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黄泉
雷禅、ちょっといいか?
昼間聞こえてきたんだが、幽助と何かトラブルか?
怒鳴り合っていて、殴り合い寸前みたいだったが? -
雷禅
ああ……ちっ、厄介な耳だなそれ。
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軀
おおかたアレだろ。
嫁とよりを戻すことはできたっていうのに、息子がどうにも懐かなくてイライラするってところか。 -
雷禅
るせーよ。
……幽助の野郎、俺が後ろに立っただけで、ぎょっとして飛び退きやがる。
親をバケモノみたいに扱いやがって……。 -
黄泉
お前なあ……。
お前が幽助に課した訓練内容は、かなり過酷だとは知っているぞ。
状況が状況だったとはいえ、親と思えないような扱いをしておいて、今日からは別だ、というのは、単なるお前のワガママだ。 -
軀
ここが大好きな人間界でなくてよかったなあ、魔界最強の男。
向こうは今、そういうのにうるせえらしいから、あっという間にお縄だぜ? -
黄泉
まず、一度ちゃんと幽助とそのことについて話をしろ。
今日から自分の都合に合わせてお前も態度を変えろなどとは、最悪の対処法だぞ? -
雷禅
わかっちゃいるんだが……くそっ!!
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黄泉
まず、不本意なことを強いたこと、状況的なこともあったとはいえ、乱暴な扱いをしたことを謝ることからだぞ?
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雷禅
わかっちゃいるが、タイミングがよお……。
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黄泉
命を削るほど求めた奥方が、自分の命と引き換えのように残した息子を、そんなぞんざいに扱えるお前の気持ちが理解できない。
なぜそんなことをする? -
雷禅
……。
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軀
ま、こいつはそういうことができねえ男よな。
だから、欲しいものに限って、なかなか手に入らねえ。
はたで見ている分にゃ面白えが。 -
雷禅
なんだとこの……!!
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黄泉
軀。
悪いが少し黙っていてくれないか? -
黄泉
雷禅。
気恥ずかしいのは理解する。
だが、お前、一度亡くなる間際に、幽助の前でかなりの醜態を演じたらしいな?
そんな事実があるにも関わらず、今更になって、どうだっていいような体面なんかが、我が子より大事か? -
雷禅
……。
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黄泉
幽助の気持ちになってみろ。
自分ではどうにもできないような強さの、父親を名乗る怪物に、母親を人質に取られて、家族ごっこを演じさせられているような状況だと思わないか? -
黄泉
これは一体、どんな地獄なんだ?
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雷禅
そうだな。
……ああ、わかっているのにな……。 -
黄泉
まず、話せ。
二人きりの方がいい。
でも、最初に何を言われても、かっとして危害を加えるようなことはないと、名誉にかけて約束するのを忘れるなよ? -
雷禅
ああ……すまねえ。
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雷禅
……今から、幽助の部屋に行ってくる。
まだ起きてっかな……。 -
黄泉
健闘を祈る。
大丈夫だ。
……ここは素直にな。
いつものひねくれ癖は放り出して、腹を割るんだ。 -
雷禅
……ああ。
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雷禅、ゆっくりと立ち上がり部屋を出ていく。
結果として、二人で呑むことになる、黄泉と軀。 -
軀
ほお。
おめえでも、まともなこと言うことはあるんだな。 -
黄泉
感謝する、軀。
あそこで憎まれ役を買って出てくれたから、雷禅の怒りが俺に向かずに、素直に聞いてくれた。 -
軀
……さあな。
ま、これであの一家が上手く行けば、魔界のためにもなる。 -
黄泉
ふふ……そうだな。
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