海野家の千寿郎くん その3

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この小説の夢小説設定
本編主人公の出番少なめ、原則名前のみ出演です。
煉獄ヒロイン
悲鳴嶼ヒロイン
海野家の先祖

「はあ、はあ・・・フ――ッ・・・」

「お疲れ様、千寿郎くん」

「瀬津寿さん・・・」

山下りを終えた千寿郎の元に瀬津寿がやってくる。

「那津蒔さんは・・・」

「ももと葉月の手伝いをしに行っているよ、今日は晴哉の娘もついてきたようだから。
晴哉の娘たちには初めての道だし、危ない植物があるからね」

〈なるほど――・・・〉

「訓練の様子、見させてもらっているよ。とても頑張っているね」

「はい!僕は煉獄家に生まれた男の一人として弱き人々を守るため、日々学ばせていただいてます!煉獄家で兄上に教えていただいていた頃とはまた違うものがあって楽しいです!」

「『楽しい』か・・・それはよかった、那津蒔も君の成長振りには喜んでいるよ。
愼寿郎殿に無理を言ってウチ(海野家)に呼んでよかったとね」

「ほ、本当ですか!」

「ああ、この山登り、降りの訓練で体の中心がブレにくく、集中力が増し、瞬発力、跳躍力もともに向上している。
もうすぐ次の段階にいけるかもしれないな」

「~~~っ!」

千寿郎は顔を真っ赤にしてホワワンとしている。

「でも気を抜かない様に・・・油断すると地に落ちてしまうかもしれないからね」

「は、はい!」

怖いことをサラッと言う瀬津寿。

「千寿郎くん、今のうちから呼吸を意識してみようか」

「呼吸・・・ですか?」

「ああ、私たちも鬼殺隊とは違うが身体能力の関係から呼吸法・・・つまり肺活量を強化する訓練も行っているんだ。
君たち(鬼殺隊)風に言えば『全集中の呼吸』というやつかな」

「!」

「呼吸を知っているのと知らないこと、意識することとしないこと。
前者と後者では全く気持ちの持ちようや成長の幅は大きく異なると思わないかい?」

確かにその通りだ、その差はまるで違う。
炭治郎や霧香を見て思う、意識していながら訓練しているとまるで成長する度合いが違うのだ。
彼らが入隊してから今日に至るまで十二鬼月の下弦と上弦と遭遇し、生き残っているのは瀬津寿の言っていることを実際に行っているからだろう。

「はい、思います・・・僕も走っている途中や終えた後、疲労が大きい時があります。
呼吸をもっと上手く使いこなせれば、結果は違うでしょうか?」

「ふむ、そうだな」

瀬津寿は千寿郎の額に指を立てた。

「千寿郎くん、次からは走ることではなく呼吸の方に集中してみるんだ。
全力でこなすことは大切なことだが、それで早く力尽きては本末転倒。
大事なのは『終わっても余力を残せるようにすること』だ」

「はい」

「そして終わった後も必ず腹の底、つまり丹田だ。背中や丹田を使い、全身で呼吸をすること、そうすれば今の君の体の疲労と後日の君の体の疲労に変化があるはずだ」

「はい、わかりました。やってみます」

「よし、ではこの後、早速私とやってみるか。那津蒔には私から話しておこう」

そう言うと立ち上がった瀬津寿。

「ああ、それから・・・」

「?」

「那津蒔が手荒なのは許してやってくれな、私も若い頃は今と違い手厳しかったからな」

「・・・・・」

『若い頃』とは言うが瀬津寿は今でもそこまで年を取っているようには見えない。
こう見えても二十七歳の晴哉を筆頭に四人の子持ちパパなのだが・・・・年齢不詳である。

「どうしても苦しい時は泣いてもいい、泣けるときは今しかないからな。
那津蒔も幼い頃、同じ訓練をしていた頃は毎日『できない、俺には無理だ』と泣きべそをかいて私に負ぶさって下山していたからな」

「え?」


あの那津蒔が泣きべそ・・・しかも幼い頃というと丁度今の自分と同じ頃だろうか。


〈那津蒔さんにもそんな頃が・・・〉



千寿郎は失礼とは思いながらも少し可愛いと思ってしまった。
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