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土門
俺の息子は出来損ない。親不孝者
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マリコ
え?
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土門
親を尊敬していた。騙されている。恨まれている。命の恩人…
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土門
この人はこうだと、人はレッテルを貼りたがる
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マリコ
ええ
別の見方をしている人もいたのに… -
土門
レッテルを貼って自分は間違っていないと安心したいんだ
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マリコ
でもその安心を求めて、かえって追い詰められていた
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土門
俺も勝手な推理をして捜査をすることがある
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マリコ
私も、それで別の可能性を勝手に排除していた
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土門
推理をするなら、レッテルを貼るなら、どんな責任もとる覚悟でその人を調べ尽くさなきゃならないな
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マリコ
そうね
それが今回よくわかった -
土門は一足先に川岸へ向かう。
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土門
おい、榊
行くぞ -
マリコ
待って…あ!
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慌てて石に飛び移っていくと、バランスが崩れてマリコの体が傾ぐ。
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思わず伸ばした腕を土門が捕まえてくれた。
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マリコ
ありがとう
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土門
鈍いな、お前
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マリコ
何よ
今のはたまたまよ -
土門
そうかぁ?
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疑わしいと、土門は眉を上げる。
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マリコ
そうやって人にレッテルを貼るなら、どうするって言ったかしら?
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負けずに、マリコも大きな目で見返す。
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すると土門は、突然腕の力を緩めた。
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マリコ
きゃ!
ちょっと、土門さん! -
再びぐらつく足元に、マリコは思わず土門の胸に飛び込んだ。
そんなマリコの全てを受け止めても、土門はびくともしない。 -
土門
やっぱり鈍いんじゃないか?
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笑いながら、土門は少しだけマリコを抱く腕に力を込めた。
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土門
レッテルを貼る前に、お前を調べ尽くしてみるか?
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土門
もちろん、どんな責任もとる覚悟だ
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一体どんな責任で、何を調べ尽くされるのか。
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囁かれた言葉と包まれた土門の香りに、マリコはたまらず頬を染めた。
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