短編夢

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ななしと組んで勝てば二人の間に何かが芽生えるはず……!)

(オレがななしを勝利と快楽の絶頂に導く!)

チーム分けをするにあたって熱い想いを抱く城之内と海馬。

とりわけ海馬はマイロードを踏み出し過ぎているが、他の誰もがななしと同じチームになることを望んでいた。

「じゃあいくぜ!グッパで組んでも文句なし!」

遊戯の掛け声で全員が一斉に手を出した。

「「「「「「………………………………」」」」」」

「絶対一人はいるよな、こういう奴」

「ぷっ……!バッカじゃねーのマリクちゃん!」

「オレはチョキが大好きでね……」

間違えてチョキを出してしまったマリクに、バクラの冷やかな視線と城之内の嘲笑ちょうしょうが刺さる。

ななしは言い訳をするマリクに同調してうんうんとうなずいた。

「わかるっ、なんかチョキってかっこいいもんね!じゃあもう一回やろう!」

「……よし、いくぜ。グッパージャス!」

何故か遊戯の掛け声が変わり、今度はきれいに二つに分かれた。

グーはななし、城之内、バクラ。
パーは遊戯、海馬、マリクだ。


「城之内くん、バクラくん、頑張ろうね!」

「おう!」

「オレ様に任せな!」

早くも結束を見せ始めるグーチーム。

「フン、予定が狂ったか……まあいい。このゲーム、敗者は罰を受けるというのはどうだ?」

「罰ゲームか、いいねぇ海馬」

「とりあえず聞いてやるぜ」

海馬の提案に、マリクと遊戯の罰ゲーム執行人たちが食い付いた。

「罰ゲームは腕立て伏せ30回だ」

「まさにデスゲーム」

「死なねぇよ!……つーか、社長の割にはやけにシンプルなこと言うじゃねえか」

マリクにツッコミつつ、バクラは海馬に疑問の念を抱いていた。

「へっ、楽勝だぜ!」

「連続じゃなくてもいいなら大丈夫、かな……!」

城之内はニカッと笑い、ななしは少し不安そうではあるがやる気を見せる。

ななしの腕立て姿か……そそるぜ)

ななしの腕立て姿はそそられるなぁ」

「誰だ今オレにマインドスキャンした奴は!?」

遊戯の思考とマリクの発言が一致した瞬間だった。

こうして罰ゲームは両チームともに一応の了解を得て決定した。

「両チーム交互に一投ずつ行い、多くピンを倒したチームを勝ちとする。それでいいな?」

「ああ、早速始めようぜ!」

勝負は海馬スペシャル・ルール(一人一投の短期決戦)になっており、罰ゲームの後に改めてボウリングを楽しむつもりらしい。

「オレの先攻!」

「頑張れー城之内くん!」

「10本全部倒して向こうにプレッシャーかけてやれ!」

まずは先攻グーチームの城之内がアプローチ(ボールを構えるエリア)に立つ。

ななしにカッコイイところを見せるぜ!)

「おりゃあ!」

勢いよく投球されたボールは真っ直ぐに転がっていく。

そして、ど真ん中の1番ピンに命中したが、最後列端の2本が残った。

「ああああチクショー!」

「惜しかったね城之内くん、でもすごいよ!」

グーチーム、まず一人目が終了し記録8本。

「所詮は凡骨レベルということだ。……オレのターン!」

後攻パーチームの海馬がアプローチで構え、大胆にボールを放つ。

「ヴアァストストリィィィィム!」

爆裂疾風弾となったボールは恐ろしい程の破壊力で全ピンをなぎ倒した。

「恥ずかしい奴だぜ。まあよくやったが」

「クク……面白いよ海馬ぁ」

同チームの遊戯とマリクがぱちぱちと拍手を送る。

記録10本でグーチームに2本リードし、パーチーム一人目が終了した。

ななしにはいい状態で次に繋ぐぜ、オレ様のターン!」

「おいバクラ、ボールにパラサイトマインドするなよ」

「しねぇよ!ったく遊戯の奴いちいち突っかかってきやがる……」

バクラの目は真剣そのものだ。

「ガーター、ガーター」

「「ガーター、ガーター」」

「「「ガーター、ガーター」」」

「っクソが!ガーターコールうるせぇな邪魔すんなパーチーム!」

これがパーチームの結束の力だ。

「バクラくんファイトー!」

「……!オレ様にはななしの声しか聞こえねぇぜ!」

ななしの声援によって再び集中力を取り戻したバクラは、プロ顔負けの華麗なフォームで投球する。

ボールはピン直前で軌道を変え、巻き込むようにして全てのピンを倒した。

「すっげーカーブ!」

「やったねバクラくん、ストライク!」

「オレ様の手にかかればチョロいもんよ!」

三人でハイタッチを交わし、一気にムードを盛り返した。

グーチーム二人目が終了し、計18本。

「ストライクにはストライクで返すぜ。オレのターン!」

「王サマが中継ぎとはな……やれるモンならやってみな!」

遊戯がアプローチに立つが、何か様子がおかしい。

重いボウリングのボールをもろともせず、振りかぶっている。

「おいおい、なんだありゃあ」

「まさか遊戯くん……」

「「「投げ上げたぁ!?」」」

ななし、城之内、バクラのグーチーム三人は一斉に驚きの声をあげる。

「性格もさることながらボウラーとしてのマナーも最悪だな王サマ……!!」

だがパーチームのメンバーはやはりどこか常人とは違う感性を持っているためか、ただ好奇の目で見ている。

やがてボールは並んでいるピンの中央に落下し、その衝撃で全て弾け飛んだ。

「これがボールを信じる力ってやつだ」

「ワハハハハ!いいぞ遊戯、粉砕!玉砕!大喝采!」

「奴らに屈辱の罰ゲームの時間が近づいたなぁ」

多大な迷惑をかけつつ、計20本で2本のリードを保ったままパーチームの二人目が終了した。

「私のターンだね、行ってくる!」

「落ち着いていけ」

「頑張れよななし!……って何してんだお前ら」

ななしがアプローチに立つと、遊戯、海馬、マリクの三人は屈んで体勢を低くしている。

城之内は呆気にとられているが、すぐにピンときたバクラが声を上げた。

「テメェらななしのスカートの中を覗こうとしてやがるな!」

「何ぃ!?チラパン根性か!」

「城之内くん、君のエロ戦車(原作 遊闘3『ハードビート!!』参照)と違ってこれはミニスカによる自然の摂理だ。オレもそれを否定することはできない。……だが、オレ以外の者が見るのは許されないぜ!」

遊戯は制止するように、手のひらを他のメンバーに向ける。

「何言ってるんだよ遊戯!」

「めちゃくちゃじゃねーか!」

「愚かな利己主義だ!」

「遊戯……貴様も闇行き決定だな」

ヘイトが全て遊戯に集中し、城之内、バクラ、海馬、マリクは彼のほうを睨みつける。

「──やったあ!初めてだけど全部倒せた!」

「「「「なんだと!?」」」」

「えへへ、そんなに驚かないでよー」

遊戯以外の四人のこの驚きはすでにななしの投球が終わってしまったことによるものだ。

「……白!あ、いや、良かったぜななし!初めてとは思えないな」

「ありがとう遊戯くん!」

ななしは満面の笑みで自分の席に戻る。
遊戯もまた別の意味でフフンと笑った。

「目の前の憎しみにとらわれているから大事なことを逃すんだぜ」

「鼻押さえながらもっともらしい事言ってんじゃねぇよ!テメェは後で絶対殺す!」

こうして無事に、とは言い難いがグーチームの三人目が終了して最終合計28本。

「さぁて……オレのターンだ」

マリクのこの一球に全てが懸かっている。

「8本以下なら貴様の命は無いと思え」

「ついでにジュースも無いと思え」

海馬の台詞に便乗しつつ、遊戯は人の分の缶ジュースまで開けて飲み始める。

「ああうるさいうるさい……」

マリクは屈み、両手で抱えたボールを丁寧に放り出した。
ごろん、と小さく音を立てたボールはゆっくりと転がりだす。

「だっせーマリクちゃん!両手で投げてやんの!」

「やる気あんのか?」

マリクはグーチーム男子二人のヤジに反応することもなく、しゃがんだままただじっとボールの行く末を見つめている。

今にも止まりそうな勢いだが、先頭の1番ピンにコツリと当たる。
そして、それを起点として後列のピンも順々にコツコツと倒れていった。

「ウソだろ!?全部倒しやがった!」

「マリくんすごい!ドミノみたい!」

ななし、オレ様達は負けたんだぜ……」

パーチームは最終合計30本。そしてグーチームは28本。

「げっ!ストライク出してねーのオレだけ!?」

「このヘッポコボウラーが!」

「ううん、私のはまぐれだし城之内くんも頑張ったもんね!」

「すまねぇななし……」

「さあ約束の罰ゲームをしてもらおうか」

海馬が腕を組んでニヤリと笑う。

「へいへいわかってますよーだ。腕立て30回でいいんだろ?」

「そうだ、貴様とバクラはな。……ななしには追加条件だ」

「私?」

ビシリとななしを指さす。

「オレの上で腕立てをしろ!」

「な、なんで海馬くんの上!?」

「1キスにつき1カウントとする!」

これにはななし以外の全員も即座に反応した。

「腐ってるぜ海馬!」

「海馬のヤローふざけやがって!」

「ウィジャ盤効果発動!D・E・A・T・H!死ね!」

「起動せよラーの翼神竜!」

皆一様に殺気立っているが、特に後半の者たちの挙動が明らかにおかしい。

ボウリング場に来ている人々は恐れおののき逃げ出した。

「海馬くんに汗が垂れたら悪いし……」

その頃、ななしは別次元のことで悩んでいた。
まずはじめに懸念すべき点は確実にそこではない。

(……それにキスなんて恥ずかしくてできないよ)

ななしの思考がようやく世間並の方向に向かい始めた時には、既にボウリング場が半壊した後だった。


fin.
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