「密室と甘い焼き芋」編

  • 焼き芋事業部の新しい形を見守る二人は笑顔だった。

  • 帰る道すがら、マリコは土門に言った。

  • マリコ

    土門さんも気をつけないと

  • 土門

    ん?

  • マリコ

    土門さんみたいな昭和の刑事は、言葉遣いも行動もハラスメントに誤解されやすいんじゃない?

  • 土門

    おいおい…。
    お前、人のこと言えるのか?

  • 定時を過ぎてから、無理やり鑑定を押し付けるマリコには言われたくない。

  • マリコ

    私?
    私は大丈夫よ

  • 土門

    知らぬは本人ばかり…だな

  • マリコ

    そんなに言うなら、私のどんなところがハラスメントなのか教えて

  • 土門

    嫌がる部下へ無理に鑑定を続けさせたり。
    目力で無言の圧をかけたり…

  • 土門は次々と挙げていく。

  • マリコは覚えがあるのか、うっと唸る。

  • 土門

    他にも恋人との約束をすっぽかしたり。
    記念日を忘れたり

  • マリコ

    ち、ちょっとまって。
    それもハラスメントなの?

  • 土門

    当然だ

  • 土門は眉を跳ね上げる。

  • 土門

    俺はひどく傷ついた

  • マリコ

    そうだったの…。
    ごめんなさい

  • マリコはしゅんと項垂れた。

  • 土門

    わかったら、時には仕事よりも俺を優先させるように

  • マリコはしっかり頷く。

  • 土門

    よし。
    じゃあ、今夜はうちに来い

  • マリコ

    うん…。
    え!?

  • 土門はニカッと笑う。

  • うまく丸め込まれてしまった気もするが…。

  • 土門の嬉しそうな笑顔に、マリコは降参するしかなかった。

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