短編夢
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「ななし、これを見てくれ」
ななしは遊戯から一枚の紙を手渡された。
「……出張型クイズ番組『カップル★DE★クイズ』?へぇーこういうのがあるんだね」
「ああ。先月から始まったばかりのローカル放送の番組だけどな。続きを読んだら驚くぜ」
促されるままにななしは紙に目を通していく。
「えーと……『ご応募いただきました遊戯さん・ななしさんお二人の出場が決定致しましたので──』……えっ!?」
「オレたちの結束の力を見せる時だ!」
遊戯はニッと笑った。
彼の世界は自分を中心にななしの周りを回っている。
「クイズかぁ、なんだか面白そう!でも組むの私で良かったの?」
ななしは、カップルという点については単なる二人一組のペア程度の解釈で受け流していた。
「オレはななし以外の誰とも組む気はないぜ。
それからこのクイズの優勝者二人には賞品も出るんだ」
「そうなんだぁ。遊戯くんがいれば優勝間違いなしだね、私も頑張るよ!」
遊戯は力強く
だが、出場の目的はもちろん賞品などではない。
(番組を通してななしとの関係が公認されれば、邪魔な輩を一掃できるぜ!)
カタチから入る恋人関係を狙っていた。
***
クイズ番組の収録当日──
異様なにぎわいを見せる駅前広場。
そこには数台のカメラが並び、即設の会場が出来ていた。
「さあ、今日もやって来ました『カップル★DE★クイズ』!」
「今回の舞台は童実野町でーす!」
ペアルックに身を包んだ若い男女の司会者。
解答者がカップルなら司会者もカップルということなのだろう。
「ではまず一組目を紹介しましょう。遊戯くん、ななしさんカップルです!」
自分たちのほうにカメラが向けられていることに気付き、ななしはにこやかに手を振る。
「わーい、田舎のおばあちゃん見てるー?」
「これは生放送じゃないぜななし」
ツッコミつつも遊戯は片腕でななしの肩を抱き寄せ、もう片方の腕を前に出してグッと親指を立てた。
いわゆるカメラアピールというやつだ。
「なんだかプリ撮る時みたいだね」
「……!そうだな」
(CGでハートのフレームを付けてもらうか……番組の編集には立ち会うぜ)
見物人はヒューヒューとはやし立てるが、一部の男性の中からはブーイングも聞こえてくる。
「二人の知恵を出し合って頑張って下さいね!では次のカップルを紹介しましょう……」
こうして二組目、三組目、四組目と続く。
だが紹介が終わるや否や、突然見物人の中から叫び声と悲鳴が上がった。
聞こえてくるのは、唸るエンジン音。
「な、何が起きてるのっ!?バイクの音!?」
「あいつは……!」
広場内を暴走している一台のバイクが二人の目に飛び込んできた。
見覚えのあるそのライダーの姿にななしは口をあんぐりとさせて立ち尽くしている。
「皆さん安全な場所に避難して下さい!」
司会者も見物人も散り散りに逃げ出してゆき、カメラマンでさえ高価なカメラを置き去りにして避難している。
案の定、カメラはバイクの男によって見事に粉砕された。
「危ないからななしも下がっててくれ」
「う、うん……遊戯くん大丈夫?」
遊戯は無言で背を向け、再び親指をグッと立ててななしに示す。
そして、おもむろに解答用のボタンを掴むと、暴走する男に向かって投げつけた。
(わあ、すごい豪速球!プロの野球選手もびっくりだよ!)
物陰から見守るななしは、密かに感動している。
ビュン!と物凄い勢いで空を切るボタンは男の頭部にヒットし、転倒したバイクのエンジンは自動停止した。
「痛い痛い……」
「おいマリク……よくもななしとの愛の舞台をメチャクチャにしてくれたな」
頭や体をさすりながらしかめっ面をしている男は闇人格のマリクだった。
幸い大きな怪我はしていないようだ。
眉間のシワを三割増しにした遊戯から恐ろしい程の怒りのオーラが出ている。
「なんだ遊戯、貴様か。主人格サマのバイクに乗ってみたが運転の仕方がよくわからなくてなぁ」
「貴様は三輪車から始めることを勧めるぜ。──さあ、クイズの時間だ」
「あぁ?クイズ?」
あくまで静かな口調で遊戯は続ける。
「これから貴様はどうなる?
A、マインドクラッシュ
B、マインドクラッシュ
……答えは二つに一つだ」
「オイオイ、どうやって選ぶんだぁ?」
どうやら正解率は百パーセントのようだ。
「時間切れだぜ。今答えを教えてやる……マインドクラッシュ!!」
***
「結局中止になっちゃったね」
「ああ、残念だな……」
「……じゃあ私が代わりにクイズを出します!」
ななしは二枚の紙を取り出して遊戯に見せる。
「これは何でしょーか?」
「これは……遊園地のチケット?」
「大正解!実はこれ期限が迫ってて……もし良かったら一緒にどうかな?」
それを聞いた瞬間、遊戯のテンションが一気に上がった。
「今すぐ行こうぜ!」
「やった!行こ行こ!」
ななしの手を取り、歩き出す。
「ななし、オレからもクイズだ」
「んーなになに?」
「ななし……お前の好きな奴は誰だ?」
遊戯は思い切ったクイズを出題する。
もはやただの質問だ。
真剣な面持ちで答えを待つ。
「私の好きな人はね、遊戯くん」
「……!!」
遊戯は思わず足を止め、まじまじとななしの顔を見つめた。
「ななし……!」
「……あと城之内くんに杏子ちゃんに本田くんに……」
以下、無限に続いてゆく。
知り合いの名前を出し尽くすまで終わらないのだろう。
「そういうことか……」
「んん?」
「いや、何でもないさ。行こうぜ」
「うん、いっぱい楽しもうね!」
(いつか必ず特別な意味での『好き』にさせてやるぜ)
一体いつになるのだろうか。
本当にその時が来るのかどうかは、誰にもわからない。
fin.
友情出演(?):闇マリク
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