本編主人公の出番少なめ、原則名前のみ出演です。
海野家の千寿郎くん その3
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「・・・・・・」
那津蒔は千寿郎の訓練の様子を死角から見ていた。
千寿郎が海野家に来てから数日、海野家所有の山で障害物(罠)山登り下りの訓練は行われていた。
山の出入り口は複数あり、その道によって仕掛けている罠や置いてある障害物は異なる。
千寿郎はその訓練をサボることなく毎日続けている。
〈忍耐力は抜群だな、さすが杏寿郎の弟だ〉
父親の愼寿郎が堕落してから人一倍強い責任感と忍耐力で炎柱になった杏寿郎の背中を見ていただけのことはある。
「ぶっ!」
〈あ、落ちた〉
落とし穴に落ちた千寿郎、那津蒔はスッと下に降りる。
「集中を維持しろ千寿郎、罠に落ちるってことは死ぬってことだ」
「す、すいませ・・・」
千寿郎は痛い箇所を抑えながら起き上がる。
「お前、今日一日で百は死んだぞ。
これが鬼の術ならお前は四肢も何もない肉片になってるところだ」
「・・・・・」
「鬼なら百なんて数は負傷の欠片にもならないだろうさ、頸を落とされない限りはな。
手を落とされようが、足を斬られようが、心の臓を貫かれようが、臓物を引き抜かれようが・・・急所が落ちない限りは何度でも再生する。
鬼狩りは『生身の人間』だ、鬼とはどうしてもハンデがある。だから身体能力を上げる必要があるんだ、自分を守るため、仲間を守るため、人間を守るためにな」
「・・・・」
「そしてそんなとこでボサッとしてると・・・」
「うわあああァァ!!」
ガシャンッ!
罠が二段式だったようで危うくもう一層下に落ち付所だったのを飛び上がって避けた千寿郎。
「ふん、反射速度はいいな」
ここ数日の訓練から学習したのか周囲を警戒することは忘れていなかったようだ。
「~~~~っ・・・」
穴の底には剣山のように針がびっしり敷かれていた、あんなのに体を指されたら外国にある乳製品の食材のようになってしまう。
汗だくで眺めている千寿郎に那津蒔は屈みこむ。
「止めるか?」
徐々に難易度を上げてはいるものの刃物が出てきたら『さすがにやる気が喪失したか?』と思った那津蒔だが・・・・。
「いいえ」
「?」
「続けますっ・・・僕はまだ諦めたくない!」
「!」
千寿郎は傷だらけになっていたが目の光は喪失していなかった。
おそらく自分が何のためにこの訓練をしているのか、訓練を通して自分で為してきたことが具体的になってきたこと、目に見える形になってきたことが感じられているからだろう。
杏寿郎は確かに大した男だがまだ若輩、彼もまた成長過程なのだ。人に教えられる経験も積んではいない。
ならば千寿郎に教えることに均等が偏ってしまっても仕方がない。
〈まあ、俺のこのやり方も親父が昔、俺たち兄妹にしていた訓練方法を模写してるくらいだからな・・・〉
そして今の千寿郎は過去の自分と同じなのだ、いやあの頃の自分の方がもっと不甲斐なかった。
それに比べたら千寿郎は大したものだ、弱音一つ吐かない、泣いていない。
〈わんわん泣きながら帰りに親父の背中に負ぶわれていた俺に比べたら自力で屋敷まで帰っている千寿郎は偉いな〉
自分の過去のことなど口が裂けても言いたくはないが同じように訓練に耐え忍んでいる者がいれば応援してやりたい。
那津蒔はその気持ちの方が大きかった。
「頑張っているようだな、千寿郎くんは」
「親父」
訓練を再開し、また死角で様子を見ている那津蒔の横に瀬津寿がやって来る。
「ふむ、なかなか肝が据わっている」
「ああ、あいつは成長するぜ」
嬉しそうな顔をしている那津蒔にニッコリ笑う瀬津寿。
「嬉しそうだな、那津蒔。弟ができたからか?」
「・・・・弟・・・、まあ、そうかもな」
下に女姉弟しかいないため千寿郎を育てるのが新鮮なのだ。
「お前も杏寿郎殿と同じ顔をしているな」
「同じ顔?」
「千寿郎くんに対して愛情深い顔をしている」
「・・・・してるか?」
「ああ、責任が故の感情かもしれないが・・・まあ、お前も肩の力を抜いてやることだな。
昔みたいに『やり過ぎて泣く』ことにならないようにな」
「!?」
今まさに思い出していたことを父親に言われて『ギクッ!』とする那津蒔だった。
那津蒔は千寿郎の訓練の様子を死角から見ていた。
千寿郎が海野家に来てから数日、海野家所有の山で障害物(罠)山登り下りの訓練は行われていた。
山の出入り口は複数あり、その道によって仕掛けている罠や置いてある障害物は異なる。
千寿郎はその訓練をサボることなく毎日続けている。
〈忍耐力は抜群だな、さすが杏寿郎の弟だ〉
父親の愼寿郎が堕落してから人一倍強い責任感と忍耐力で炎柱になった杏寿郎の背中を見ていただけのことはある。
「ぶっ!」
〈あ、落ちた〉
落とし穴に落ちた千寿郎、那津蒔はスッと下に降りる。
「集中を維持しろ千寿郎、罠に落ちるってことは死ぬってことだ」
「す、すいませ・・・」
千寿郎は痛い箇所を抑えながら起き上がる。
「お前、今日一日で百は死んだぞ。
これが鬼の術ならお前は四肢も何もない肉片になってるところだ」
「・・・・・」
「鬼なら百なんて数は負傷の欠片にもならないだろうさ、頸を落とされない限りはな。
手を落とされようが、足を斬られようが、心の臓を貫かれようが、臓物を引き抜かれようが・・・急所が落ちない限りは何度でも再生する。
鬼狩りは『生身の人間』だ、鬼とはどうしてもハンデがある。だから身体能力を上げる必要があるんだ、自分を守るため、仲間を守るため、人間を守るためにな」
「・・・・」
「そしてそんなとこでボサッとしてると・・・」
「うわあああァァ!!」
ガシャンッ!
罠が二段式だったようで危うくもう一層下に落ち付所だったのを飛び上がって避けた千寿郎。
「ふん、反射速度はいいな」
ここ数日の訓練から学習したのか周囲を警戒することは忘れていなかったようだ。
「~~~~っ・・・」
穴の底には剣山のように針がびっしり敷かれていた、あんなのに体を指されたら外国にある乳製品の食材のようになってしまう。
汗だくで眺めている千寿郎に那津蒔は屈みこむ。
「止めるか?」
徐々に難易度を上げてはいるものの刃物が出てきたら『さすがにやる気が喪失したか?』と思った那津蒔だが・・・・。
「いいえ」
「?」
「続けますっ・・・僕はまだ諦めたくない!」
「!」
千寿郎は傷だらけになっていたが目の光は喪失していなかった。
おそらく自分が何のためにこの訓練をしているのか、訓練を通して自分で為してきたことが具体的になってきたこと、目に見える形になってきたことが感じられているからだろう。
杏寿郎は確かに大した男だがまだ若輩、彼もまた成長過程なのだ。人に教えられる経験も積んではいない。
ならば千寿郎に教えることに均等が偏ってしまっても仕方がない。
〈まあ、俺のこのやり方も親父が昔、俺たち兄妹にしていた訓練方法を模写してるくらいだからな・・・〉
そして今の千寿郎は過去の自分と同じなのだ、いやあの頃の自分の方がもっと不甲斐なかった。
それに比べたら千寿郎は大したものだ、弱音一つ吐かない、泣いていない。
〈わんわん泣きながら帰りに親父の背中に負ぶわれていた俺に比べたら自力で屋敷まで帰っている千寿郎は偉いな〉
自分の過去のことなど口が裂けても言いたくはないが同じように訓練に耐え忍んでいる者がいれば応援してやりたい。
那津蒔はその気持ちの方が大きかった。
「頑張っているようだな、千寿郎くんは」
「親父」
訓練を再開し、また死角で様子を見ている那津蒔の横に瀬津寿がやって来る。
「ふむ、なかなか肝が据わっている」
「ああ、あいつは成長するぜ」
嬉しそうな顔をしている那津蒔にニッコリ笑う瀬津寿。
「嬉しそうだな、那津蒔。弟ができたからか?」
「・・・・弟・・・、まあ、そうかもな」
下に女姉弟しかいないため千寿郎を育てるのが新鮮なのだ。
「お前も杏寿郎殿と同じ顔をしているな」
「同じ顔?」
「千寿郎くんに対して愛情深い顔をしている」
「・・・・してるか?」
「ああ、責任が故の感情かもしれないが・・・まあ、お前も肩の力を抜いてやることだな。
昔みたいに『やり過ぎて泣く』ことにならないようにな」
「!?」
今まさに思い出していたことを父親に言われて『ギクッ!』とする那津蒔だった。