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黄泉
まあ、その、修羅のことばかりか、俺自身も次にトーナメントに出場するのだったら、もっとしっかりせんとな。
あれではな……。 -
雷禅
孤光にボコられたんだったな。
ま、相手が悪いぜ。
けけけ。 -
黄泉
……勝てなかったのは、まあ仕方ない。
実力を客観的に評価して、ごく当たり前の結果に過ぎない。
しかしな……。 -
雷禅
なんだ?
奥歯にものが挟まったみてえな言い草だな。
何に納得してねえんだよ? -
黄泉
……あの目がな。
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雷禅
ああん?
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黄泉
彼女は、特に何か口にした訳ではない。
しかし、盲目の俺にもはっきりわかった。
無言のうちに、俺と雷禅、お前を比べて値踏みし、取るに足らないと斬り捨てる、あの雰囲気が……。 -
軀
なんだ、いつからそんなにナイーブになりやがった、てめえ。
この化け物と比べられちゃあ、誰だっておんなじような評価だろ。 -
黄泉
わかってるんだ。
理屈ではわかってるんだ。
だが、納得いかないんだ。
こういう感情に流されない自分くらいは、手に入れたと思っていたのにな。 -
雷禅
そこに気付いたのかよ。
じゃあ、もう一つ叩き潰してやるか。
そこの軀な、ブチ切れると、全盛期のオレを、瞬発力で上回るくらいの強さなんだよ。
だが、あの大会ではブチ切れとは程遠かった。
意味がわかるか? -
黄泉
……ああ……。
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軀
おい。しっかりしろ。
死にたくなっても、オレらくらいになると、人間様と違って、気軽に木にぶらさがる訳にはいかねえんだぞ? -
黄泉
……結局、俺は自分が魔界の頂点に君臨する実力があると、勘違いしたマヌケだったと。
すまないな。
500年間、さぞ滑稽だっただろう。 -
雷禅
だがな、その俺を最終的に叩き潰したのは、人間の嫁だぜ。
人間なのに、人間だから、な。 -
軀
その苦みは大切にしな、黄泉。
いつか、おめえを救うこともあるだろうさ。 -
黄泉
……飲みたい気分だ。
頼めるか? -
雷禅
ま、つきあってやるよ。
二日酔いが酷かったら、嫁に頼んでやる。 -
軀
コイツ、なにげに三匹の中で一番酒にも弱そうなんだよな。
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黄泉
トドメを刺すな。
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