短編夢
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
やわらかな陽光が降り注ぎ、鳥のさえずりが聞こえてくる静かな公園──
「んー。この場所好きだなぁ」
ななしは小さくあくびをし、伸びをして幸せそうに目をつむる。
だがそんなくつろぎも束の間、背後から騒々しい音が近づいてきた。
「オレの踏み印したロード!そこにななしの姿があるのだ!」
「この声は……」
意味不明なことを高らかに叫びながら、一人の男がグリコ走りでななしの背に迫ってくる。
「だーるーまーさーんーが……転んだ!」
「む!」
予期せぬストップ宣言に、男はななしの直前で思わず静止した。
無論グリコポーズのまま。
後ろを振り返ったななしは男と目が合う。
「あーやっぱり海馬くんだ!」
「フ……必然的な出会いだな」
悦に入ったように言葉を掛けるのは海馬だった。
未だグリコポーズのまま。
「偶然じゃないんだぁ。……あ、だるまさんは言ってみたかっただけなの。止めちゃってごめんね」
「マンネリ防止のための新しい試みなのだろう?今度はオレがななしを官能的な体勢で戒めてだな、それから……」
海馬のアブノーマル思考は計り知れない。
既にマイワールドに突入しているが、ななしが唐突に声を上げた。
「そうだ、海馬くんこれ見て!」
首にかけている紐を引っ張り上げて服の中からストラップケースを取り出し、一枚のM&Wのカードを示す。
「ほう。ブラックマジシャンのカードか」
「うん!なんとびっくり、ブラックマジシャンとお話しできるんだよー!」
「何、カードと話せるだと……?非ぃ科学的だ!」
「本当だよ。ちょっと待っててね」
ななしはデュエルディスクを装着し、ブラックマジシャンを召喚した。
「急に呼び出しちゃってごめんね」
「……!い、いいえ」
今まで悩ましいポジションにいたためか、ななしと対面したブラックマジシャンの返事が少々上擦った。
だがすぐに冷静さを取り戻す。
「召し
「そんな……やっぱり照れるなぁ。ありがとうブラックマジシャン!」
「ふん、確かに会話しているようにも見えるが
「そっか、海馬くんには聞こえてないんだ……私の独り言みたいになっちゃうね」
ふふ、とななしは口元に手を当てて困ったように笑った。
そんなななしを見てブラックマジシャンは申し訳なさそうに眉尻を下げるが、海馬に目を向けると表情を一変させ、眼光鋭く睨みつける。
警戒度は既にMAXだ。
黙ってその様子を観察していた海馬だが、やがて不愉快をあらわにした顔でななしを指差した。
「ななし、オレとデュエルをしろ」
「えっ、今?」
「そうだ。まずは
ななしとブラックマジシャンの仲睦まじい関係に、海馬は嫉妬の臨界点を超えかかっていた。
「夜もデュエルするの?」
「言葉の綾だ、別に昼でも構わんぞ。オレたちにはカードの剣もデュエルディスクの盾も必要ない。全てを解き放ち、その身ひとつで語り合うのみ!」
「えーと、お話会……?」
(……くっ!我がマスターに向かってなんと破廉恥な!)
ブラックマジシャンもまた怒りの臨界点を超えようとしていたが、
「この私めが厚かましくも意見することをどうかお許しくださいマスター……。夜のデュエルなどと抜かすこの男の
「え、何のことかブラックマジシャンはわかった?」
「そ、それは……」
「それは……?」
「……それは……
無垢な瞳で問いかけてくるななしに向かってそれを口に出すことは
「そっか……でも断るのはなんだか悪いなぁ」
「さあななし、まずはカードのデュエルからだ!」
(ならばマスターの御身は私がお守りする!)
ブラックマジシャンはマスターに仇なす者として、海馬を完全に敵と見なしている。
杖を握る手にぐっと力を込めた。
「マスター、デュエルの前に予行演習をさせていただきたいのですが」
「あ、うん。いいよ。気合い入ってるね!」
ななしからの了解を得て、ブラックマジシャンは一気に海馬のもとへ肉薄する。
「ふははは、衝撃体感システムが起動していない状態でいくら攻撃されようが痛くも痒くもないわ!せいぜいオレを倒す幻想に浸るがいい!」
しかしブラックマジシャンは意に介さず、チッチッと指を振った。
杖の先には確実に魔力が収束してゆく。
「我が魂の一撃を受けて滅せよ……マスター、攻撃宣言を!」
「(これ、デュエル中じゃないし大丈夫だよね?)うん!ブラックマジシャン、海馬くんにダイレクトアタック!ブラック・マジック!」
「……はあっ!」
ななしの掛け声と共に、ブラックマジシャンの杖から光が放たれる。
「な、何故だ……!何故だああああああ!」
ブラックマジシャン渾身の黒魔導が海馬に炸裂した。
地を揺るがす程の激しい衝撃が起こり、ななしは思わず腕で顔を覆う。
それからゆっくりと目を開け、はたと気がついた。
「海馬くんがいない!?」
「ご安心くださいマスター。イリュージョンでこの場から消えていただきましたが、そのうち何処からか現れるでしょう」
海馬を遥か彼方に吹き飛ばした事実は、消失マジックということにして伏せておいた。
「そうなんだ、それなら良かった!」
そしてななしももうデュエルの予行演習だったことなど頭から消え去っている。
「目の前で奇跡の超魔術が見られるなんて……!すごくかっこいいよブラックマジシャン!本っ当に素敵!」
「いえ、そんな……恐縮です」
ブラックマジシャンは平静を装うが、心中では数々の煩悩が渦巻いている。
こうして多大な賛辞を受け、再び魅惑の胸元へと戻っていくのだった。
fin.
いくら吹き飛ぼうが社長なので大丈夫です。
10/24ページ