短編夢
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「ジロジロ見んな、あっち行け!」
ったく嫌なガキだぜ。人のことを不審者みてぇによ……って、やっぱ不審者かオレ。
そうだよな。遊園地でもねぇのに、この格好はおかしいよな。
一時のテンションでななしん
***
「なぁ静香、例えばの話だ。例えばある女子のことが好きな男子がいたとして……」
「うんうん。お兄ちゃんはななしさんのことが好きで、それで?」
「だあぁぁ例えばの話だって!じゃあ単刀直入に、好きな女子から好意を持たれるにはどうすればいいか教えてくれ!」
「それじゃあ……女の子は可愛いものが好きだから、可愛いものでアタックしてみたらどうかな?」
「可愛いもの?」
「ほらお兄ちゃんアレ、犬の……」
「犬の……」
***
犬の着ぐるみかっ!
つーわけで、今着用してるってわけだ。
この姿でいるとあのムカつく野郎の顔が頭をよぎるぜ……。
だーもー!オレは負け犬じゃねーぞ!
ええい、なるがままだ!
オレは意を決してチャイムを鳴らした。
『はーい……あれ?』
「ああ、オレだ。城之内だ」
『城之内くん?今いくねっ』
ななしの声だ。
オレはインターホンのモニターに映らないように横に避けて、声だけで応答した。
ほぼいつもななし一人って言ってたが、もし先に親御さんに見られちまったら玄関ドアが開けられることもなく門前払いだろうからな……。
玄関ドアが開かれて、ななしが顔を覗かせた。
男城之内、いくぜっ!
「ようななし!」
「………………あ」
目が合ったななしは、ぽかんとして固まっている。
あああああっ!絶対引いたよな!?
この妙な間の空気が
「城之内くん、その着ぐるみ……」
「ああこれか?なんつーか……その……」
「………かわいいっ!!」
「のおっ!?」
ぼふ、とななしがオレの胸に飛び込んできた。
……おいおいおいおいマジか!?!?
想像以上っつーか、想定外だぜ!でかした静香!
恥ずかしいくらいに心臓がドクドクいってやがる。
頼む、ななしに聞こえてませんよーに!
「もふもふ気持ちいー!」
「〜〜〜〜〜〜っ!!」
ななしは密着して、着ぐるみの布地を掴んだままこっちを見上げてきた。
待て待て、上目使いは反則だろー!?
着ぐるみのせいじゃねぇ、体がクソ
「城之内くん、今日はどうしたの?」
「え?ああ……着ぐるみ日和でな、気がついたらここに……」
言い訳が苦しいってオレ!単なる変人じゃねーか!
「そうなんだ!ふふ、城之内くんももう一人の自分がいたりしてね」
「はは……それはねぇな」
セーフ!着ぐるみのツッコミは無しだ!
それにしてもこの状態……もしかして告るチャンスか!?
真のデュエリストなら、この機は逃さないはずだ……!
「なあ、ななし!」
「なぁに?城之内くん」
「オレさ、お前に言いたいことがあってよ」
やべー緊張してきた……。
いけ、好きだって言うんだ!
「ななしが、す……」
「す……?」
「す……」
踏ん張れ城之内克也!
ここで折れて『す』から始まる別の言葉を言っちまうようなベタな逃げ方はしないぜ!
「す……スリランカの首都ってどこだっけ?」
「スリジャヤワルダナプラコッテ!」
うわああああ嘘だろオレ、やっちまった!
しかもななしの奴即答かよ!全然わからねぇ!
「はは、ははは……すげーな、勉強しとくわ!じゃあな!」
「え、もう行っちゃうの!?」
オレのバカヤロー!
やっぱり負け犬だってのか!
情けねぇ……。ななしに背を向けて振り返らずにひた走る。
今ならオレ、千の風になれるかもな。
fin.
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