「サバイバル72時間」編

  • 土門

    一番伝えたい思いは、なかなか口にはできないのかもしれないな。

  • マリコ

    土門さんにもそんな思いがあるの?

  • 土門

    え?
    ハハハ…。

  • 土門

    足は、大丈夫なのか?

  • マリコ

    うん。
    もう平気。

  • マリコ

    あのブレスレットのおかげで、土門さんに見つけてもらえた。

  • 土門

    備えて、生きろか。忘れちゃいけないな。

  • うなずくマリコ。
    二人は再び歩き始める。

  • 土門

    確かに、今この瞬間は奇跡なのかもしれないな。

  • マリコ

    奇跡?

  • 土門

    ああ。
    数々の自然災害や、日常にだって危険は潜んでいる。
    ましてや、刑事の仕事は常に死と隣り合わせだ。
    そんな中を生き延びて、ここに立っていられる。
    よく考えてみれば、それは簡単なことじゃない。

  • マリコ

    そうね。
    世界では毎日沢山の人が亡くなっている。
    だけど、私達はこうして顔を見て、話すことができる。
    これって特別なことなのよね。

  • 土門

    これからもその特別を続けていくために、俺たちには備えが必要だ。
    死んでからじゃ遅い。
    本当に伝えたい思いは生きているうちに、自分の口で伝えなくちゃいけないな。

  • マリコ

    あ、そうよ。
    さっき聞いたときは、はぐらかされたけど、土門さんにもそんな思いがあるの?

  • 土門

    ん?
    まあ、それなりにな。

  • マリコ

    なに?
    教えて。

  • 土門

    お前なー。
    それをここで聞くのか…?

  • 渋い顔の土門。

  • マリコ

  • 土門

    もう少し場所とか、雰囲気とかをだなぁ……。

  • マリコ

    ???

  • 対して、相変わらずのマリコ。

  • 土門

    あー、もういい。
    お前はそういう奴だもんな。

  • 土門はふいに立ち止まると、一歩先へ進んだマリコの腕を引いた。

  • 土門

    俺はこの奇跡みたいな時間が続くといいと思っている。

  • なぜだろう…マリコは心臓がドキリとした。
    こんな時は何を備えておけばいいのだろう。
    徳永さんに聞いておけばよかった、とマリコは後悔する。

  • 土門

    つまり。
    俺が本当に伝えたい思いは。

  • 土門

    一緒にいてくれ。
    ずっと。

  • yesの返事以外、マリコは何も持ち合わせてはいなかった。

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