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幽白主人公パーティ四人組が、魔界トーナメント参加&観戦後、ホテルの部屋にて。
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桑原和馬
はあ……なんだよありゃ。
もう人間についてけるレベルじゃねー。 -
桑原和馬
特に、浦飯の親父さんってもう、あれ……魔族を超えたバケモノじゃねーか!!!
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浦飯幽助
まー、ほぼ化け物だけどww
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蔵馬
いや。でも、その昔ね。
雷禅をかなり圧した人間というのは実在したんだよ。 -
蔵馬
伝説的な密教系の退魔師でね。
当時の魔族の間では、彼の姿を視認できるほど近付いた者で、生きて帰ってきた者はいない……なんて言われてたくらいさ。 -
浦飯幽助
そんな人間いたんか?
仙水よりスゲェな。 -
飛影
軀が遭ったことがある奴と、同一人物だろう。
あの軀が、命からがら逃げ帰ったそうだ。
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飛影
生きてやがったら、手合わせ願いたいところだ。
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浦飯幽助
ええ……その退魔師って奴って、何をしてそんなに強くなったんだ???
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蔵馬
当時の俺も、だいぶ嗅ぎまわったが、結局わからずじまいさ。
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蔵馬
恐らく密教のなんらかの修法が施されたんだろうって推測は流れていたが、その修法がそもそも実在するのか、具体的にどんなものなのか、まるで見当がつかなかった。
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浦飯幽助
なんつうか、密教スゲェな。
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浦飯幽助
雷禅の価値観をひっくり返しちまった食脱医師……俺の母親になんのか、その人だって、密教系術師だったな……。
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飛影
軀が言っていたな。
当時は、オレみたいなのが平気で人間界を闊歩できる異常な状況だった、密教界も人間全体を護るために必死だったんだろうってな。 -
桑原和馬
蔵馬は、その密教系退魔師って人に会ったことあるんか?
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蔵馬
あるよ。
それどころか、彼と組んで仕事をさせられたことがある。 -
蔵馬
無理やりではあったけど、まあ、総体的に見れば、有意義ではあったかな。
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飛影
ほう?
その話は初耳だな。 -
浦飯幽助
えっ、ちょっと待てよ!!
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浦飯幽助
どういう状況だったんだそれ!?
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蔵馬
彼だって、おおっぴらにできない事情の仕事を抱えることはあったんだよ。
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蔵馬
目くらましが必要で、当時の盗賊妖狐蔵馬は、それにおあつらえ向きの魔族だった、それだけさ。
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浦飯幽助
そいつって、どんな奴だったんだ?
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蔵馬
俺でもびっくりするような美しい人物だったよ。
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蔵馬
菩薩のような優雅さで、僧侶というより、公達……当時の貴族の子弟だけど、そんな華麗な雰囲気だった。
虫も殺さなそうな見た目なんだけど、実際は……。 -
浦飯幽助
……なんで、そいつと知り合ったんだ?
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蔵馬
要するにドジを踏んだんだ。
お宝を盗みに入った寺院そのものが罠になっていて、俺はあっさり彼に捕まった。 -
蔵馬
彼は言った。
『今すぐ死にたくないのなら、私の仕事を手伝ってもらいたい』。
俺に拒否権はなかった。 -
桑原和馬
ちなみにその仕事って……坊さんが、妖怪を利用するのって、ヤバくなかったんか?
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蔵馬
だからこその『大っぴらにできない仕事』さ。
大雑把に言うなら、ある権勢あらたかな貴族の男が、放置するのはかなりマズイ邪法にハマッた。
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蔵馬
その生贄に、よりにもよって、自分の娘を使おうとしていてね。
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浦飯幽助
なんだそりゃ。
どこのホラー映画だよ!? -
蔵馬
当時、たまにあった種類の出来事さ。
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蔵馬
普通の人間なら、踏み込んでぶった切って、娘を救出したら、適当な親類にでも預ければいいだけの話。
だが、その事件の主犯は、当時の最高権力者とかなり濃い血縁のある奴でね。 -
蔵馬
真正面から、その男を咎めだてするのは、ほぼ不可能。
そこで、妖怪のオレを利用することを、彼は思いついた。
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蔵馬
要するに、狂暴な妖狐が、高貴な男を殺害し、娘を誘拐した……という筋書き。
もちろん、裏で手を引いて、肝心な部分で実際に手を下すのは、その退魔師という塩梅だ。 -
飛影
大した聖職者もいたものだな。
軀が聞いたら喜びそうな話だぜ。 -
蔵馬
お陰でオレも、あの退魔師の従者という体で、人間に化けて付き従うことになってね。
当時はなかなか屈辱的な扱いだと思ったが、何だか楽しくもあったな。 -
桑原和馬
結局、それ、上手くいったんか?
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蔵馬
完璧。
ぬかりなしさ。
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蔵馬
奴が殺されてから、退魔師とは別の寺院に属していた密教僧が、狐を追い払う修法に駆り出されてね。
さしものオレも、あの退魔師と一緒に笑ってしまった。 -
浦飯幽助
その後は……?
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蔵馬
彼は約束を守ってくれた。
そういう意味ではまあ、信頼できる人物だったんだろうね。
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蔵馬
お土産まで持たせてくれて、あっさり解放してくれたよ。
まあ、命あっての物種だし、悪くない仕事だったんだしで、そのまま魔界に帰ったさ。 -
浦飯幽助
その退魔師って奴、その後、普通に天寿を全うしたりしたのかな……。
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蔵馬
さあ、それはわからない。
ある時を境に、ふっつり噂を聞かなくなってしまった。
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蔵馬
死んだって話は聞かなかった。
忽然といなくなった、そんな感じだったな……。
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