本編主人公の出番少なめ、原則名前のみ出演です。
海野家の千寿郎くん その6
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「世間の者たちにとって小生の作品も鼓も『評価するには値しないもの』だったのだ、だから小生は鬼の力で強くなると決めた。
そして十二鬼月に上り詰めることができた」
『十二鬼月』と聞いて千寿郎は固まってしまった。
「響凱さん・・・十二鬼月だったんですか?」
「ああ、と言っても『下弦の陸』・・・・階級は最低だったがな。
あの男の血は凄まじかった、同族に力をもたらしてくれた、適合すれば強靭な力を手に入れることができた。
だが、小生は鬼としても使い物にならなくなった」
「え?」
「人間を喰えなくなってしまったのだ。
お前も聞いたことはあるだろうが『鬼』というものは『喰った人間の数』で己の能力が強化される。
下弦で数百の人間を喰っている、上弦ともなれば千以上だ。
だが小生は力を手にした後、人間が喰えなくなったため力が弱まってしまった。そのためあの男からも見放された」
右目の傷に触れる響凱。
「この傷は瞳にある数字を剥奪されたときに受けたものだ。
人間としての夢も叶わず、鬼として強者にもなれず・・・・これでは、今まで小生がしてきたことは何だったのかと、無力感に苛(さいな)まれた。
だが、小生も往生際が悪い性格故、再び十二鬼月に返り咲こうと稀血の人間を探し始めた。量を喰えなくなった小生にはもうその方法しか残されていなかったからだ」
稀血とは希少な血を持っている人間のことで鬼にとっては人間を百人喰ったのと同じ分の力が手に入る、まさに格好の獲物だったのだ。
「あの時も丁度、稀血の子供を捕まえて喰らおうとしていた時だった。
臭いを嗅ぎつけて他の鬼どもが小生の屋敷に入ってきた、そこでも小生は力負けしてしまい稀血の子供を屋敷内で見失ってしまったのだ。
そこへ現れたのが霧香たち華陽隊と炭治郎という小僧だった」
当時のことを思い返している響凱。
屋敷に入って来て稀血の子供とその兄妹を守りながら戦った二人。
だが霧香は自分と話をするため、また弟弟子の負担を減らすため結界を張り、自分の血鬼術を使えない状態にして言葉を投げかけてきた。
「響凱、うん、いい名前だね」
自分の名を聞き、ゆっくり頷いた霧香。
そして彼女は自分に問うた、今の自分は『幸福』なのかと――・・・。
「私には『見捨てられるのが怖い』、『無になるのが嫌だ』、『自分の存在が忘れられるのが悲しい』という声が鼓の音を通して聞こえた、だから頸を取るべきか悩んでいる」
五大呪術家で尚且つ先見の能力が高い海野家、もしかすると人の内なる感情の声が聞こえる力もあるのかもしれない。
霧香には響凱の心の声が感じ取れたようだ。
そして部屋を回転させ、爪の攻撃で吹き飛んだ自分の作品(小説)を拾い上げる。
「戦記物だね――・・・これは里見八犬伝を基盤にしたのかな?私も大好きな本だよ。
八人の選ばれし勇士たちが協力して悪しき者に立ち向かう。
順番はバラバラだけど、最初から読んでみたいな」
「霧香は小生の作品に興味を持ってくれた、小生の打つ鼓を褒めてくれたのだ。
人間だった頃、あれほど『無価値だ』、『駄作だ』と言われたものを・・・。
霧香は『努力をした自分を凄い』と言ってくれたのだ、その言葉が絶望の淵にいた小生にとってどれほどの救いになったか――・・・」
両手を握り締める響凱。
「あの男・・・鬼舞辻は『力による支配』で小生たちを率いていたが、霧香は違う。
『心で繋がる、温かい絆で共にいよう』と言ってくれたのだ」
響凱の胸の内にはある言葉がしっかりと刻まれていた。
「たとえ十人、百人があなたのことを否定しても、私は絶対にあなたを守る!味方になる!」
この言葉をくれる存在が酷評した多くの人間の言葉を一瞬で吹き消した。
自分を認めてくれる存在がいる、一人でもいてくれればこれほどまで違うのかと今でもあの時の感情は忘れることができない。
そして十二鬼月に上り詰めることができた」
『十二鬼月』と聞いて千寿郎は固まってしまった。
「響凱さん・・・十二鬼月だったんですか?」
「ああ、と言っても『下弦の陸』・・・・階級は最低だったがな。
あの男の血は凄まじかった、同族に力をもたらしてくれた、適合すれば強靭な力を手に入れることができた。
だが、小生は鬼としても使い物にならなくなった」
「え?」
「人間を喰えなくなってしまったのだ。
お前も聞いたことはあるだろうが『鬼』というものは『喰った人間の数』で己の能力が強化される。
下弦で数百の人間を喰っている、上弦ともなれば千以上だ。
だが小生は力を手にした後、人間が喰えなくなったため力が弱まってしまった。そのためあの男からも見放された」
右目の傷に触れる響凱。
「この傷は瞳にある数字を剥奪されたときに受けたものだ。
人間としての夢も叶わず、鬼として強者にもなれず・・・・これでは、今まで小生がしてきたことは何だったのかと、無力感に苛(さいな)まれた。
だが、小生も往生際が悪い性格故、再び十二鬼月に返り咲こうと稀血の人間を探し始めた。量を喰えなくなった小生にはもうその方法しか残されていなかったからだ」
稀血とは希少な血を持っている人間のことで鬼にとっては人間を百人喰ったのと同じ分の力が手に入る、まさに格好の獲物だったのだ。
「あの時も丁度、稀血の子供を捕まえて喰らおうとしていた時だった。
臭いを嗅ぎつけて他の鬼どもが小生の屋敷に入ってきた、そこでも小生は力負けしてしまい稀血の子供を屋敷内で見失ってしまったのだ。
そこへ現れたのが霧香たち華陽隊と炭治郎という小僧だった」
当時のことを思い返している響凱。
屋敷に入って来て稀血の子供とその兄妹を守りながら戦った二人。
だが霧香は自分と話をするため、また弟弟子の負担を減らすため結界を張り、自分の血鬼術を使えない状態にして言葉を投げかけてきた。
「響凱、うん、いい名前だね」
自分の名を聞き、ゆっくり頷いた霧香。
そして彼女は自分に問うた、今の自分は『幸福』なのかと――・・・。
「私には『見捨てられるのが怖い』、『無になるのが嫌だ』、『自分の存在が忘れられるのが悲しい』という声が鼓の音を通して聞こえた、だから頸を取るべきか悩んでいる」
五大呪術家で尚且つ先見の能力が高い海野家、もしかすると人の内なる感情の声が聞こえる力もあるのかもしれない。
霧香には響凱の心の声が感じ取れたようだ。
そして部屋を回転させ、爪の攻撃で吹き飛んだ自分の作品(小説)を拾い上げる。
「戦記物だね――・・・これは里見八犬伝を基盤にしたのかな?私も大好きな本だよ。
八人の選ばれし勇士たちが協力して悪しき者に立ち向かう。
順番はバラバラだけど、最初から読んでみたいな」
「霧香は小生の作品に興味を持ってくれた、小生の打つ鼓を褒めてくれたのだ。
人間だった頃、あれほど『無価値だ』、『駄作だ』と言われたものを・・・。
霧香は『努力をした自分を凄い』と言ってくれたのだ、その言葉が絶望の淵にいた小生にとってどれほどの救いになったか――・・・」
両手を握り締める響凱。
「あの男・・・鬼舞辻は『力による支配』で小生たちを率いていたが、霧香は違う。
『心で繋がる、温かい絆で共にいよう』と言ってくれたのだ」
響凱の胸の内にはある言葉がしっかりと刻まれていた。
「たとえ十人、百人があなたのことを否定しても、私は絶対にあなたを守る!味方になる!」
この言葉をくれる存在が酷評した多くの人間の言葉を一瞬で吹き消した。
自分を認めてくれる存在がいる、一人でもいてくれればこれほどまで違うのかと今でもあの時の感情は忘れることができない。