短編夢
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とある冬の日。
スキーシーズンだというのにゲレンデには人ひとり見当たらない。
──この二人を除いては。
「ほんっとに誰もいない……!」
「何せ今日のためにこのスキー場はオレが買収したのだからな」
「そうなんだ!これなら思いっきり滑れるね、連れて来てくれてありがとう海馬くん!」
せめて一日の貸切りでよいところをさらりと買収してのけてしまう海馬と、それを無邪気に喜ぶななし。
ななしはこれがどれ程のことであるか深く考えていないため、海馬の重過ぎる愛も最軽量化することに成功している。
「フ……共に悦楽の高みへ昇るぞななし!」
「うん!リフトリフトー」
スキーウェアに身を包んだ二人──海馬はスキー板を足に、ななしはソリを手に──は、リフト乗り場へと向かった。
「ベストシーズンなのに誰もいないってなんだか不思議だなぁ」
「ななしは人に見られていたほうが興奮するのか?」
「えっ、ううん。私下手くそだから他の人の目があるとちょっと恥ずかしいかな」
「ならばオレが一から仕込んでやる。そして存分に
「わあ……海馬先生よろしくお願いします!」
一体何の話をしているのか。
リフトに乗った二人は、絶妙にすれ違ったり噛み合ったりする会話をしながら、ゆっくりと上っていく。
途中で、海馬が少し離れた斜面を指差した。
「ななし、あれを見るがいい!」
「んー?」
ななしが言われた通りに雪の斜面を見ると、そこにはスキーで滑った二筋の軌跡があった。
そしてそれは奇怪にも『ななしLOVE』と読み取れる。
「何何あれ!?すごい!!」
「ククク……あれは先んじてオレが描いておいたななしへの愛のシュプールだ!」
「ノンストップで描くの無理だよね!?重力無視しないと無理だよね!?」
「このオレに不可能などない!ワハハハハ!」
超人的な海馬のスキーテクニックに興奮しているななしは、文字の意味にまで気が回っていない。
(ミステリーサークルみたい……!海馬くんならナスカの地上絵も描けるかも!)
などと明後日の方向に思考が飛んでいた。
そうこうしているうちに、ななしと海馬は上まで着いてリフトから降りる。
「じゃあ早速滑っていくよ!」
「待てななし」
「ん、どうしたの?」
海馬はおもむろにスキー板を外し出す。
そしてななしのもとへ迫り、両肩を掴んだ。
「いきなり滑るのは良くないぞ。まずはオレと一汗かかないか?」
「準備体操ならしたからだいじょ……
きゃあ!?」
ななしは突然ソリの上に押し倒され、状況が飲み込めず目を丸くして海馬を見つめる。
「白銀の中でのプレイ……寒いからこそ燃える!」
「ちょ、苦しいよ海馬くんっ!」
海馬が覆い被さってきたことに驚いたななしはソリの脇の雪を蹴ってもがく。
だがそのせいで前進したソリは斜面へと差し掛かり、滑り出してしまった。
「何っ!?」
「いやあああこわいこわいこわいよおおぉ!」
仰向けで頭を下にし、しかも海馬を上に乗せたまま斜面をハイスピードで下っていく恐怖にななしは絶叫する。
「おのれ……この程度止めてくれるわ!」
海馬はソリの両端を掴んで思いきり体をひねる。
しかしあまりにも勢いよく滑走していたため、そのまま反転して二人は放り出され、ソリは空高く舞い上がった。
「と、止まった?」
「フ……中々積極的だなななし」
ななしと海馬は先程とはすっかり反対の体勢になっていた。
「あれ、何で私が海馬くんの上に!?ごめんねっ!」
(なんか前にもあったような?)
「さあななし、プレイ続行だ!」
だがななしは海馬に掴まれるよりも速く体を起こす。
そしてそれと同時に絶妙のタイミングで落ちてきたソリが、海馬の顔面にクリティカルヒットした。
「海馬くんっ!?……もしかしてこれが『ぷれい』?」
ダウンしてしまった海馬を心配して、とりあえずモクバか磯野に連絡を取ろうと思ったななしであった。
fin.
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