらサインして渡すぜ」
「えっいいの?ありがとう、遊戯くんの直筆サイン嬉しい!」
仲の良い友人関係ではあるが、やはり決闘王としての遊戯のサインは特別嬉しいもののようだ。
「今度何かお礼をさせてね」というななしの申し出に遊戯は首を軽く横に振るが、少し考えた後に「なら、ななしのサインをくれないか?いつの日か……二人の名前を記す、大切な書面に」と所望した。
もちろん意味が伝わっていないことは承知の上だ。それでも、快く了承してくれるななしを見て遊戯は微笑んだ。
……とまあ、何やら勝手に満足しているが、仮にななしと将来を誓い合い結ばれることがあったとして、表の遊戯と二心別体にでもならない限り色々と問題が発生しそうではある。
「さて、せっかくだから多面展開してから帰るか……」
遊戯は陳列棚の月刊デュエリストをさりげなく他の雑誌の一番前に差し込んでゆく。
ひと通り姑息な工作活動を終えた遊戯はレジで会計を済ませ、ななしと共にコンビニを後にした。
「私もいつか遊戯くんみたいな強くてかっこいいデュエリストになれたらいいな……」
ななしが何気なく呟いた言葉に、遊戯は力強く頷く。
「ああ、なれるさ。それにななしはもう十分強くて優しい立派なデュエリストだ」
「そ、そうかな……ありがとう!でも私、遊戯くんに教えてもらいたいことがまだまだたくさんあるんだっ」
ななしから憧れの眼差しを受けて、遊戯は改めて自分がおいしいポジションにいることを認識した。
「いつでも教えてやるぜ。かっこいいドローの仕方からダイレクトアタックの正しい受け方まで、
「ありがとう遊戯くん!」
勝敗には直接関係ないが、それも真のデュエリストには欠かせない大切な要素なのだろう。
こうして、決闘王直々のマンツーマン指導が再び開講することとなった。
fin.
自分が表紙の雑誌でも実店舗で平然と買ってのけるのが王様スタイル。
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