「天才少女と母の嘘」番外編

  • 土門

    最近、科捜研にいないと思うと、いつもここだな

  • マリコ

    今のうちから有望な新人を育てているの

  • 馬場

    いいですねえ!
    スパイクラブの次は科捜研クラブですか?

  • 土門

    榊…

  • 土門はマリコが口を開く前に静止した。

  • 土門

    馬場さん。
    あなたの経歴を調べました

  • 馬場

    私、まだ容疑者なんですか?

  • 土門

    あなたは日本で調理師免許を取った後、数年間、海外の日本大使館で働いていたそうですね。
    ひょっとしてあなた本物の…  

  • 土門を遮り、二人の間に割り込んだ馬場は神妙な面持ちだ。

  • 馬場

    それはここだけの話でお願いします

  • 土門

    了解

  • 顔を見合わせ、ニヤリと笑う男たち。
    そんな様子にマリコも笑うと、二人は馬場と別れて歩き出す。

  • マリコ

    馬場さんて面白い人よね

  • 土門

    本当に、本物のスパイだったかもしれんぞ?

  • そういって豪快に笑う土門とは対照的に、マリコは考え込む仕草を見せた。

  • 土門

    どうした?

  • マリコ

    実はね、私、馬場さんからスパイ七つ道具を貰ったのよ

  • 土門

    え?

  • マリコはおもちゃのサングラスを取り出すとかけて見せた。

  • マリコ

    奈菜ちゃんたちみたいに、この見えないペンとプラックライトを使って、ある人物の行動を監視するつもりよ

  • 土門

    ある人物?

  • マリコ

    そう。
    その人物は、最近部下にばかり科捜研の仕事をさせて、まるで私のところに顔を出さないの。
    なぜそうなったのか。
    他に何をしているのか。
    それを調べようと思って

  • 土門

    それは!
    俺も色々とだなぁ…

  • 言葉を濁す土門。

  • マリコ

    あら?
    私、土門さんのことだなんて言ってないわよ

  • 土門

    白々しいぞ、全く

  • マリコはじーっと土門を見上げる。
    このビームは本当に反則だ。

  • 土門

    …笑うなよ

  • そう前置きすると。

  • 土門

    昇任試験を受けようと思っているんだ

  • マリコ

    え?
    じゃぁ、最近科捜研へ来なかったのは…

  • 土門

    勉強していたからだ

  • マリコ

    なーんだ

  • 土門

    笑わないのか?
    この歳で勉強なんておかしいだろ

  • マリコ

    ぜんぜん!
    すごいと思うわ

  • 土門

    榊?

  • マリコ

    私、応援するわ

  • 土門

    本当か?

  • マリコ

    もちろんよ。
    頑張ってね

  • 土門

    ああ。
    それで合格したら、なんだが………

  • マリコ

  • 土門

    収入の面も今より安定するし、そろそろ一緒に…………

  • マリコ

    え?
    ソロ?

  • マリコは辺りを見回す。

  • マリコ

    あ、本当だわ。
    ソロー!

  • すぐ近くを散歩していたソロがマリコの声を聞き、走り寄ってきた。
    マリコは飛びつくソロとじゃれ合う。

  • 幸恵

    ごめんなさいね。
    お邪魔しちゃったかしら

  • 少々派手で、貫禄のあるソロの飼い主はニンマリ笑っている。

  • 土門

    いえ。
    榊、行くぞ

  • マリコ

    ソロ、またね。
    待ってよ、土門さん!

  • ようやく追いついたマリコは、土門の手を握った。

  • 土門

    榊?

  • マリコ

    少しだけ…このままでもいい?
    本当は不安だったの。
    でも理由がわかってよかったわ。
    あ!
    私に手伝えることがあったら言ってね

  • 軽く触れ合うだけの手を、土門はぎゅっと握り直した。

  • 土門

    お前がそばにいれば、百人力だ

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